その6
そしてその救世主は思いのほか早くに来た。
「パープル―!!」
改札を抜けるなり、ぶんぶんと俺に手を振ってきた。本来なら無視の一点張りをしたいところだが、この際は仕方ない。わざと大きく手を振ってそれに応じた。
「おー!クロウ、いいとこ来た!」
俺の「友達」が来たと解ったお姉さんたちが、彼の顔を見ようと振り返った。が、そこで硬直する。
休日とはいえ、クロウは全力で通常運転だった。今日は縁日で園児が買うような星型のサングラスに、アロハシャツを着こんで、履いているズボンもきっと濡れても大丈夫とかいう、「なんとか」っていうハーフパンツだ。それにクロックスを履きこんで、赤色のキャップなんて被ってりゃあ、完全に変質者だ。
一目散に俺のところに来たクロウを見て、お姉さんたちが固まった。うん、これが普通の反応だ。呆然とするお姉さんたちを、やっとクロウが視界に入れた。ひゃははと高らかに笑う。
「凄いね!逆ナンでもされてたの?」
「さあ?どうだろうね、お姉さん方?」
俺の出した助け船に、お姉さんたちはすぐに気付いた。慌ててカバンから携帯を取り出すと、何も映っていない画面を俺に見せてくる。
「あの!ここに行きたいんですけど!!」
・・・そこまで俺器用じゃないんだけどなぁ。ポリポリと頭を掻いてから、彼女達の行き先を思い出す。そういえば、この人たちもプールに行くんだった。
「ああ、それなら向こうのバスに乗れば行けますよ」
「あ、ありがとうございます!」
何か別の意味も含んでた気がしたけど、きっと気のせいだろう。
そそくさと帰って行ったあと、思わずクロウを見た。携帯画面を見せた時、こいつの性格で覗きこまなかったってことは、おそらく気付いてるんだろう。サングラスを少し下げて、様子をうかがいながら尋ねる。
「・・・お前さぁ、ショックじゃねぇの?」
「ん?何が?」
「・・・あ、そ」
呆れたもんだ。前にも言ったけど、こいつはあのソラちゃんの縁者だ。だから、カッコいいわけとはお世辞にも言えないけど、黙っていればいい線いけそうな、癖のある顔をしてる。もっと普通の恰好をしてちゃんと洒落っ気を持てば、少なくとも女の子から逃げられるようなことはないはずなんだ。
というか、逃げられてショックじゃないと言う感性もおかしい。ソラちゃんがそういうのに疎いってのは春の件で解ったけど、もしかしたら、こいつも相当疎いのかもしれない。
まったく、イトコそろってどんな家で育てられてきたんだか・・・




