その5
しばらく睨んでいると、いきなり背後から声がかかった。
「あのぉ・・・」
「え?あ、はい?」
驚いて振り返ると、スマホを片手に女の子三人組が立っている。ソラちゃんでも小梅ちゃんでもないことは解っていたけど、どうしていきなり声を掛けられたのかが解らない。逆ナンだったらどうやって逃げようか・・・
「『ミスト』の畑中くんですか?!」
なるほど。確かに似てるって言われたことは何度かある。ミストって言うのは、最近売れている男性バンドグループだ。特にその中の畑中稔は、並の男性アイドルよりカッコいいと評判のボーカルだ。光栄なことにクラスの女の子から、本当に似てると言われ、一時は騒がれた。しかし、どうやらテレビの中より身近なイケメン、と言う考えの人が彩城には多かったらしく、それ以上言われることは無かった。それ以上とやかく言われることがなかったから、すっかり忘れてた。
「えーっと、よく似てるって言われるけど、違うんだよね」
苦笑いで「ハハハ・・・」と返すと、彼女達はがっかり・・・しなかった。「本当にそっくりですよ!」と何度も連呼し、「おいくつなんですか?」みたいな質問が始まる。
と、周りにいた女の子たちもいつの間にか集まってきて、謎の問い詰め状態になった。
「高校生?!大人っぽいですね!」
「何処の高校なんですか?」
「こんなカッコいい同級生がいるなんて、クラスの子達羨ましいですよ~」
「彼女とかいるんですか?」
「他にもお友達とか来てるんですか?」
どうしよう、俺の個人情報をいくら可愛い女の子たちとはいえ、ぽいぽいと投げるわけにもいかない。女の子たちがわっと来るので息苦しくなり、席を立って酸素を確保する。
助けを求めるようにクロウを見ると、ケタケタと笑いながらこちらを見ていた。女の子たちは意外と残酷な物で、彼には微塵も関心を持っていない。よく見ろ、あいつだって猫目ってだけでそれなりにはいいもの持ってんじゃん!俺の方がイケメンなのは百も承知だけどさ!!
それでわいわいやっていると、売店の方からソラちゃんと小梅ちゃんの二人がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。どうする?この状況をどうやって打破するんだよ、俺!!
と、俺の顔の変化に、敏感なクロウは気付いたようだ。流石にこのままでは二人に迷惑がかかると解ったのか、彼は唐突に女の子たちに負けない声で俺に話しかけてきた。
「あ、彼女達戻ってきた?」
水を打ったように、一気に静かになった。皆がクロウを凝視したが、彼は飄々と笑っている。本当に、こいつは平然と嘘を吐くな・・・
それからクロウが席を立ち、ソラちゃん達に向かって手を振った。
「ソラ―!こっちこっち!!」
女の子たちがソラちゃんの方を見る。目つきがもう評論家みたいに鋭かった。けれども、女の子二人を見た途端、何かを悟ったらしい。ソラちゃんはいうまでもないし、小梅ちゃんも平均以上の美貌の持ち主だ。きっと、何かが吹っ切れたんだろう。
「す、すいません!色々聞いちゃって」と何人もが謝って、周りから女の子たちが居なくなった。
本当に、二人のおかげで助かった。そして、何でもっと早くに助けなかったんだよクロウ!!




