↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界を救った報酬  作者: Dちう
蛇足之章
PR
4/5

戦闘(前編)

蛇足ではありますが、本編で削った部分を掲載する事にしました。


性懲りも無く2回に分けております。

先ずは前編(ぜんさい)をお楽しみください。

「伝票ここに置いておきますね」


 おばちゃんが料理の載ったトレイと伝票を置いて厨房へと去っていく。

 俺とランチの戦いが静かに始まる。


 先ずは相手の戦力分析からだ。

 何も考えずに箸を着けるなど愚の骨頂だ。

 きちんと向かい合う相手の戦力を見極めなければ、最後に待っているのは悲劇しかない。

 分かり易い例から言えば、オカズとご飯のバランスだ。

 配分を考えずに闇雲に食べれば、必ずどちらかを余らせる事になってしまう。

 今回は麦茶と置き漬物とおかわり1回分という強い味方がいるので、ご飯が余る分には問題ない。

 しかし、オカズが余ってしまうと致命傷だ。

 世の中には『ご飯の友』と呼ばれるアイテムが存在する。

 これはご飯が食べ放題であればとても心強い味方なのだが、今回の様にご飯に制限がある場合には貴重なご飯を闇雲に吸収してしまう悪魔へと変貌するのだ。

 もしもそのようなオカズの割合が多い構成であれば、ご飯2杯程度の消費では済まされないだろう。

 

 しかし仮にそうであっても事前に相手の戦力分析をしておけば、消費する燃料(ごはん)の配分を決めることによって悲劇を回避する事が可能だ。

 他にも濃すぎるオカズには麦茶を途中に挟む事により、燃料(ごはん)の消費を抑えるなどといった対策を取るのだ。


 食事中にお茶を飲みすぎるのは消化に悪いので健康上よろしくないなどと言われてはいるが、少なくとも俺の流派(おでぶ)には関係のない話である。

 重要なのは健康的であることなどではない。

 食中の幸福感と、食後の満足感なのだ。


 先ずは偵察。

 お盆に載せられた敵勢力(こんだて)の確認だ。


 右翼にご飯、左翼を汁物が固め、遊撃に小鉢とサラダが添えられ、中央に主力(メイン)が大きく構えた重厚かつ繊細な布陣だ。


 特筆すべきはメインの皿とサラダや小鉢が分かれていることだ。

 普通は手間を省くために1つのプレートにまとめらる事が多いのだが、流石この定食屋は良く分かっている。

 手間を押しまず、きちんと品目別に分けて編成された部隊(おかず)には一遍の隙も無い。

 もしこれらを混成部隊にしてしまったならば、それぞれから染み出た水分・油分が混ざり合ってしまい、お互いの持ち味を殺してしまいかねないのだ。

 これは兵法(もりつけ)の基本にして奥義とも言える。

 それだけにこの陣形を切り崩すには、容易ならざる覚悟と計画性が必要だ。


 ご飯は大盛りではあるが、茶碗自体はそれほど大きくない。

 縁よりも小高く盛られた上品な装い方に、洗練された雅を感じる。

 ただ大きなどんぶりに高々と詰め込まれた『メシ』とは一線を画している。

 もしここがオフィス街の一角でなければ『メシ』こそが持て囃されていたかもしれない。

 しかしそれは肉体労働(ぜんえい)職にとっての正解である。

 ここに集うのは事務(こうえい)職のものがほとんどであり、彼らにとっては量よりも質こそが正義(ジャスティス)なのだ。

 

 次に汁物。

 この薄い茶色に少しの黒。

 味噌汁、それもワカメの味噌汁、それも恐らくは白味噌が主の併せ味噌だ。

 至って普通の味噌汁だが、威力偵察(あじみ)を慣行してみる。


 (はじぇえッ!!)


 煮立つ寸前と言ってよい熱さだ!

 弱点熱(ねこじた)の俺にとって、この味噌汁はいただけない。

 しかも見た目に反して割と濃い目だ。

 これではご飯にかけて食べる……いわゆる猫飯(ねこまんま)にでもしなければ切り崩せない。


 (いかんな)

 

 俺は食後に掃討戦(ちゃづけ)するのを無類の喜びとしている。

 一食に2回の湯漬け系は、正直胃にもたれてしまう。


 (これは評価を見直さなくてはならないかもしれないな)


 一先ず味噌汁は置いて冷ます事にしておき、次は小鉢の確認に入る。

 

 

 俺は豆腐が好きだが、唯一認める事の出来ない豆腐料理がある。

 それが『冷奴』だ。

 加熱していない為か、原料の青臭さが刺々しく主張してくる天敵なのだ。

 もちろんその為に各種薬味や醤油(場合によっては出汁)をかけて食べるのだが、それによって増す水っぽさも苦手な原因の一つだ。

 この『冷奴』には申し訳程度に刻みネギが乗っている。


 (あまり気が進まないな)


 そう思ってふと隣の席に座る巨漢を見る。

 彼は醤油をドバドバとかけた後、まるで納豆とでも格闘するかの様に、ぐちゃぐちゃと掻き混ぜ始めた。

 おぞましい。

 なんというおぞましく醜い食べ方だろう。

 もはやあれは豆腐ではない。

 そう、豆腐ペーストだ。

 もはや豆腐の原型を留めていない。

 あれでは豆腐を作った人に対して失礼ではないか!


 (うん?いや、待てよ!)


 豆腐をそのままで食べない。

 そこに何かが引っ掛かりもう一度自分の膳を見渡す。


 そこで俺の脳裏に一つの式が閃いた。


 先ほどの熱過ぎるわかめの味噌汁 + 小さい『冷奴』= ちょうど良い熱さの豆腐とわかめの味噌汁


 天才だ!

 俺は天才かもしれない。


 俺は小さい冷奴を更に4等分し、薬味の葱と一緒に味噌汁に投入した。


 (もう一度偵察(あじみ)を……)


 少しだけ汁を口に含む。


 (おお!やはり俺の考えは正しかった!!)


 冷奴の冷気を含み、丁度飲みやすい熱さに冷まされた味噌汁は、豆腐が加わった事によって塩辛さも抑えられ、葱の苦さが凡庸な味噌汁の味にアクセントを与えている。


 (もしかすると、ここまで計算されて作られているのだろうか?)


 もしそうなら、俺はもう少しで軍師(てんしゅ)の策に嵌められるところだった。

 本当にこの店は油断ならない定食屋だ。


 俺は気を引き締めて次の目標(サラダ)に目を向けた。


後編(めいんでぃっしゅ)は近日中にお届けいたします。

もうしばらくお待ち下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。