その9
クロウに引っ張られるようにして、プールサイドに出る。とはいえ、広過ぎる上に何種類ものプールを抱えるその空間は、プールサイドと言うには少しイメージとは違った。
女性陣はまだ来ていないようで、俺とクロウは二人で先にシャワーやら腰水・・・でいいのかな?ともかく色々手順を踏んで、泳げる状態になる。
「プールって、入る前にこんなにいろいろやるんだな」
「パープルって、小学校の時どうやって授業受けてたのさ?」
「水泳の授業は受けたことないな。いつも嘘が酷くて吐き気がしてた」
「・・・なかなか大変な幼少期だね」
「まあな」
そう言われるとそれが普通だったわけで、「大変」という言葉に違和感すら覚える。今になれば大変だったんだとは感じるんだけど、やっぱり当時の印象に上塗りは出来ないんだろう。不思議なもんだな。
「あ!」といきなりクロウが大声を出すので、思わずびくりとした。ソラちゃん達が来たのかとそっちを見ると、ぶんぶんと一緒にいるこっちが恥ずかしいくらい腕を振ってウォータースライダーを指差している。
「パープル!すごいよ、あれだよ、本当にあるんだね」
「本当になきゃ問題だろうよ」
あれだけ宣伝してて期間外とかだったら、クレーム処理がもう大変だろうに。こいつって、ホント・・・あれだな、人を信用してないんだな。だから本心も見せないし、飄々としてるんだろう。そうなるとこいつが・・・あー、何だっけ?ニジイロレンジャー?まあいいや。ともかく人助けを行うようには見えない。でもだからといって、「ソラちゃんに付き合っている」というようにもなかなか見えないのも事実だ。
まったく・・・人間どうやったらここまでここまで掴まない性格になれるんだ?
「探るのはあきらめたら?」
不意に言われて我に返る。クロウはこちらを見て、屈託のない顔で笑っていた。でも、その笑顔がそれ以上詮索するなと言っているように見えて、俺は無意識に思考を停止する。こいつは食えない。だから、刺激しない方がいい。本能的にそう感じた、というのが正しいんだろうな、これは・・・
思わず深刻な顔になる。と、クロウがバンと俺の背中を思い切り、そう、思いっきり叩きやがった。
「いってぇな!!」
「そんな深刻な顔してるのが悪いんだって!スマイル、スマーイル」
そう言って、彼は自分のつり上がった口角に両の人差し指を当てる。いいか?このポーズは女の子がやったらものすっごく可愛い。そりゃもうソラちゃんみたいな美少女がやったら破壊力は抜群だ。でも、16の男がやっても死んだって可愛いなんて言えない。クロウは自分の年齢と性別をもっと自覚する必要があると思うな・・・。




