その14
クロウが席に座ってから、話を続ける。
「どんな時に赤い靄が見えるの?いつも見えてるの?」
「いつも見えてます・・・」
「何が赤く見えるのか、やっぱり予測付かないかな?今までの経験とか・・・」
「ま・・・ったく、覚えが、ありま、せん」
おどおどと答える彼女からは、何の情報もない。と、不意にクロウが席を立った。
「パープル、ちょっとトイレ行かない?」
「連れションの趣味はないが?」
わざとそう返したことに、クロウも気付いているようだ。何も言わずにこちらを見つめてくる。
「・・・解ったよ、行きゃいいんだろ」
「ごめんね!ここよく使うんだけど、トイレの場所だけどうしても覚えられなくてさ」
そう言って、俺とクロウは席を外れる。
男子トイレ前に着き、俺はクロウを見る。男の連れションに付き合ったなんて黒歴史作りやがって・・・なんてことを思っていると、クロウが物陰に引っ張り込んできた。
「なんだよ!」
「彼女の能力、パープルには教えてあげるよ」
・・・え?今なんつった?
ぽかんと固まった俺を流して、彼は続ける。
「彼女の能力はね、自分の不安を他人に押し付ける能力だよ」
「・・・は?」
それは相手を不安にさせる能力ってことか?それとも特有の比喩表現なのか?もし比喩表現だったら、学力が平均レベルより少し上の俺が付いていけないほどだから、もう二度と使わない方がいいと思う。
何故か彼は俺がその比喩を解ったという方向で続けていく。
「だから、彼女自身が解決しないとどうしようもないんだよ」
「ちょっと待て、どういう意味だ?不安を他人に押し付けるって・・・」
聞いたが最後、そりゃあもう何故伝わっていないのか、何故理解できなかったのか、さっぱり解らないと言う目を向けてきた。そう言うのは思っても顔に出すな。こっちには馬鹿にされてる感がもともとあるんだから、割増されるんだよ、小馬鹿にする感情がさあ!
「つまり、自分の中にある対人関係の不安を、相手に映すんだよ」
「・・・お前、説明下手なのな」
「えー、コレ僕のせいなの?」
「理解する側に伝わらない説明には意味が無い」
「・・・パープルってたまに辛辣な事言うよね」
心外な。対男の時だけだ。




