第10話 紅堕天使の4姫
サリウス伯爵邸に落ち着いてから二ヶ月。
ミモラは不慣れな政務を卒なくこなし、引退を覚悟していた元代官ミツルギも、彼女の覇気に打たれて執事として忠誠を誓っていた。
子供の頃のミモラお嬢様を知る、ミツルギは度々、訓練上に呼び出されて、老体にムチを打って、目が霞み、老体が軋むなかミモラの剣の相手をさせられていた。
──苦労人ミツルギが使用人に憐れみの目で見つめられ、今日もミモラに酷使されている。
一方、テティアとメアリーは『修行』
と称して領内の各村をくまなく散策し、森の生態系をすでに手の内に収めていた。
エリスは、屋敷の使用人達に可愛がられ、お世話をされる日々を過ごしていた。
そんな折、サリウス冒険者ギルドの長・バランからミモラ伯爵へ緊急の要請が入る。
『森の深層域から、何故か強力な魔獣が中層へと溢れ出している。』と、緊急の要請があった。
──このままでは五十年ぶりの災厄になる可能性がある──
その報を受け、ミモラはテティアを代理人として、騎士長を含めた騎士数名を従えギルドへと赴いた。
「緊急要請に応えてくれてありがとう。私がこのサリウス領の冒険者ギルド長をしているバランだ、宜しく頼む」
「ミモラ・サリウス伯爵の代理で来ました。テティア・サリウスですわ。状況は把握しております」
ソファに腰掛け、優雅に微笑むテティア。
対するギルド長バランは、一八〇センチを超える巨躯と鋭い眼光を持つ猛者だった。
背後に控える騎士たちがその威圧感に冷や汗を流す中、テティアだけは『騎士たちの訓練を強化しなくては』と内心でため息をついていた。
「テティア様……今回の討伐、騎士団とともに中層域の掃討をお願いしたい」
「ええ、問題ありませんわ。ただ、騎士団も冒険者も無駄に死なせるわけにはいきません。まずは私と側近の二名で威力偵察を行い、間引きます」
「な……二人で!? 無謀です! 相手は高位魔獣ですよ!」
「大丈夫ですわ。烏合の衆が何人いたところで、足手まといになるだけですから」
ニコリと、一点の曇りもない笑顔で言い放たれた『烏合の衆』という言葉。
バランは絶句し、横に立つ騎士長は己の不甲斐なさに唇を噛み肩を落とした。
テティアにとって、もはやS級魔獣ですら『少し手応えのある演習相手』に過ぎなかったのだ。
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結局、偵察に向かったのは四人だった。
テティア、メアリー。そして『私も行くわ!』と静止を聞かなかったミモラと、その影たるシルビア。
屋敷と領政は全て家令のジグルドへ押し付け、ミモラとシルビアは意気揚々とサリウス邸を飛び出していった。
残された苦労人ミツルギは使用人達に哀愁の籠もった目で見つめられ、『ミモラ様ですから』と同情されていた。
エリス直伝の『創生術式』を操る不老の美女軍団は、三日間にわたって森を蹂躙した。
ブラックドラゴン、ギガンテス、ベヒモス――。
伝説級の魔獣たちが、彼女たちの放つ『魔法ではない術式』によって、悲鳴を上げる間もなく屠られていく。
三日後。
森から現れた彼女たちの姿に、待ち構えていたギルドの調査員たちは腰を抜かした。
四人は、頭の先から足の先まで鮮血に染まっていた。
美しきドレスアーマーは血糊で汚れ、その背後には山のようなSS級魔獣の死骸が、創生された魔力の鎖によって引きずられている。
森の中は、まるで神の鉄槌が落ちたかのようにクレーターが刻まれ、地形そのものが変貌していた。
「……いや、ありえない。うちの領主一族は、人間をやめているのか……?」
戦慄するバランをよそに、四人は『お腹が空きましたわね』『今夜は竜のステーキにしましょう』と、血まみれのまま可憐に微笑み合っていた。
この日を境に、彼女たちへの呼び名は変わった。
天使のように美しく、悪魔のように残酷な、鮮血の支配者。
誰が呼んだか――『サリウス領・紅堕天使の4姫』。
その異名が、畏怖とともにミレニアム共和国全土へと響き渡るまで、そう時間はかからなかった。
いつも読んでくれて難有いのじゃ!
…グスンッ。お母様に3日間もほっとかれたのじゃ。妾、寂しくて死にそうだったのじゃ…
まあ、サリウス領の邸宅にいる皆が構ってくれるから許してやるのじゃ!
応援してくれる読者の為に…妾は…
妾は…張り切って頑張るからのう!
(*´ω`*)/応援これからも頼むのじゃ⭐




