第5話 作り話はどうですか?
まだテンションが続いていたようです。
書けちゃいました。
6/11、一部大幅修正しました。
作戦会議翌日。
劣化版カンテラを作るためにカンテラを見せてくれと頼まれたので、ルトラさんの工房へ向かいます。
工房に入ると、壁に手を当てて悩んでいるルトラさんがいました。
「どうしたのです?」
声をかけるとこちらを向いて、少し嬉しそうな顔になるルトラさん。
無口なルトラさんの代わりにダンジョンさんが何をしていたのか教えてくれました。
「はあ、ダンジョンさんの意思を知るためにダンジョンさんの魔力を調べていたのですかー」
ルトラさんの調べた所によると、どうやらダンジョンさんは感情や意思によって魔力に変動があるようです。
壁に手を当てていたのは魔力の変動を調べるためのようで、直接ダンジョンさんに触れた方が魔力の変動がわかりやすいんだそうですよー。
それでも魔力の動きを掴むのは難しいので作業が難航しているそうですが。
「たった1日でそんな事がわかるなんて凄いですね。ルトラさん」
「……凄く……ない」
無表情のまま少しだけ顔を赤くして恥ずかしがるルトラさん。
始めて声を聞きましたが、とても澄んでいて不思議な声ですねー。本人は声を出すのも恥ずかしそうですが。
「……」
「声を出すのが恥ずかしいなら筆談はどうかと?ってダンジョンさんが言っていますが、私は綺麗な声だし恥ずかしがる事ないと思うのですがねー」
そう言うとルトラさんは、顔を真っ赤にしてどこかに走っていって少しして戻ってきたと思ったらスケッチブックとペンを持ってきました。
『恥ずかしい事言うな。俺の声は綺麗じゃない』
「そうでしょうかー?ダンジョンさんはどう思います?え?同感だが本人の前で言う事じゃない?そ、そうだったのですか?私は恥ずかしい事を言ったのですか?」
『言った』
「……」
ダンジョンさんの声とルトラさんの筆談が綺麗に被りました。
わ、私、恥ずかしい事言う人だったのですかー……!
『落ち込んでないでカンテラ見せてくれ。早く作って欲しいんだろ?』
落ち込む暇さえもらえそうにありません。
私はルトラさんにカンテラを渡してルトラさんの工房を出ました。
それからマタムネさんのいる食堂に向かいました。
こだまさん達が丁度朝ごはんを食べているところだったようです。
私に気付いたスライムさんは、私を自身の上に座らせて机の前まで運んでくれました。
どうしたのでしょうか?
「あ、ご主人。来てたのなら言って欲しいニャ。皆さんの朝ごはんも作り終えたし、飲み物でも出すニャ」
「たった今来た所だったのですよ。あ、飲み物は昨日渡した茶葉で紅茶をお願いしますー」
「分かったニャ」
マタムネさんが厨房に入っていきます。
茶葉は昨日のうちにシェーネさんと作りました。
何故そんなに早く作れたかって?シェーネさんは植物を早く成長させる事ができるのですよー。後、質の良い植物に成長させられます。
「あ、クロマ」
そう思っているとシェーネさんが食堂に入ってきました。
手に持っている籠には野菜や果物が入っています。
「ああ、もう収穫できたのですかー。早いですねー、さすがシェーネさんです」
「頑張った」
誇らしげに胸を張って言うシェーネさんは微笑ましいです。
「お待たせしましたのニャー。あ、シェーネさん。早速持って来てくれたのニャ?」
「うん。自信作」
紅茶を持ってきたマタムネさんに、シェーネさんが籠を渡します。
「良い出来なのニャ!すごいニャ!シェーネさん!」
嬉しそうなシェーネさんとマタムネさん。
こだまさん達もおいしい食材に嬉しそうです。
外見的には、小さな女の子の周りに猫や狐や鬼火がいて喜んでいるので、とても微笑ましくて可愛らしいです。
私はそんな光景に和みつつマタムネさんの持って来てくれた紅茶を飲みます。
「あ、とってもおいしいですー。今まで飲んできた中で断トツのおいしさですよー」
これは色んなお茶を作りたくなりますねー。
マタムネさんには茶菓子も頼んでみましょうかー。
紅茶を飲み終えて次はライラさんの工房に向かおうとした時、ダンジョンさんが人間さんが来た事を知らせてくれました。
「どんな感じの人間さんですかー?」
「……」
ダンジョンさんが人間さんの会話を盗み聞きした所、調査隊の人らしいです。
最近森で行方不明になる人が続出したので調べに来たのだと。
「思ったより早く調査隊が来ましたねー。どうしましょうかー?」
「……」
「あ、そうですね。急いでカンテラを取りに行くとルトラさんに伝えてくださいー」
私はルトラさんの工房へと急いで飛びます。
