その8
ウォータースライダーは空いていると言っても待っている人はいた。目測五分待ちの列に並ぶと、ソラちゃんから解放される。
「楽しみだねっ!」
「うん、そうだね」
ああ・・・すっげぇ癒される・・・、じゃ、なかった。戻ってこい俺。
今は来る途中ずっと気になっていたことを聞くチャンスじゃないか。
「ねぇ、ソラちゃん」
「何?」
「クロウってさ、本当にこういうのダメなの?」
「う~ん・・・解んないなぁ」
「そっか」とそれ以上言及するつもりはなかったんだけど、不意にソラちゃんが「あ」と漏らした。ただの「あ」なら流したんだけど、ごちゃごちゃしてる人込みの中でもきちんと聞こえるくらい大きな声での「あ」だったから、つい無視できなかった。
「どうしたの?」と尋ねると、それはもう可愛い顔を更に可愛く見せる効果があると疑わせないほど無邪気な笑顔を向けてきた。
「うん、昔は好きだったよ」
「・・・クロウの話でいいんだよね」
一瞬、告白してもないし特に恋心があると言うわけでもないのに、過去形で振られたのかと思ってドキッとした。俺の確認にきょとんとした顔で彼女はうなづき、話を続ける。
「だって、一緒に遊園地の絶叫マシンとか凄いよく乗ったもん」
・・・ここのイトコ、なんか仲いいよな。俺のところがイトコと関わらなさすぎるだけなんだろうか。まあいいや。
「何か、トラウマになるようなことでもあったとか?」
「クロウが精神的に傷付く事態って相当だと思うよ?」
身内にそう言われるのって、なんか微妙だな。でも、その考えは解る。確かに彼はそうやすやすとトラウマを追うほど弱くないだろう。
・・・ん?トラウマ?
「・・・ソラちゃん、あいつの恋愛遍歴とか解る?」
「解んないけど、彼氏も彼女もいたって話聞かないよ?」
「待って、あいつに彼氏がいたら大問題だから。ちょっと友人関係続けていく自信薄れるから」
「あ、そうだね、うん、変だったね」
結構本気で俺は言ったんだけど、ソラちゃんは本当に言い間違えだったらしく、楽しげにくすくすと笑った。なんでこの子こういう一挙一動がこんなに可愛いんだろう・・・
って、そうじゃなくて。
解ったかもしれない。彼の「妙な言動」の原因が。




