その16
ソラちゃんは俺から二つクレープを受け取ると、その一つを小梅ちゃんに渡した。
「はい、こうちゃん!」
「あ、ありがとう、ソラちゃん」
女の子同士のやりとりって、どうしてこう可愛いんだろうなぁ・・・
クロウは先に席に戻っていたようだ。俺のところに取りに来るどころか、手招きしてこっちに来いとかやってきやがる。
誰が行くかっ!と無視していると、クロウが衝撃を受けた表情を大げさに表に出して、泣き真似をした。
「そんな・・・!パープルはそんなことする人じゃないと思ってたのに・・・!」
もうてっきりいつものペースに戻っている。ばれたらばれたで隠さなくてもよくなったのが楽のか、はたまたただ吹っ切れただけなのか、どっちなのかは解らないけれども、これだけ一気に元に戻せる奴もまたすごい気がする。
しかしそんなことをする人じゃないとかいきなり言われても、「何が?」って感じだ。心当たりってもんがない。が、それはすぐに暴かれる。
「ボク、お金余分に出したのに!」
「ああ、なるほどな、わざとか、てめぇ・・・」
俺がお釣りを返しに奴の元に行くことを想定したうえで、悠々と構えていたわけだ。憎たらしいったらねぇなこんちくしょう。そして悔しいことにネコババなんて出来るわけがない。そんなの、イケメンのする行動じゃないからだ。全て読まれてるところがまた更に悔しくてたまらない。
俺が歩いていこうとすると、ソラちゃんがクロウを叱りつけた。
「ダメだよ、クロウ!四つもクレープ持ってきてくれたユウに対して、ちゃんとお礼言わなきゃ!」
ソラちゃん・・・っ!ソラちゃんだけだよ、俺の味方してくれるのは!!でも、俺は運んだだけだし、金を払ったクロウには及ばない気がするんだけど・・・
それを伝えてなだめようとすると、むしろ逆効果となった。
「もう!ユウもクロウを甘やかしすぎだよ!!」
「いや、でもさ・・・」
「でもじゃないの!クロウも年下に気を遣わせちゃ駄目だって、いつも言われてるでしょう!」
ソラちゃんがそう言ったほんの一瞬、クロウの眉間にしわが寄ったように見えた。けれどもすぐにけろりと笑う。さっきの反応がちょっと気になったけど、叱られても笑うのかこいつ・・・。打っても打っても響かないタイプなんだろうな。
ともかくソラちゃんを落ち着かせないと。自分がいじめられた時は何て事無いのに、こう言うところで怒るなんて、この子の沸点が解らなすぎる。
「まあ、落ち着いてって。案外年上じゃないかもしれないだろ?」
そう。こいつは「何カ月しか違わない」って言っただけだ。何歳とは言ってない。俺も誕生月が早い方だから、大体の奴の誕生日が自分より後って思いがちだ。クロウもそうかもしれないじゃないか。
が。
「なぁ、クロウ?お前、何月生まれだ?」
「ん?10月だけど?」
・・・・・・あ、あれ?
「も・・・もしかして・・・」
恐る恐る尋ねると、クロウはこの日最高級の爽やかさを兼ね備えた笑顔で答えた。
「ああ、言ってなかったっけ?ボクは高二だよ?」
俺は、前言を撤回したい気持ちでいっぱいになった。勘違いは、イケメンはしちゃいけないことだろう・・・




