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勇者2号  作者: ドネルケバブ佐藤


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3/13

夢現

どう転がるのでしょうね

### 9


翌朝、俺たちは村を出発した。


村人たちが手を振って見送ってくれる。俺も手を振り返したが、心は晴れなかった。


「次は西の町に向かう。そこで補給をして、さらに奥地へ進む」


リオンが地図を見ながら言った。


「わかった」


俺たちは道を歩き始めた。


だが、その時、俺の視界に異変が起きた。


一瞬、世界の色が変わった気がしたのだ。


鮮やかだった草原が、灰色に見えた。美しかった空が、血のように赤く見えた。


「うっ……」


俺は頭を押さえた。


「ルーク、どうした?」


リオンが駆け寄ってきた。


「いや、ちょっとめまいが……」


「大丈夫か?無理するなよ」


リオンは俺の額に手を当てた。


「熱はないな。でも、顔色が悪い」


「大丈夫だ。すぐ治る」


俺は深呼吸をした。やがて、視界が元に戻った。


「本当に大丈夫か?」


「ああ、心配するな」


だが、心の中で、不安が大きくなっていった。


### 10


その日の午後、俺たちは川のほとりで休憩していた。


エレナが川で水を汲み、マルコが簡単な食事を用意してくれた。


「ルーク、ちょっと来てくれ」


リオンが俺を少し離れた場所に呼んだ。


「どうした?」


「お前に渡すものがある」


リオンは小さな瓶を取り出した。中には青い液体が入っている。


「これは?」


「薬だ。お前の体調を整えるためのもの」


「薬?」


「ああ。勇者は強大な力を使うから、体に負担がかかる。この薬を飲めば、調子が良くなる」


リオンは俺に瓶を手渡した。


「毎日、朝と夜に一口ずつ飲むんだ。忘れるなよ」


「わかった」


俺は瓶を受け取った。


「これを飲めば、あのめまいも治る?」


「ああ、きっと治る」


リオンは笑顔を作った。だが、その目は相変わらず暗かった。


「ありがとう、リオン」


「どういたしまして。お前を守るのが、俺の役目だからな」


その言葉に、何か引っかかるものを感じた。


守る?それとも、監視?


いや、そんなはずはない。リオンは俺の親友だ。


「じゃあ、今すぐ飲むよ」


俺は瓶を開けて、一口飲んだ。


苦い味がした。だが、すぐに甘い後味が広がった。


そして、不思議なことに、体が軽くなった気がした。頭もクリアになり、さっきまでの不安が消えていく。


「どうだ?」


「すごい、体が楽になった」


「良かった。毎日忘れずに飲むんだぞ」


「ああ、わかった」


俺たちは仲間のもとへ戻った。


世界は再び輝いて見えた。草原は緑に、空は青く、全てが美しい。


そうだ、これが正しい世界だ。魔物は醜く、人間は美しい。俺は勇者で、仲間は味方。疑う必要なんてない。




### 11


夜、俺は夢を見た。


暗闇の中、誰かが泣いている。


「助けて……助けて……」


その声は、オークの声だった。


いや、違う。人間の声だ。


「やめてくれ……お願いだ……」


俺は暗闇の中を走った。声の主を探して。


やがて、一人の男が見えた。


男は地面に倒れていて、体中血だらけだった。


「お前は……」


男の顔を見て、俺は息を呑んだ。


それは、俺が殺したオークの顔だった。


いや、オークじゃない。人間だ。中年の、普通の男性。


「なぜ……なぜ俺を殺した……」


男は苦しそうに言った。


「俺には家族がいるのに……子供がいるのに……」


「違う、お前は魔物だ。オークだ」


「俺は人間だ……ただの農夫だ……」


「嘘だ!」


俺は叫んだ。


すると、周りに人影が現れ始めた。


俺が殺したゴブリン、オーク、その他の魔物たち。


いや、全員人間だ。


男性、女性、老人、子供。


みんな血まみれで、俺を見つめている。


「殺人鬼……」


「人殺し……」


「勇者なんかじゃない……」


「違う!俺は勇者だ!お前たちは魔物だ!」


俺は聖剣を抜いた。


だが、剣は光らなかった。


代わりに、剣身に映ったのは、狂気に満ちた自分の顔だった。


「うわああああ!」


俺は悲鳴を上げて、目を覚ました。


### 12


「ルーク!大丈夫か!」


リオンが俺の肩を揺さぶっていた。


「あ、ああ……夢、だったのか……」


俺は額の汗を拭った。心臓がバクバクと音を立てている。


「すごいうなされてたぞ。大丈夫か?」


「ああ、大丈夫だ。ただの悪夢だ」


「そうか」


リオンはホッとした表情を見せた。


「薬、飲んだか?」


「ああ、昨日飲んだ」


「ならいいんだが……」


リオンは心配そうに俺を見つめた。


「リオン、あのさ」


「なに?」


「もし、もしもだぞ。俺が殺してるのが、魔物じゃなかったらどうする?」


リオンの顔が蒼白になった。


「何を言ってるんだ、ルーク」


「いや、夢で見たんだ。俺が殺したのは人間だったって」


「夢は夢だ。現実じゃない」


「でも……」


「ルーク、聞いてくれ」


リオンは俺の両肩を掴んだ。


「お前は勇者だ。選ばれし者だ。魔物を倒して、世界を救うんだ。それが真実だ。疑っちゃいけない」


「そう、だよな」


「ああ。だから、変なこと考えるな。薬をちゃんと飲んで、体調を整えろ。いいな?」


「わかった」


リオンは俺を離した。


「もう朝だ。出発の準備をしよう」


リオンは部屋を出ていった。


俺は一人、ベッドに座って考えた。


夢は夢。現実じゃない。


でも、なぜこんな夢を見るんだ?



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