最終回
終わり
### 11
数日後、俺は王都を出た。
民衆は俺を引き止めようとしたが、俺は断った。
「俺には、やるべきことがある」
「どこへ行かれるのですか?」
「旅に出る。俺が殺した人々の墓を、一つ一つ訪れる」
「そんな……」
「これが、俺の贖罪だ」
俺は王都を後にした。
一人で、旅に出た。
リオンの遺書と、聖剣を持って。
剣はもう、人を斬るためじゃない。
墓標を作るために使う。
### 12
旅の途中、俺は様々な場所を訪れた。
かつて俺が襲った村、町、集落。
そこで死者の名を聞き、墓を作った。
時には罵られ、石を投げられた。
だが、俺は受け入れた。
それが、俺の罪だから。
そして、ある日、俺は一つの墓の前に立った。
「リオン」
墓標に刻まれた名前。
「お前の墓、やっと見つけたよ」
俺は墓の前に座った。
「なあ、リオン。俺、頑張ってるよ」
風が吹いた。
「人間として、生きてる。まだ、完璧じゃないけど」
木々が揺れた。
「でも、お前のおかげだ。お前が教えてくれたから」
涙が流れた。
「ありがとう、リオン。俺の親友」
俺は長い時間、そこに座っていた。
### 13
それから、さらに数ヶ月が経った。
俺は相変わらず旅を続けていた。
ある日、俺は北の砦の跡地を訪れた。
あの、激戦があった場所。
リオンが死んだ場所。
そこには、もう何も残っていなかった。
ただ、荒れ果てた大地があるだけ。
俺はそこに立ち、周りを見渡した。
かつて、ここで何百人も死んだ。
俺が殺した人々。
「全部、茶番だったんだな」
俺は呟いた。
「俺の戦いも、俺の正義も、全部嘘だった」
そして、俺は笑い出した。
最初は小さく、やがて大きく。
「あはは……あはははは……」
止まらなかった。
涙を流しながら、笑い続けた。
「なんて、馬鹿らしい……」
「なんて、滑稽な……」
全てが、あまりにも馬鹿らしかった。
国家の陰謀。
武器の消費。
勇者という名の兵器。
魔王という名の囚人。
友の死。
全部、全部、茶番だった。
「あははははは!」
俺は地面に座り込んで、笑い続けた。
怒りでもない。
悲しみでもない。
ただ、この世界の滑稽さに、俺は笑うしかなかった。
### 14
どれくらい笑っていたのか、わからない。
やがて、笑い声は止まった。
俺はそこに座り込んだまま、空を見上げた。
夕日が沈んでいく。
赤く、美しい夕日。
「なあ、リオン」
俺は呟いた。
「俺、これからどうすればいいんだろうな」
答えは返ってこない。
「でも、まあ、とりあえず生きるよ」
俺は立ち上がった。
「人間として、な」
そして、再び歩き始めた。
どこへ行くのかわからない。
でも、歩き続ける。
それが、生きるということだから。
空から、通信機の音が聞こえた気がした。
いや、幻聴だ。
もう、司令部なんて存在しない。
だが、脳裏に言葉が浮かんだ。
『任務完了。よくやった、勇者よ』
「ふざけるな」
俺は呟いた。
「俺は、もう勇者じゃない」
そして、笑った。
また、笑い出した。
「あはは……あははははは……」
狂ったような笑い声が、荒野に木霊した。
夕日が沈み、闇が訪れる。
だが、俺は笑い続けた。
この狂った世界に。
この滑稽な人生に。
そして、それでも生きていく自分に。
「あはははははは……」
笑い声だけが、夜の闇に響き続けた。
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**【勇者2号 完】**




