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その10

 流されてしまった。


 もう何をひらめいたのか全く思い出せない。自分にかなり絶望するし、失望する。

 言いわけなんて見苦しい真似はするまい。ただ、状況説明だけさせてもらおう。いや、言いわけじゃないから。解ってるから、俺の能力不足だってことぐらい。だからとりあえず聞くだけ聞いてくれ・・・!


「次の方ー」

「あ、はいはーい!」


 呼ばれて勢いよく向かっていったソラちゃんに、「危ないよ!」と声を掛けながら俺も追いかけた。すると、そのやりとりを見ていたお姉さんが、ソラちゃんと俺を見て固まる。


「どうかしました?」

「あ、い、いいえっすいません」


 顔を真っ赤にして、お姉さんは俯いた。まあ俺みたいなイケメンを前にしてもそうだけど、ソラちゃんみたいな美少女は、本来なら男女ともに受けがあるものだ。お姉さんみたいに見とれることもおかしくは無い。そういう女性の反応が、俺は可愛くてたまらない。


「いえいえ、お気になさらず」と笑いかけると、彼女はまた顔を真っ赤にした。あーもーこう言うところが可愛いんだって。


「ユウ?」

「あ、ごめんごめん」


 どうせなら少しいじけたりしてほしかったけど、彼女は平然としていた。むしろこのままだと先行くよとか言い出しかねない。

 ・・・ん?先行く?

 バッと上に貼られているポスターを見た。それは更衣室で見たのと同じポスターで、楽しそうに遊んでいる男女が乗っていた。まあ、そこまでは良い。こう言うところでは公平を期すためだかなんだか知らないが、男女で載りがちだ。でも、その下に米印で書いてあった。


『カップルの方は二人乗りがおススメ!恋人との仲を深めちゃおう!』


 無意識に「先に行かれる」と言う言葉が出てきたわけだから、少なくとも視界にこの文字列は入っており、また頭にも残っていたってことになる。

 ぶわぁっと顔が赤くなるのが凄く解った。赤面する時って解るもんなんだな・・・


「いや、ソラちゃん、そういうつもりじゃ・・・」

「ユウ!これ二人乗りなんだって!」


 ソラちゃんは完全に間違えている。が、先ほど言いかけたものの、ここまできてカップルじゃないと言うのもそれはそれで恥ずかしい。後ろにはあの長い列があるわけだし、ここでもたもたしているわけにはいかないし・・・


 しかたない。


 そしてそんな乗り方をしたから、色々な邪念が頭に入ってきて、まあ、きれいさっぱり流れてしまったわけなんだ。

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