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勇者2号  作者: ドネルケバブ佐藤


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11/13

王都へ

今日完結です


俺は荒野を走り続けた。


背中には勇者1号の老人。もう息はほとんどなかった。


「ルーク……もう、いい……」


「黙ってろ。まだ死なせない」


俺は必死だった。


この老人を救えば、何かが変わる気がした。


この狂った世界に、一筋の光が差す気がした。


だが、現実は残酷だった。


俺が立ち止まった時、老人はもう冷たくなっていた。


「おい……おい!」


俺は老人を地面に降ろし、揺さぶった。


だが、反応はない。


「くそっ……くそっ……」


俺は拳で地面を叩いた。


また、一人死んだ。


俺のために、誰かが死んだ。


### 2


俺は老人を埋葬した。


荒野の真ん中、何もない場所に。


墓標もない。ただの土の盛りだけ。


「すまない……名前も知らないままで」


俺は手を合わせた。


「でも、あんたの言葉は忘れない。人間として生きる。それが俺の道だ」


風が吹いた。


まるで、老人が答えているようだった。


俺は立ち上がった。


これからどうする?


城は崩壊した。勇者1号は死んだ。


真実を知った俺は、もう元の世界には戻れない。


「王都に行くか……」


そこで真実を暴露する。


両国の茶番を、世界に知らしめる。


それが、俺にできる唯一のことだ。


俺は南へ向かって歩き始めた。


### 3


だが、王都への道は遠かった。


数日間、俺は荒野を彷徨った。


食料もなく、水もなく、ただ歩き続けた。


やがて、小さな集落にたどり着いた。


そこは、戦争の被害を受けていない、平和な場所だった。


「すみません……水を分けてもらえませんか」


俺は一軒の家の扉を叩いた。


扉が開き、中年の女性が顔を出した。


「あら、旅の方?どうぞ入って」


女性は優しく微笑んだ。


俺は家に入り、水を飲ませてもらった。


「ありがとうございます」


「いいのよ。困った時はお互い様だから」


女性は食事も用意してくれた。


久しぶりのまともな食事だった。


「あなた、どこから来たの?」


「北の……方から」


「まあ、戦争地帯から?大変だったでしょう」


女性は心配そうに俺を見た。


「ええ、まあ……」


「戦争、早く終わればいいのにね。あんな無意味なこと」


「無意味……」


「そうよ。誰も得しない。ただ人が死ぬだけ」


女性は窓の外を見た。


「私の夫も、兵士として戦場に行ってね。もう三年も帰ってこない」


「そうですか……」


「生きてるといいんだけど」


女性は寂しそうに笑った。


俺は何も言えなかった。


もしかしたら、俺がその夫を殺したのかもしれない。


「ごめんなさい、暗い話をして」


「いえ……」


「あなたは、これからどこへ?」


「王都へ」


「王都?何の用事?」


「……真実を伝えに」


女性は不思議そうに俺を見たが、それ以上は聞かなかった。


### 4


翌朝、俺は集落を出た。


女性は食料を持たせてくれた。


「気をつけてね」


「ありがとうございます」


俺は深く頭を下げた。


そして、再び歩き始めた。


だが、数時間後、俺は兵士の一団と遭遇した。


「止まれ!」


十数人の兵士が俺を囲んだ。


「お前、勇者2号だな」


「ああ」


「任務を放棄し、魔王城を破壊した罪で、逮捕する」


「逮捕?」


俺は笑った。


「俺を逮捕して、どうするんだ?」


「王都で裁判にかける」


「裁判?茶番の上に、さらに茶番を重ねるのか」


「黙れ!抵抗するな!」


兵士たちが俺に近づいてきた。


俺は剣を抜いた。


「悪いが、捕まるわけにはいかない」


「なら、力ずくで!」


兵士たちが襲いかかってきた。


俺は戦った。


だが、今度は殺さなかった。


剣の柄で殴り、足を払い、気絶させるだけ。


やがて、全員が地面に倒れた。


「すまない」


俺は彼らに謝り、再び歩き始めた。


### 5


王都が見えてきたのは、それから三日後のことだった。


巨大な城壁、立派な門、行き交う人々。


一見、平和そうな光景だった。


だが、俺には違って見えた。


この平和は、誰かの犠牲の上に成り立っている。


戦場で死んだ人々の上に。


「よし……」


俺は門に向かって歩いた。


だが、門の前には大勢の兵士がいた。


「勇者2号を発見!捕らえろ!」


俺は走った。


門をくぐり、街の中へ。


兵士たちが追いかけてくる。


「待て!」


「捕まえろ!」


俺は人混みに紛れ、必死で逃げた。


やがて、王城の前にたどり着いた。


「ここだ……」


俺は王城に突入した。


### 6


城の中は混乱していた。


「勇者2号が侵入した!」


「警備を厳重に!」


兵士たちが右往左往している。


俺はその隙を突いて、謁見の間へ向かった。


そこに王がいる。


真実を、王に伝える。


そして、全てを終わらせる。


廊下を走り、階段を登る。


やがて、謁見の間の扉が見えた。


「そこまでだ、勇者2号」


背後から声がした。


振り返ると、あの黒いスーツの男が立っていた。


司令官だ。


「お前……生きていたのか」


「当然だ。あの程度の火事で死ぬものか」


男は冷たく笑った。


「お前は厄介な存在になったな。真実を知りすぎた」


「ああ、知った。全部な」


「なら、ここで死んでもらう」


男は再び拳銃を取り出した。


だが、俺も剣を構えた。


「やれるものなら、やってみろ」


男が発砲した。


俺は横に転がり、弾をかわした。


そして、走り出した。


男に向かって。


「くそっ!」


男は連射した。


弾が俺の肩をかすめた。痛い。だが、止まらない。


俺は男に体当たりをした。


男は倒れ、銃が床に落ちた。


「くそ……くそ……」


男は銃を拾おうとした。


だが、俺がそれを蹴り飛ばした。


「もう終わりだ」


俺は剣を男の喉に突きつけた。


「殺すか?」


男が挑発的に笑った。


「殺してみろ。お前は結局、殺人鬼だ」


「……」


俺は剣を下ろした。


「殺さない。もう、誰も殺さない」


「馬鹿な奴だ」


男は笑った。


「ならば、私が殺す」


男は懐から小型ナイフを取り出し、俺に飛びかかってきた。


だが、その瞬間、背後から銃声が響いた。


男の体が崩れ落ちた。


「誰だ……」


振り返ると、一人の兵士が銃を構えていた。


「あなたが勇者2号ですね」


「ああ……」


「私は、リオンの友人です」


「リオンの……」


兵士は銃を下ろした。


「彼から聞いていました。もし勇者2号が真実を知ったら、助けてあげてほしいと」


「リオン……」


俺は涙が出そうになった。


「彼は最後まで、あなたのことを心配していました」


「そうか……」


「さあ、行ってください。王に真実を伝えてください」


「ありがとう」


俺は謁見の間の扉を開けた。

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