その1
小梅ちゃんからの許可がもらえたので、早めに昼食をとることとなった。とはいえ、同じ考えの人はそこそこやはりいるようだ。ごった返すほどではないけれど、食事処はそこそこに混んでいた。少し移動するだけでも、人ごみを掻き分けている感覚がある。
「じゃあ、席とっとくから何か買ってきてよ」
そう言って、クロウが肩に肘をかけてくる。正直重い。ソラちゃんに密かに助けを求めてみたけど、彼女から返ってきた答えはこうだった。
「なんでもいいの?」
どうやら、残念なことに伝わらなかったらしい。呆然とする俺をよそに、クロウはけらけらと笑って、星型のサングラスを水着のポケットから取り出してかける。
「ボクはなんでもいいよー」
「・・・・・・」
何も言わずにじっとクロウを睨んでいると、ソラちゃんがずいっと下から見上げてきた。すぐそこまで近づいてきた美少女の距離に、不覚にもドキッとしてしまう。
「ユウは?なんでもいい?」
「あ、な・・・んでもいいです」
ソラちゃんの目はキラキラしており、それ以上文句が言えなかった。顔が赤くなってないことを祈ってたけど、自分でもへらぁっとにやけたのが解ってしまう。悔しい、すごく悔しい。
ソラちゃんと小梅ちゃんの背中が見えなくなってから、俺はやっと解放された。じろっとクロウをもう一度見ると、彼は何ともなかったように空席を探している。
ソラちゃんのあの目を見た時、俺はすぐにソラちゃんが買い物係をやりたいのだと解った。もし俺とソラちゃんが買い物に行ってしまったら、小梅ちゃんはクロウと留守番をすることになるだろう。それは小梅ちゃんの視点に立ってみれば、自分を嫌う相手と凄さなければならない時間であり、もうただの我慢大会だ。逆に俺と小梅ちゃんが残ると言う提案もあるけど、先に座席をとっておかないといけないなんていう基礎ルールを俺が思いつかなかったのだから仕方ない。クロウは誰かに命令するのを好むタイプではないようだし、俺と小梅ちゃんに「買い物行ってくるから席探しといて」なんてことは言わないだろう。ご飯を運ぶ動作も労働としてはそこそこあるが、この人込みの中で空席を探すのも一種の肉体労働だ。これを女の子にさせるのも確かに気がひける。それこそ変なところを触られたって可笑しくない状況だし・・・
クロウは、俺なんかよりずっと頭が良いと思う。頭が良いからこういうところとかにもすぐに気が付くし、とっさに最善策を打ち立てることができる。今回のだって多少は文句を言ったけれど、彼の言うとおりに動くとこうやって物事がスムーズに流れるんだ。
あー・・・、ホント癪だ!こうなったらいつもと違う原因を、意地でも突きとめてやる!!