そして工房に着くとルトラさんとスルドさんがいました。
「ほっほっほ。こりゃ急じゃの。ほれ、大体調べ終わった所じゃ。持って行くと良い」
スルドさんがカンテラを渡してくれます。
「ありがとうございます。仕事が早いですねー、助かります」
『礼は良いからさっさと行って来い。適当に手土産を持たせて、爺さんの作り話を幻で聞かせてこい』
「筆談だと乱暴な物言いじゃの、ルトラ殿。クロマ殿、人間への手土産はライラが作っておるから人間に会う前にライラの所に寄るのじゃよ」
「わかりましたー。では、時間がないので失礼しますー」
ルトラさんとスルドさんに見送られてライラさんの工房へ。
ライラさんの工房。
「遅いわよ、クロマさん。はい、これ。もう人間がダンジョンさんの中に入ってるんでしょ?急がないとここまで来ちゃうわ」
工房に入るとライラさんがすぐに人間さん用のエサであるアイテムを渡してくれます。
革の鎧などの立派な防具一式です。カンテラを持つ要領で一気に持ちます。
「そうですねー。急ぎましょう。これ、ありがとうございます。では行って来ますねー」
「気をつけて」
ライラさんに見送られて工房を出た私は、ダンジョンさんに誘導されて人間さん達の所へ急ぎます。
「……」
「すぐ近くですかー。じゃあ幻を発動させますねー」
ダンジョンさんのナビを聞きながらカンテラの能力を発動させます。
人間さんは幻を見て何かを真剣に聞き始めました。
多分、スルドさんの作り話を説明する幻を見ているのでしょうね。
こういう時どんな幻を見ているのか正確には分からないので、エサを渡すタイミングがつかめません。
「……」
え?ならどうやって誘導しているのかって?
そうですねー、カンテラの幻はなんて言えば良いか分かりませんが感覚、でしょうか?それで作っています。
誘導する時は、相手を手招きする様な感覚ですかね?……説明し辛いのですよー。
今見せている相手に説明をするための幻ですが、これは自分ではない何かで相手に説明する感じでしょうか?
説明が終わるのはぼんやりと分かるのですが、細かい会話の流れまでは分かりません。
つまり今の私では、大体こんな感じの幻を見せているとしか分からないのですよー。
頑張らないといけませんねー。
で、どうしましょうか?これ。
「……」
「はあ、宝箱にエサを入れて、幻を使ってそこに人間さんを案内すれば良いですかー。え?スルドさんとルトラさんが宝箱を作って置いてくれた?後は中身を入れるだけですかー。仕事早いですねー。あ、中身はスライムさんに持たせろ?わかりましたー」
少ししてやってきたスライムさんにライラさんから渡された物を渡して少し経ってから、ダンジョンさんが準備完了と伝えてくれました。
「人間さん。ちゃんとついてきて下さいねー」
ダンジョンさんのナビにしたがって人間さんを誘導。
そして宝箱を開けさせます。
「これからどうしましょうかー?」
昨日の作戦会議は作り話を考えた所で終わっていたので、これから先を考えてません。
「……」
「考えてなかったのかって?ぶっつけ本番です」
「……」
呆れながらもダンジョンさんは案を出してくれます。
「人間さんへ適度にダメージを負わせて逃がせ?了解ですー」
それから応援に来てくれたこだまさん達と共に、人間さんを殺さない程度にぼろぼろにしてダンジョンさんから逃がしました。
あ、一人だけ殺しちゃいましたが、大丈夫ですよね?
あー、魂の力おいしいですー。
―――――――――――
人間の町でちょっとした騒ぎが起きていた。
最近行方不明者の出る森を調査に行った人達がぼろぼろになって帰って来たのだ。
7名で行ったうち、軽傷者1名、重傷者6名、死亡者1名。
最初は凶悪な魔物でも出たのかと思われた。
最近、魔物の巣窟であるダンジョンと言うものが大陸に5つ出てきた事は有名だ。
そのダンジョンがこの近くにも出てきていて其処から凶悪な魔物が出てきているのでは?と思われたのだ。
だが、生還した者達の話を聞いた者達に衝撃が走った。
今までただの魔物の巣窟と思われていたダンジョンの秘密が明らかとなったのだから。
冒険者達は急いでそれぞれが行動を始めた。
自らの欲望や夢を求めて――
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これから人間さんが色んなものを求めてダンジョンさんに来ます。
……来るはず?
それからちょっとだけ人間さん達によってこの世界の事が書かれました。
どうやらクロマさん達のいる所は大きな一つの大陸のようですよ。
では、感想お待ちしてます。