その1
それから、小梅ちゃんの救出作戦が始まった。
罪悪感を感じたら、俺たちにのみ限定で「ごめんなさい」と言ってみる、という取り組みをしてみた。が、これがまた面倒なことになった。
まず解ったのは一つ。彼女は他人に迷惑をかけている、と感じる基準がとにかく異常に高い。
彼女に改札を先に譲ったら「ごめんなさい」と言われ、歩幅が合わず置いていかれそうな彼女を待っていたら「ごめんなさい」、自分あてじゃなくてもクラクション一つに「すいません」と謝る始末。小梅ちゃんには申し訳ないけども、クロウがいらいらした気持ちが少しだけ解ってしまう。これは確かにずっと言われていたら気が散る。いつもは言っていないわけだが、それでもクロウの話を聞く限り、見ていて罪悪感を感じていることが解るレベルらしい。もうだめだな・・・
その日の放課後、俺たちはまたカフェテリアで待ち合わせをしていた。安価なホットコーヒーを飲みながら、硝子越しに通り過ぎる人々に目を向けた。
「ねえソラちゃん」
「何?」
「今日はどうだろうね」
「うーん・・・たぶん・・・」とソラちゃんが言いかけたところで、カフェの扉が開いて、一人の高校生が入ってくる。小梅ちゃんだ。
「こーちゃーん!こっちこっち」
甲賀小梅、という名前に「こう」という音が二回入るということで、彼女は「こうちゃん」と呼ばれることが決定した。とはいえ、俺は相変わらず小梅ちゃんって呼んでるわけだし、クロウは相変わらず彼女の名前すら呼ばない始末だ。嫌い発言は本当らしく、彼女に対して彼が話しかけることはあれから確かに一度たりともなかった。
さらに。
五分もしないうちに、馬面が店内に入ってくる。毎回思うんだが、店員はアレを止めなくてもいいんだろうか?普通なら止めて警察ものだよな?この店の店員とマスターの寛大さ半端ないぞ。
話を戻そう。つまり何が言いたいのかというと、この二人、同じ学校で尚且つ同じクラスなのに、必ずと言っていいほどバラバラに集合場所に来る。二人に誰かほかの人と帰っているのかと聞いてみたこともあったけど、揃って「ノー」と返された。小梅ちゃんがクロウと一緒に帰りたくないんだろうか?心当たりはしっかりとあるんだけど・・・
「ああ、みんな来てたんだね」
「お前がビリだよ、何か買ってこい」
「えー酷いよパープル!もう飲んでるのに二杯目をご所望とか・・・」
「違うって、小梅ちゃんの分」
「そうそう、こうちゃんもさっき来たばっかだから、飲み物ないんだ」
するとすこぶる嫌そうな顔をして、小梅ちゃんの方を見た。小梅ちゃんは彼の顔が見えていないから、きょとんとしてクロウを見ている。助けを求めるようにクロウが俺とソラちゃんを交互に見てきたけど、揃って助ける気なんてさらさらない。更に眉間のしわを深くして、クロウはやっと観念して、飲み物を買いに行った。




