第3話 聖教会
リレトス聖教法国、その最深部に位置する『聖なる間』。
「法皇様。異端審問官による調査の結果、例の魔力災害の直接的な原因を特定するには至りませんでした」
大司教の報告に、玉座に座る法皇は静かに目を細めた。
「大司教よ。調査は継続せよ。それから、アーク王国の『黒髪、黒目の赤子』……あの追跡はどうなった」
「はっ。神父たちの目視により、赤子の瞳が『黒』であることは確認済みです。母子はドラン帝国へ向かったとの有力な証言があり、追跡部隊を放っております。ですが……帝都に入った直後、煙のように姿を消しました。アーレス公爵らによる暗殺の可能性も視野に入れております」
「……我が教会の権威を恐れるあまり、女神への捧げ物を自ら葬るか…、まぁ、それは無いだろうな愚かな輩よ。だが、二家の動向が不自然だな」
「左様にございます。公爵領での異変以来、アーレスとカリストの両家は何かに怯えるように沈黙を貫いております。密偵を送っても、一族全員が口を噤む始末……」
「構わぬ。見つけ次第、赤子は確保せよ。それ以外は――『懲罰部隊』による抹殺を許可する。女神オフィリア様のため、一粒の痕跡も残すな」
「御意に、法皇様」
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一方、アーク王国のカリスト侯爵邸では、聖教会の冷徹な議論とは正反対の『修羅場』が幕を開けていた。
「あなた……お話がありますわ」
「……ミモラ、突然どうしたんだい。そんな怖い顔をして…。」
不機嫌そうに問い返すゾル侯爵の前に、ミモラ夫人は一束の書類――浮気調査報告書を叩きつけた。
書類を一瞥したゾルの顔から、みるみる血の気が引いていく。冷たい汗が頬を伝い、床を濡らした。
「こ、これは何の冗談だい……」
「冗談? 隠し子が十六歳になるまで気づかなかった私への皮肉かしら? テティアにあれほど冷酷になれた理由が、ようやく理解できましたわ。他に愛する『予備』がいたからなのですわね」
「い、いや、誤解だよミモラ!」
「サティア、ビオラ。入りなさい」
夫人の合図で、隠し子の娘と愛人が、私兵に引きずられるようにして入室してきた。
「なっ!? お前たち、なぜここに!」
絶叫する夫を、ミモラはゴミを見るような目で見下ろした。
「私の可愛い娘を蔑ろにして、外で一文字違いの『サティア』なんて名の子を慈しんでいたなんて……吐き気がしますわ。私は今日、この家を出ます。新しい後継ぎができて良かったわね、ゾル侯爵様」
「……ま、待ってくれ! ミモラ!」
「これが離婚届と絶縁状。不貞の証拠は既に受理されています。あとは算出された慰謝料を、私の口座へ速やかに。……では、新しい奥様とどうぞお幸せに。永遠に、ご機嫌よう」
ミモラは優雅に踵を返した。
「シルビア、行くわよ」
「御意、マイ・ロード」
傍らには、侯爵家では見かけない、鋭い眼光を宿した侍女が寄り添っていた。
ミモラ元侯爵夫人は、愛する娘と孫を追うように、実家であるミレニアム共和国へと向けて、一切の未練なく旅立っていったのである。
いつも読んでくれてありがとうなのじゃ!
いよいよ聖教会がのぅ、妾とお母様を本格的に狙い始めたのじゃ。さて、妾の大切なお母様に、指一本でも触れたら許さないのじゃ!
それに、ミモラおばあちゃまがとうとう動き出したのう。さあ、今後の展開が楽しみじゃな!
(*´ω`*)/応援これからも頼むのじゃ!それと、評価⭐してくれると嬉しいのじゃ!では、またのう!本編であうのじゃ!




