第4話 伯爵位と転封
テティア一行がミレニアム共和国へ亡命してから、瞬く間に二週間が過ぎた。
その間に、カリスト侯爵家では激震が走っていた。
母・ミモラによる鮮やかな電撃離婚である。
不貞を働いた元夫を完膚なきまでに叩きのめした彼女は、一切の未練なく実家であるエンケラド辺境伯家へと舞い戻ってきたのだ。
しかし、ここで一つ問題が浮上した。
当主である実弟のメイル辺境伯は、将来、自分と姉の家系で家督争いが起きることを恐れたのだ。
彼は言葉巧みにミモラを説得し、『相続権の放棄』と引き換えに、辺境伯家が所有する『サリウス伯爵位』を彼女に譲り渡し、独立させることに成功した。
──姉上、あそこは風光明媚で、のんびり隠居するには最適ですよ──
その甘い言葉に乗り、快諾したミモラだったが、いざ蓋を開けてみればそこは――。
切り立った崖と三つの貧相な農村と領都と言う名の寂れた街、そして『魔の森』が領地の半分以上を占める、超絶ブラックな『魔獣防衛の最前線』であった。
「……あのアホ弟、私をハメたわね?」
資源もなければ、予算のほとんどが領軍の維持費に消える荒廃地。
実態を知るほどにミモラの額には青筋が浮かび、汗をかきながらも、弟への『復讐』を誓うこととなった。
一方、テティアは母の伯爵位継承に伴い、再び貴族籍へと返り咲いた。
「よかったわね、エリス。これで貴女を堂々と伯爵家の令嬢として育てられるわ」
エリスの将来が開けたことに、テティアは心から安堵の笑みを浮かべる。
そこから、ミモラによる執拗な『姉弟ゲンカ(一方的な報復)』が始まった。
姉を騙した負い目から、メイル辺境伯は連日、蒼白な顔で土下座し、ミモラに平謝りする羽目になった。
結局、彼は最大限の支援金と物資を絞り出され、サリウス領のインフラ整備から豪華な屋敷の建設費用まで、すべてを肩代わりさせられたのである。
この『サリウス伯爵家・爆誕劇』の喧騒をよそに、エリスはスクスクと育っていた。
便宜上、魔法薬で髪と瞳の色をレッドブロンドと琥珀色に変え、タウンハウスでの穏やかな日々を楽しむ。
テティアは領地経営を学び、ミモラは政治の駆け引きを覚え、新生活への準備は着々と進んでいった。
だが、揺り籠の中の『赤子』は、ただ寝ているだけではなかった。
エリスは母乳を飲みながら、全神経を研ぎ澄ませ、失われた女神の権能を取り戻すべく修行に励んでいた。世界の記憶を摂り込み、神格を再構築し、闇の女神の箱庭を掌握していく。
その神聖な努力の傍らで……。
テティアとメアリーが、今日も仲睦まじく(物理的に)寄り添い、愛を囁き合っている。
(……なるほど。『乳繰り合う』とは、まさしくこの光景を指すのだな)
エリスは深遠な知識としてそれを記録した。
齢0歳にして、この世で最も尊く、かつ背徳的な『百合の深淵』を覗き込みながら、最強の女神は静かに覚醒の時を待っていた。
いつも読んでくれてありがとうなのじゃ!
ミモラおばあちゃまが合流してのう。その刹那に、妾は捕獲…もとい、確保されてのぅ。妾のほっぺに吸い付いて来てのぉ!ビックリしたのじゃ!でも、可愛がってくれるから、おばあちゃま大好きなのじゃ!
(*´ω`*)/応援これからも頼むのじゃ!それと、評価⭐してくれると嬉しいのじゃ!では、またのう!本編であうのじゃ!




