その13
「彼女、赤い靄が見えるんだって」
バッと彼女がこちらを見る。そりゃそうだろうな。彼女は俺に一言もそんなこと言ってない。こっちが勝手に能力を使って仕入れただけの情報だ。けれどもそれで、「嘘が解る」という俺の能力の保証はされたらしい。一度怪訝な顔をされたが、すぐに具合を聞いた時にばれてのだと、彼女が気付いてくれたからだ。
「何が赤い靄に見えるのか、解る?」
「それが・・・全く・・・」
そう言って彼女は俯いた。なんだろうな・・・、少し違和感がある。すぐに俯いたり、言葉を切るのはくせなのか解らないが、話を続けにくくさせる行為だ。続きが出なくなる。
その時だった。
「おっまたせー!」
晴れやかな声に振り返ると、デカいサングラスの男がいた。まあ、馬のマスクよりはいいか・・・
電話の時は少し暗いかと思ったが、クロウはにこやかな顔で登場した。が、同時にこっちにも違和感を抱く。クラスメート同士ではないのだろうか?顔を隠す必要が解らない。逆に、隠すなら隠すで全面を隠せばいいのに、なぜサングラスなんて微妙な選択肢を選んだのだろうか?
しかしその疑問を俺がぶつける前に、クロウが机を叩いた。そしてわざとらしい大きい声を出す。
「なんだい、パープル!僕の飲み物だけないのかい?」
「うるせぇ、そんな大声出さなくても解るって!」
しかし、この時驚いた声を耳にした。
「あれ?くろうくん?」
・・・ん?今発音が少し違ったような・・・ってそうじゃない。今更?今更気付いたのか?サングラスをして怪しい人物なのはもう誰もが認めるところだけど、それでも今まで気付かなかったのか?
すると、クロウもクロウでにやりと笑ってサングラスを外した。声は出さなくとも、確かにこれで本人だと解るだろう。が、彼女はクロウの方を見て、眉間にしわを寄せた。今までそんな仕草は一度も見せていない。目が悪いことはないと思うのだが・・・
「玄生磊翡君?二組の」
「・・・そうだよ」
・・・クロウって、本名だったのか。じゃ、なくってそうじゃない!なんで確認したんだ?サングラス外したんだぞ?そのままの顔なんだぞ?どういうことだ?何で彼女にはクロウが解らなかったんだ?
「ちょっと飲み物を買ってくるね」
そう言ってカウンターに向かったクロウは、何故だかとてもカラ元気に見えた。




