その12
道中、いきなりクロウが妙に落ち着いた様子で口を開いた。
「さて、さっきの発言の真意を聞こうか」
さっきの発言とは、恐らく「小梅ちゃんと話せたのか」と聞いたアレである。まあ、当たってるかどうか解らない知識をホイホイとひけらかすのは、外した時のカッコ悪さと合わせてイケメンのやるべき行為じゃない。でも、こいつに対してイケメンでいる必要もないと思うってのと、俺自身が成否を知りたいってところがあるから、今回は例外だ。
「お前さ、小梅ちゃんのこと、好きだろ?」
「な、んでそういうことになるのかなぁ・・・?ボク前言ったでしょう?嫌いだって」
「その宣言自体がおかしいんだって」
「大切な宣言だと思うんだけどなぁ」
これはダメだ。いくら質問を繰り返しても、彼は決して「YES」「NO」では答えてくれないな。しかたない、腹をくくろう。
「初めにおかしいなと思ったのは、その発言。嫌いって言うわりに彼女の話を電車で持ちだした時にもすぐ解ったみたいだし、待ち合わせの放棄すらしなかった」
「約束は守らないとね。それに、嫌いな人に注目していることに不自然さは感じないけど」
「そうだな。だから初めは気にしてなかった。でも、飲み物だって俺ですら覚えてなかったのに、しっかりと覚えていたし、絶叫系が苦手だってこともすぐに気付いてた。統計的な物の見方じゃなくて、相手のことをよく知っているから解るって感じだな」
すると、流石のクロウも押し黙った。星型のサングラスを今もかけており、瞳の動きは解らない。が、彼の口角の上がっていない表情を見るのは、相当久しぶりかもしれない。ソラちゃんのあの一件の時以来だ。いや、あのときですら一度くらいだった気がする。
「今日もそうだ。小梅ちゃんに一番扱いにくいシャチを渡してたけど、あれはそういう目的じゃない。あのプールじゃ誰がどこにいるのか解らなくなりやすいけど、あのシャチを持っている人はほとんどいなかった。少し恥ずかしい思いをさせるかもしれないけど、バラけて遊ぶ時、少し場違いにシャチを持っていれば変に声をかけられることもないだろうな。それに何より俺らからも見つけやすい。迷子になることはまずない」
その考えが正しければ、俺はソラちゃんにもシャチを持たせるべきだったと思う。泳ぐ彼女の姿はさながら人魚だったんだぞ。
「でも、意外とシャチを持っている人が増えたんだよな、あの後。だから慌てて、俺やソラちゃんにちょっかいを出して小梅ちゃんを探してたんだろう?彼女だけがお前と会ってないって言ってたしな。ビーチボールや浮き輪をたくさん持っていたのは集めていたからではなく、そうすれば俺たち、少なくともソラちゃんがお前を追いかけることは想像できたから、またそこで俺たちは自然に小梅ちゃんを見つけてもお前を探し続けることになる。そうなれば大きなシャチを持ってわたわたしてる彼女を、少なくとも俺が放っておくわけがない。で、俺はお前を追いかけることは無いかもしれないけど、ソラちゃんは心配だから追いかけることがわかる。・・・そうすれば、お前の目的は達成できるだろ?」
考えすぎかもしれないという気持ちが徐々に出てきた。ここまでそれっぽく語って外してたらどうするんだよ、救いようがないぞ俺・・・!!




