その8
ギブアップ直前の俺は、周囲に人がいないことを確認してから、思い切って彼女に告げる。
「俺、嘘が見えるんだ」
「!!」
彼女が目を丸くしたのと同時に、後者の方から大声が聞こえてきた。
「ユウ―!まだ一限間に合うぞー!」
吉野の声だ。よし、ナイスタイミング!
「おー!解った!」と大声で吉野に返してから、さっさと彼女に背を向けた。
「信じるかどうかは任せるけど、気になるなら放課後、三つ目の通りを左に曲がったところにある喫茶店に来て。その時にきちんと話すから」
そう言い残して、俺は走り去る。茫然としていた彼女が来てくれるのかは解らないが、一応誘うことには成功した。サンキュー吉野、ナイス助け舟、ナイスアシスト!やっぱサッカー部は違うな!
下駄箱で靴を履き替え、同時に眼鏡をかける。それから教室に向かい、階段を全力で駆け上がった。
教室のドアを開けると、わいわいと好き勝手に話していたみんなの視線を集める形になる。少し怖いな。
自分の席に向かおうとすると、皆がぞろぞろと俺に称賛の言葉を掛けながら付いてきた。
「電車で女の子助けたってマジ?」
「さすが紫合君!女の子助けるとか紳士ー!」
「カッコよくて親切とか、ホント凄すぎるよ!」
「その女子吐いたんだろ?そこでひかないとかすごいよな」
「え、あんた退くの?サイテ―」
「普通だろ?紫合みたいに介抱まで出来るなんてそうそういないって」
「そうだよ、紫合君は特別なんだよ!」
いつの間にか群れは俺から離れ、俺を讃えるトークで盛り上がっている。席に着くと、吉野が携帯を持ったまま手をぶんぶんと振ってきた。
「よ、朝からお疲れ、イケメン君」
言われなくても外見内面共に優れてる自覚くらいあるって。
「お前も、連絡ありがとな」
「そうだ、俺に感謝しろ!そしてその女子を紹介してくれ」
「もてんじゃねぇのか、サッカー部員」
「うるせぇ!もてんのは、飯橋とか権田とかのイケメン・エース勢だけだよっ」
飯橋と権田か、確かにあいつらの顔は良い。俺の方が整ってるけどな。
俺はカバンを机のサイドに掛けると、携帯を取り出した。彼女が無事着いたのか、クロウに確認したかったんだ。