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その14

「いくつか訂正面があるから、そこだけ訂正するね」


 そう言いながら、彼は向きを変えた。ゴミ箱とクレープ屋は正反対にある。きっと、長く話すことを前提にしていたんだろう。こういうところは素直にすごいなと思う。クロウはそのまま語り始める。


「嫌い宣言は欠点を探させるための物だよ。嫌いだってことだけ聞いて理由を聞かないと、なんで嫌いなのか気になって相手の欠点を探す人が多い。で、『ああ、これがダメなのか』って一カ所でも思わせれば、もうその人は彼女を、少なくとも恋愛対象としては見なくなる。見なくなるっていうより、無しになるみたいなんだよね。皆心狭いなぁー・・・って、ボクも人のこと笑えないけどね」


 女の子の欠点を探すのが下手な俺には何とも言い難いけれど、そういうものなんだろう。友達関係に置き換えて考えると少し違うことだとは解ってはいるけど、苦手だと思っている人と友好関係を築こうとするかと考えると、敬遠することは珍しくない。かくいう俺も、ソラちゃんがいなければクロウみたいなタイプは正直本当に苦手なタイプだったので、近づこうとも思わなかっただろう。近づいてみれば、意外と話すことができるのに。


「それと、もう一つ。彼女がミーハーじゃないって話。それも誤解だ。彼女はそこそこにミーハーだよ。だからこそ、『君』と関わらせたくなかったんだ」

「・・・へ?」

「さっきも女の子たちが言ってたでしょ?『ミスト』の畑中稔」

「え、ああ、畑中な。俺が似てるって言われる・・・」

「そう。彼女ね、畑中のファンなの」

「・・・え?」


 つまり、依頼を受けるとどうしても俺といる時間も多くなる。また、こう言い切ってしまうのもあれなのだが、出会いもそこそこに劇的だった。下手すればそこで恋に落ちてしまっても可笑しくないくらいだと個人的には思ってる。クロウが俺に「嫌い宣言」をあそこまではっきり述べたのもそのためだろう。画面の中のイケメンより身近なイケメン。もしそこに画面の中のイケメンと似ている人がいれば、そこに魅力を感じることも多い。全然解らなかったけれど、クロウもクロウで焦ったんだろうな。

 ・・・ん?


「ちょ、ちょっと待てよ?でも『嫌い発言』の時、俺は泡を見なかったぞ?」

「そりゃそうさ。彼女って言った時、ボクは別の人を思い浮かべていたわけだからね」


 それはそれでソレが誰なのか非常に気になるところだけど、多分そこは聞いちゃいけない所なんだろう。でも、今までの話も俺は聞いていい話だったんだろうか?好きな人の話とか、無理に詮索しちゃいけなかったんじゃないかと思うんだけど・・・

 しかしクロウは対して気にもしていない様子でこちらを見てニヤッと笑った。


「にしても、パープルは頭が良いね。神鷹に来れたんじゃない?」

「自分より頭がいい奴にそれを言われてもなんにも嬉しくないんだけどな」

「負けず嫌いだねぇ!経験の違いは仕方ないでしょう」

「経験の違いって何だよ、人生ってことか?」

「生きてる年数?」

「数カ月で差が出てたまるか」

「ま、確かにそうだね」


 とりあえず、いつも通りに会話をすることは出来そうで、ひとまず安心したことは、彼には言わなかった。

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