その5
あれから三日、プールに行く土曜日を迎えた。
短パンにパーカーというラフな格好で、駅前に立つ。ほのかに色の入ったサングラスは、父親が若いころ使っていたと言う逸品だ。昔、というかもう小学生か何かのころだ。サングラスがほしいとねだって貰ったものだった。今になって考えれば、どうして今まで掛けなかったのかと疑問に思うところかもしれない。けどふだん眼鏡をかけてないやつがかけるのって結構勇気がいることだし、ましてやサングラスなんて洒落乙な代物をかける度胸なんてさらさらなかった。というか、俺みたいなイケメンがかけたら、女の子がよってきて正直大変なんだよ。
「ねぇ、お兄さん?誰か待ってるの?」
「暇ならあたしたちと一緒に泳がない?」
プールに入る前からこれだもんな・・・。俺の前には今、大学生くらいの美人なお姉さんが二人いる。これから同じプールに行くのだろう。下着の代わりに水着を着こんでいる。そしてそれが見えるくらい大胆に胸元の開いた服を着ていた。女性に胸元の開いた服を着るななんて差別的な発言はしない。けど、目のやり場には物凄く困る。
「すいません、先約がいるもので・・・」
「えー、先約いるのぉ?」
「ねぇ、それって彼女?」
お姉さん、なかなか痛いところを突いてこられる。ソラちゃんも小梅ちゃんも女の子だけど、二人とも彼女じゃない。さらに俺が「彼女です」と嘘をついたとしても、到着した時にその嘘に即座に乗れるような器用な子がいない。そしてこのお姉さんたちはきっと、「彼女です」の一言で去ってくれるようなタマじゃないだろう。駅前で男子高校生を逆ナンしてるんだぞ。人目もはばからずに・・・。いや、軽蔑してるわけじゃない。俺がイケメンなのが悪いんだし、むしろ見ず知らずの人にさらりと話しかけている彼女達のコミュニケーション能力の高さと社交的さは見習っていいものもある。
「と・・・友達ですけど」
頬をポリポリと掻きながら答えると、お姉さんたちの顔がぱっと晴れやかになる。うん、可愛いよ。可愛いし、スタイルだってすらっとしているのに俺より低いとか個人的にはとてもいいと思う。
そしてお姉さんたちが続けたい言葉はもう解る。解るけどさ・・・
「じゃあ友達も一緒に遊ぼうよ!」
「そうだよ!大勢の方が楽しいって」
ほら来た!イケメンの友達はイケメンっていう、女性特有の謎の法則だ。「友達」の中に女の子がいることを想定してない。いるんだよ、女の子が・・・
だからと言って、お姉さんたちが何の気兼ねもなく俺に話しかけてきているわけではないと知ってるからむげに追い返せない。話しかける前に、二人で俺の方を見ながら何やら入念に話し合いをしていたんだから、絶対にそこには勇気がある。この状況を打開するためには、もう一つしか策が思いつかなかった。




