不穏
不穏ですね
## 1
西の町に到着したのは、出発から一週間後のことだった。
町は村よりも大きく、石造りの建物が立ち並び、市場には様々な商品が並んでいる。人々の活気ある声が響き、まるで平和そのものといった光景だった。
「ここで補給をする。武器の手入れもしておこう」
リオンが言った。彼の表情は相変わらず優しいが、目の下には隈ができていた。最近、彼はほとんど眠っていないように見える。
「リオン、お前も休めよ。顔色が悪いぞ」
「大丈夫だ。お前のことが心配で、つい気が張っちゃうんだ」
リオンは笑ったが、その笑顔は痛々しかった。
俺たちは宿屋に部屋を取り、それぞれ休息を取ることにした。俺は部屋に入ると、リオンから渡された青い薬を取り出した。
毎日欠かさず飲んでいる。これを飲むと、頭がスッキリして、世界が美しく見える。あの悪夢も見なくなった。
俺は薬を一口飲んだ。
甘苦い味が口の中に広がり、やがて体が軽くなっていく。
そうだ、これでいい。疑う必要なんてない。俺は勇者で、魔王を倒して、世界を救うんだ。
### 2
その夜、町の酒場で食事をしていると、隣のテーブルで商人たちが話しているのが聞こえた。
「最近、東部で奇妙な噂を聞いたぞ」
「奇妙な噂?」
「ああ。魔物に襲われた村の生き残りが言うには、魔物の死体が人間に見えたって話だ」
俺は思わず耳を澄ませた。
「馬鹿な。魔物は魔物だろう」
「それがな、複数の村人が同じことを言ってるらしい。魔物を殺したら、それが人間の死体だったって」
「狂ってるな。戦争の恐怖で頭がおかしくなったんだろう」
「かもしれんが……妙な話だ」
俺は胸が締め付けられるのを感じた。
人間の死体。
夢で見たあの光景。
「ルーク、どうした?」
リオンが心配そうに見ていた。
「いや、なんでもない」
俺は視線を逸らした。
「そうか。あまり他人の話を真に受けるなよ。戦場じゃ色んな噂が飛び交うものだ」
リオンの声は、いつもより低く、警戒するような響きがあった。
### 3
翌朝、俺たちは町を出発した。次の目的地は北の砦。そこで王国軍と合流し、魔王軍との大規模な戦闘に参加する予定だった。
道中、俺たちは何度も魔物と戦った。
ゴブリン、オーク、そして巨大な魔獣。
俺は聖剣を振るい、次々と倒していった。
だが、戦うたびに違和感が強くなっていった。
魔物の断末魔が、まるで人間の悲鳴に聞こえる。
血の色が、時々赤く見える。
倒れた魔物の姿が、一瞬人間に見える。
「くそっ……」
俺は頭を振った。また幻覚か。
「ルーク、薬は飲んでるか?」
リオンが近づいてきた。
「ああ、毎日飲んでる」
「そうか。なら大丈夫だ」
リオンはそう言ったが、その目は不安で満ちていた。
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