その3
「だ、大丈夫ですか?!」
流石の俺も「うわぁ・・・」となってしまったが、飛んできた駅員の慌てぶりを見て冷静さを取り戻した。
少女は相当体調が悪いみたいで、俺の腕にぐでっと倒れこんでしまっている。気を失ってはいないようだが、ちょっと放ってはおけない状況だ。
「俺は大丈夫です。でも彼女が・・・」
病院に連れて行かなければならないだろう。が、それを察した少女が、俺の制服をつかんだ。とても困る行為なのだが、全然離れないため、相当行きたくないようだ。
俺が「彼女」という言葉を使ったせいもあるだろう。完全に誤解した駅員は、駅の医務室に来るよう提案をしてきた。けれども彼女はそれも断る。一体どうすればいいんだか・・・
困ったのは駅員も同じようだった。ぐっだりと俺にしがみついている彼女の目線に合わせて話す。
「大丈夫だよ?彼氏君も一緒に来てもらうから」
なぜか俺まで行く形になってる。というか、だから彼氏じゃないですって。
とはいえ、彼女を放っておけない自分もいるんだな、これが。
しかも彼女は医務室にすら行きたくないと言い、仕方ないのでホームのベンチに座らせることになった。ここの方が嫌なんじゃないかと思うところだけど、まあ、仕方ない。本人の意思だ。
ベンチに彼女を運ぶと、駅員が笑顔で尋ねてくる。
「服のサイズ、聞いてもいいかな?」
そこで思い出して、思い出した途端に異臭が鼻を突く。そうだ。今俺凄い状態なんだった。多分制服を貸してくれようとしているのだろう。一度着てみたい気もするが、状況的にそんなことをしていてはいけない気がするので、カバンからジャージを取り出した。
「大丈夫です。ジャージがあるんで」
「そう?じゃあ、駅前にコインランドリーがあるから、洗ってこようか?」
つくづく人のいい駅員さんだ。このままでは確かにひどいので、素直に頼むことにした。流石に公然でパン一になるのは抵抗があるので、トイレで着替えさせてもらうことにする。
着替えの途中でポケットに携帯を入れていたことを思い出し、吉野にメールだけ送っておいた。