見かけない店
家が近い事もあり、駅までの帰宅を共にしている同僚と、他愛もない談笑をしていると、駅前に見覚えのない店を発見した。
「おい、あんな店があったか?」
同僚も同じ感想を持ったらしく、ひそひそと私に声をかけた。
「いや、覚えがないな。少しのぞいてみるか」
そういって、私たちはその店の様子をうかがうと、どうもタイ焼き屋らしい。
品ぞろえが悪い。
つぶあん。カスタード。チョコ。
タイ焼きなんてあまり食べた事はないが、三種類しかないのメニューは、いくらなんでも私にそんな第一印象を持たせるのだった。価格は、普通。特に文句を言う事も無ければ、賛辞の言葉を送るほどでもない。
「この店って、最近できたんですか?」
「いえ……もう二年も」
印象が薄く、よろよろの老婆が言った。
「可笑しいなぁ――普通、二年も前なら俺らも通勤と帰宅しているのに」
「ちょっと、美味しそうだな。一つもらえますか?」
私は五百円玉を出し、老婆からタイ焼きを一つもらった。
「お腹でも空いていたのか?」
「別にそう言う訳じゃないんだが……興味本位、ってやつだ」
熱のなくなったタイ焼きにちょっとした不快感を覚えながら、私はタイ焼きを一口かじる。
すると――
「うぐえっ! まっずい!」
店員である老婆が目の前にいるにもかかわらず、私はそんなはしたない声をあげてしまった。だがしかし、理性さえ無視するその驚くべき味に、私は頭が混乱した。
「まじかよ、」
試しに、と言うように同僚が一口かじる。
「うわっ! 何だこれ!」
同僚も私同様に、はしたない声を上げた。
「おい、もう帰ろう。かえって、酒でも飲もう。酒でも飲んで、忘れよう」
呂律が回らす変な声が出た。
家が近い事もあり、駅までの帰宅を共にしている同僚と、他愛もない談笑をしていると、駅前に見覚えのない店を発見した。
「おい、あんな店があったか?」
同僚も同じ感想を持ったらしく、ひそひそと私に声をかけた。
「いや、覚えがないな。少しのぞいてみるか」
そういって、私たちはその店の様子をうかがうと、どうもタイ焼き屋らしい。
品ぞろえが悪い。
つぶあん。カスタード。チョコ。
タイ焼きなんてあまり食べた事はないが、三種類しかないのメニューは、いくらなんでも私にそんな第一印象を持たせるのだった。価格は、普通。特に文句を言う事も無ければ、賛辞の言葉を送るほどでもない。
「この店って、最近できたんですか?」
「いえ……もう二年も」
印象が薄く、よろよろの老婆が言った。