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目録

 書き続けてみると無理やり省いた(飲食シーンとか)効果もあって思ったよりも短く収まりそうです。


 書き終わったら短編に設定し直そうかなあ。

「異世界より来たりし勇者よ、お願いです。どうか私達の世界をお救いください」


 場違いな声が聞こえたので恐る恐る目を開く。


 そこは狭いが客で一杯の繁盛している賑やかな定食屋ではなく、厳かな空気と静寂に包まれた神秘的な広間(おそらくは神殿だろう)だった。

 話しかけてきたのは、どこか疲れた感じの結構年の行った定食屋のおばちゃんではなく、清楚な気配を漂わせている聖女か巫女のような妙齢の金髪美女であった。


 知っている。

 俺はこの様なシチュエーションを知っている。


 そう、きっとこれは異世界召還。

 俺は人生の最大のピンチに異世界に召還されたに違いなかった。

 しかも地味に嬉しい言語チート付きの安心仕様だ。


 ホッとしたのも束の間、俺はとても大事な事に気付いた。

 俺には異世界で革命を起こせるような技術も知識も持っていない。

 あったとしても中途半端で実用には耐えない。

 もしかしたらとてつもないチート能力に目覚めるのかもしれないが、そもそも荒事とは無縁の人生を送ってきた俺に、世界を救うなんて大事業をやり遂げられるはずも無いのだ。


「いやです。俺にはそんな大それた事は出来ません。どうか元の世界に帰して下さい」


 だから俺は女の願い跳ね除けた。

 それを聞くと女はとても申し訳なさそうな表情になった。

 なるほど。帰れない、もしくは帰せないというつもりなのだろうと思って身構えていると、


「わかりました。残念です。それではお帰りいただきます。ご迷惑をお掛けして本当に申し訳ございませんでした」と、女は諦観の篭った弱弱しい声で答えた。


 拍子抜けだ。

 こういう時は帰れないか帰れたとしてもそれは世界を救った後と相場が決まっていると思っていたが意外とあっけなかった。

 女の説明によると、救世の意志無き者に強制することは重大な禁則事項であるらしい。


「それでは俺は元の世界に戻れるんですね?」

「はい。同じ場所・同じ時間にならばお帰りいただけます」


 良かった。

 物語の無責任な召喚者たちと違って、ずいぶん親切な設定だ。

 安心して喜んだものの、ハタと気付く。


『同じ場所・同じ時間』

 

 それはつまり、帰ったところであちらの問題が解決されていないのだという事に。


 このままでは帰れない。

 帰ってもまた同じピンチが待っているだけだ。

 現状も十分に大ピンチと言えるのだが、今のところは判断材料が足りなさ過ぎる。

 だから一先ずは会話を続けて、問題解決の糸口を探る事にした。

 しかし、召喚魔法の制約上、どうしても帰還には『同じ時間』『同じ場所』という条件を外す事は出来ないそうだ。


 それよりもとここぞとばかりに女が『この世界を救ってくれた場合の報酬』について話し始めた。


 世界を救えば、この世界で英雄として何不自由ない生活を保障されて一生を過ごすか、目録の中にある財宝から一つを元の世界に持ち帰るかを選ぶことが出来るのだと言う。


 俺は文明の利器が乏しく文化レベルの低そうな、この異世界に骨を埋めるつもりは無い。


 だがどんな財宝を貰っても持ち帰れるのは1つだけ。

 しかもあちらの支払いにはあちらの世界の通貨が必要である。

 金塊や宝石を見せ付けたところで、正気や真贋を疑われるだけで、結局は警察のご厄介になってしまうだろう。


 何か現状を打破できる物はないかと報酬の目録を眺めていると、数々の強力な魔法のアイテムや神の力が宿ったアーティファクトや金銀財宝の中に埋もれていた、ある一文が目に飛び込んで来た。


『異世界のコイン』


 そこに複写されている『解読不能の異世界言語が刻まれた銀貨』は、紛れも無く『500』『日本国』『昭和56年』そして『桐』の画が刻まれた、俺の世界、俺の国で流通している『旧五百円硬貨』であった。


 「わかりました。必ず俺がこの世界を救ってみせます」

 「おお、本当ですか!ありがとうございます勇者よ」


 こうして俺の異世界冒険譚が始まったのだ。

 最終話は月曜掲載の予定です。

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