その15
「じゃあ、良いことを教えてあげよう」
そう言うと、屈託なく笑ってクロウが宣言した。
「僕は、彼女のことが嫌いだ。大っ嫌いだ」
「・・・は?」
「うん、それだけふまえておいて」
彼はそのまま用を足さずにさっさと席に戻っていく。
・・・今の宣言はなんだったんだ?何を伝えたかったんだ?
『彼女のことが嫌いだ』
本人じゃなくても、あんなことを笑顔で言われたらびっくりする。いや、びっくりするじゃないな。少し怖かった。確かにもともと何考えてんのか解らないやつだとは思ってたけど、ここまでわけが解らないやつだとは正直思ってなかった。
そして俺はこれを聞いた後、どうやって小梅ちゃんに会えばいいんだ?でもクロウが戻ってしまった手前、俺も早く戻らなければならない。何でトイレとか言ったんだよ、本当に!トイレだったら長居出来ないじゃないか!早く戻らないと俺のイケメン生命に関わる気がする。けどやっぱり戻る勇気がなかなか湧かない。
結果、ミニドーナッツセットを追加注文して誤魔化した。
「わーお!長いと思ってたらお菓子を買ってきてくれたんだね!さすがパープル!」
何が「わーお」だ白々しい。これをさせるためにわざとあんな事言ったんじゃないかと疑ってるんだぞ。さっさと気付かなかった俺の負けだけど。
すると、クロウがパンと手を叩いた。小梅ちゃんがビクッとする。怖がらせるなよ、嫌いだか何だか知らねぇけど・・・
「じゃあ、甲賀さんの能力を考えてみようか!」
「え、お前知ってるんじゃないの?」
「知らないよ?僕のはただの推測だしねぇ」
ほらやっぱりじゃあのやり取りは完全にコーヒー買わせるための小芝居じゃねぇか!
イライラしながら乱暴に俺が席に着くと、見ていたクロウが、小梅ちゃんに変な質問をし始めた。
「ねえ甲賀さん、空の髪の毛って何色?」
「え・・・黒ですよね?」
当然当たり、黒だ。それも真っ黒で、つやがあって手入れが行き届いてる。本当に美少女の髪って感じだ。緑の黒髪っていうのを完全に具現化した逸品だ。そうそうお目にかかれないと思うんだよね。
「じゃあパープルは?」
「パープル?」
「気にしないで小梅ちゃん、俺のことだけどそんなふうに呼ばれることないから」
「僕呼んでるじゃん」とクロウが見てきたが、相手にするだけ無駄だ。無視しよう。
すると、彼女は目を凝らした。まあ、俺の髪って黒というか茶色というか、微妙な色だからな。一応茶色みが強いんだけど・・・
「こげ茶・・・ですか?」
「あったりー!流石だね」
彼女のことが嫌いなのはもしかしたら本当かも知れない。この馬鹿にしようったらない。
しかしこの質問の意味は、次の問いで明白になった。




