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その12

「た、楽しんでるよ?」


 もう自信もなくなってきてたけど、一応そう答えた。そう思ってたのは事実だから、嘘ではないだろう。サングラスを付けたままなので、泡も何も今は見えない。

 ソラちゃんは少し訝しげな表情を向けてきたが、すぐにいつもの笑顔に戻った。


「そっか!ならいいんだけど。クロウ見なかった?」

「クロウなら流れていったよ」

「もー!!浮き輪取り返しに行ってくる!!」


 どうやら彼は皆から遊具を回収する、独特な遊びをしているようだ。ソラちゃんは大きく息を吸い込むと、水の中に潜んだ。水中を素早く泳ぐ姿が水面越しに見えて、とても人魚を彷彿とさせる。

 本当に、美少女だよなぁ・・・。いろんな可愛い子がプールともなればいるけど、やっぱり格段に可愛いと思う。そして、いつも制服に隠されているスタイルもかなりいい。アイドル事務所のスカウトマンが一目見たらすぐ声をかけそうなルックスだ。イケメンの俺が並んで「どうしよう」ってなるくらいなんだから、相当だろう。


 うんうん・・・と一人納得していると、後ろからまた声がかかる。


「あの・・・」

「はい?」


 対女の子用の笑顔で振り返ると、ビクッとした小梅ちゃんが目に入った。そんなに驚かせたつもりはなかったんだけど・・・。臆病な子のようだから、余計慎重に接しないとダメだな、これは。

 優しく優しく・・・と暗示をかけながら、引き続きの笑顔で応対する。


「どうかした?」

「い、いえ・・・皆さんの姿を見かけなかったので、少し不安に・・・」

「あ、そっか!ごめんごめん」


 ソラちゃんも一人にしていい子じゃないけど、小梅ちゃんみたいな気弱な子を一人にしたらそれこそ危ない。海ほどじゃないだろうけど、プールには危険な輩もたくさん来てそうだしな。


「じゃあ、一緒に流れる?」


 突っ込まないでくれ。断じて突っ込まないでくれ。俺だって言ってからめちゃくちゃ後悔したんだ、このセリフのチョイスには・・・。ほらプールだから解らないかもしれないけど、ダサいと思われんじゃないかと冷や汗だらっだらだから今。

 幸い小梅ちゃんは優しい子で、この変な誘い文句に笑いもせずに応じてくれた。

 ・・・あれ?

 そこでふと気付いた。


 小梅ちゃんって、出会ってから笑ったことあったっけ?

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