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その7

 空いたのは、駅のホームだけではなかった。電車の中もがらっがらで、たった三駅だけでも、罪悪感なく座ることができるほどだ。


 電車が来るまでの時間、俺は彼女の話を色々と聞かせてもらった。

 彼女の名前は甲賀小梅。神鷹学園に通う、同い年の高校一年生らしい。本を読むのが好きで、自宅で猫を飼っているのだそうだ。登校時間はいつもこの時間みたいだけど、こうやって倒れるのはしょっちゅうなので、遅刻常習犯でもあるという。


「病弱なんだね」

「いや・・・まあ・・・はい」


 そう言って苦笑いした彼女から、プクリと泡が出る。混雑してると必要が無いので、今でも登下校中は滅多に眼鏡をかけることはなかった。しかし今更眼鏡を取り出してかけるのもおかしい気がして、もう今日は諦めようと決心をしたばかりだ。


 なんで今泡が出るのかと不思議に思ったけども、「女の子の日」で貧血、という可能性もあるなと気付けば、男に話したくない理由も解る。察してやらねば。


 ビュウッと、ふいに突風が走った。この季節にはありがたい風だ。が、俺にとっては喜ばしくない風となった。彼女の「嘘」が風に流されて、いきなりこっちに飛んできたのである。すぐさま避けることのできなかった俺の脚に、彼女の泡がぶつかる。


『赤い靄が見えるなんて、絶対言えない』


 ・・・赤い靄?見える?少し気がかりな話だ。が、ここで俺の能力を話すのも難だし、話もせずに切り出すのはもっとおかしい。俺やソラちゃんと同じタイプかも解らない。が、一つだけ解る方法はあった。


 最寄りの駅に着き、二人でそろって降りる。途中まで道が一緒なので、結局俺の学校の前で別れる形になった。そこで作戦を実行する。


「ねぇ、今日の放課後、時間ある?」

「へ?」

「いや、遅刻するって報告がちゃんと通ったのか解らなくてさ」


 我ながら苦しい誘い文句。当然、彼女は不思議な顔をした。ヤバい、作戦変更だ。


「・・・ごめん。帰り大丈夫かなって思って」

「だ、大丈夫です」

「そ、そう」


 だよな。どうしよう。彼女が能力者か解るのはソラちゃんだけなのに、会わせるための手だてが思いつかない。

 誰か助けてくれ・・・!

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