その13
いや、苦笑いなら確かにあった。初めの頃のあの、嘘を吐いた時だ。
考えてみれば、彼女はそれほど表情が豊かな方ではない気がする。動作や言葉遣いで伝わるし誤魔化されがちだけど、ソラちゃんの後に彼女を見ると一目瞭然だ。だってこの俺が、この俺がだよ?女の子が不安なのが解らないとか、普通ならあり得ない。イケメンたるもの、女の子の心情はきちんと察することができないと失格なんだ。残念なイケメン、なんて、言われる側は嬉しくないものだし。
ちらっと、シャチに掴まって流れている彼女を見た。シャチなんて目立って嫌だろうに、クロウに渡されたそれを彼女は大人しく使っている。
アレか?クロウのやつ、嫌がらせなのか?
そう思うと何だか不憫になってきて、気付いたらこう申し出ていた。
「よかったら、俺のボールとシャチ、交換しようか?」
これ「はい」って言ったら、クロウに対して失礼になりそうじゃないか。そんなのに小梅ちゃんがうなづくわけが・・・
「あ、じゃあ、お、お願いします」
・・・うん。言わないでくれ、解ってる。小梅ちゃんは俺の言いたいことを察してくれたんだよな。あーもう、情けなさ過ぎる・・・
俺がボールを渡すと、小梅ちゃんは俺がやっていたのと同じように、ボールの上に乗っかってぷかぷかと浮く。シャチは正直乗る年齢でもないし、男が乗るのも・・・
と、そこでふと閃いた。
「小梅ちゃん、これに乗らない?」
「え?」
さっき交換したばかりなのに何言ってるんだと思われた気が、本能的にする。ここは誤解を解かなければ。
「いやごめんそうじゃなくて!シャチの上乗らないかなーって!あの、えーっとだな・・・」
まごまごしていると、小梅ちゃんがシャチの尻尾を掴んだ。
「じゃ、じゃあ、乗ります」
まただよ・・・!また気を遣わせたよ・・・っ!今日の俺ダメだ、ホントダメだ。
そう自己嫌悪に襲われながら、小梅ちゃんがシャチに乗るのを手伝う。なるべく体に触れないように手伝うのがとても大変で、少しぶつかったりしたらもう「ヤバい」ってなっていた。ほら、やっぱり付き合ってもいない女の子の体を触るのはちょっとさ・・・
乗った状態でバランスが取れると、俺はシャチにぶら下がっていた紐を掴んだ。
「じゃあ、これでクロウとソラちゃんを探そうか」
「はい・・・え、ええっ?!」
小梅ちゃんの顔が真っ赤になったけど、それがなんだか可愛くて、俺はそのまま流れるプールの流れに沿って歩き始めた。




