その14
流れるプールで人探し、と言うのは思いのほか簡単なことだった。流れに逆らって泳いでるわけでもないし、ましてや別れてからそれほど経っていないのだから、当然と言えば当然だろう。
十分ほど周遊すると、すぐに浮き輪を取り合う二人の姿を確認できた。シャチが流されないように両手で押さえながら、二人に声をかける。
「おーい!ソラちゃーん、クロウー」
ぶんぶんと手を振ると、二人はやりとりを中断してこっちを見た。途端にクロウはソラちゃんに浮き輪を返し、水の中にトプンと沈んだ。逃げたのかあいつ?と思っていると、いきなりざばぁっと水の中からクロウが現れる。待っていてくれれば結局そっちに行くのに、わざわざ来たのか。
手を離していたシャチの紐を、クロウが掴んだ。ん?これは任せていいのか?ただ手持無沙汰で持っただけか?まあ、確率としては後者の方が断然濃いけど。
「お腹空かない?」
突然過ぎる話題の振り方に、一瞬頭が付いていかなかった。ぽかんと間を置いていると、ソラちゃんもこちらに泳いでくる。
「あのね、今屋台空いてるんだって!今のうちに食べちゃおうよ」
どうやら二人でその話をしていたらしい。プールの中央に置かれた時計を見てみると、短針は十一時を指しており、なるほど確かに手ごろな時間かもしれない。そういうこともあるかもしれないと思って、朝食を軽めにしておいたのは正解だった。が。
「俺はいいけど・・・小梅ちゃんはどう?」
尋ねられた小梅ちゃんが身を持ち上げた瞬間、シャチがぐるりと横転した。
「きゃあっ!」
「小梅ちゃん!」「こうちゃん?!」
俺とソラちゃんは相当慌てたが、抱きしめていたビーチボールが功を奏した。彼女は沈むこともなく、必死の顔でぷかぷかと浮いている。
「あ、焦りました・・・」
「ぷ・・・ひゃはははははっ!!!」
相当怖かったのだろう。ふるふると震えながらそう答える彼女に、クロウが噴き出した。小梅ちゃんの恐怖をなんだと思ってるんだ。とか思ってたら、なんとソラちゃんまで一緒に笑い出した。
ん?これって笑う流れなのか?
ショックじゃないのかなと小梅ちゃんを見てみると、彼女はぽかんとしているが、不満な顔はしていなかった。どころか、今までより大分柔らかい表情をしている。こういうので笑われることに抵抗はないようだ。内気な子ってそういうのを嫌がるイメージがあったから、かなり意外だなぁ・・・
あれ?てかじゃあこれって、クロウの嫌がらせだったのか?




