王都へ
今日完結です
俺は荒野を走り続けた。
背中には勇者1号の老人。もう息はほとんどなかった。
「ルーク……もう、いい……」
「黙ってろ。まだ死なせない」
俺は必死だった。
この老人を救えば、何かが変わる気がした。
この狂った世界に、一筋の光が差す気がした。
だが、現実は残酷だった。
俺が立ち止まった時、老人はもう冷たくなっていた。
「おい……おい!」
俺は老人を地面に降ろし、揺さぶった。
だが、反応はない。
「くそっ……くそっ……」
俺は拳で地面を叩いた。
また、一人死んだ。
俺のために、誰かが死んだ。
### 2
俺は老人を埋葬した。
荒野の真ん中、何もない場所に。
墓標もない。ただの土の盛りだけ。
「すまない……名前も知らないままで」
俺は手を合わせた。
「でも、あんたの言葉は忘れない。人間として生きる。それが俺の道だ」
風が吹いた。
まるで、老人が答えているようだった。
俺は立ち上がった。
これからどうする?
城は崩壊した。勇者1号は死んだ。
真実を知った俺は、もう元の世界には戻れない。
「王都に行くか……」
そこで真実を暴露する。
両国の茶番を、世界に知らしめる。
それが、俺にできる唯一のことだ。
俺は南へ向かって歩き始めた。
### 3
だが、王都への道は遠かった。
数日間、俺は荒野を彷徨った。
食料もなく、水もなく、ただ歩き続けた。
やがて、小さな集落にたどり着いた。
そこは、戦争の被害を受けていない、平和な場所だった。
「すみません……水を分けてもらえませんか」
俺は一軒の家の扉を叩いた。
扉が開き、中年の女性が顔を出した。
「あら、旅の方?どうぞ入って」
女性は優しく微笑んだ。
俺は家に入り、水を飲ませてもらった。
「ありがとうございます」
「いいのよ。困った時はお互い様だから」
女性は食事も用意してくれた。
久しぶりのまともな食事だった。
「あなた、どこから来たの?」
「北の……方から」
「まあ、戦争地帯から?大変だったでしょう」
女性は心配そうに俺を見た。
「ええ、まあ……」
「戦争、早く終わればいいのにね。あんな無意味なこと」
「無意味……」
「そうよ。誰も得しない。ただ人が死ぬだけ」
女性は窓の外を見た。
「私の夫も、兵士として戦場に行ってね。もう三年も帰ってこない」
「そうですか……」
「生きてるといいんだけど」
女性は寂しそうに笑った。
俺は何も言えなかった。
もしかしたら、俺がその夫を殺したのかもしれない。
「ごめんなさい、暗い話をして」
「いえ……」
「あなたは、これからどこへ?」
「王都へ」
「王都?何の用事?」
「……真実を伝えに」
女性は不思議そうに俺を見たが、それ以上は聞かなかった。
### 4
翌朝、俺は集落を出た。
女性は食料を持たせてくれた。
「気をつけてね」
「ありがとうございます」
俺は深く頭を下げた。
そして、再び歩き始めた。
だが、数時間後、俺は兵士の一団と遭遇した。
「止まれ!」
十数人の兵士が俺を囲んだ。
「お前、勇者2号だな」
「ああ」
「任務を放棄し、魔王城を破壊した罪で、逮捕する」
「逮捕?」
俺は笑った。
「俺を逮捕して、どうするんだ?」
「王都で裁判にかける」
「裁判?茶番の上に、さらに茶番を重ねるのか」
「黙れ!抵抗するな!」
兵士たちが俺に近づいてきた。
俺は剣を抜いた。
「悪いが、捕まるわけにはいかない」
「なら、力ずくで!」
兵士たちが襲いかかってきた。
俺は戦った。
だが、今度は殺さなかった。
剣の柄で殴り、足を払い、気絶させるだけ。
やがて、全員が地面に倒れた。
「すまない」
俺は彼らに謝り、再び歩き始めた。
### 5
王都が見えてきたのは、それから三日後のことだった。
巨大な城壁、立派な門、行き交う人々。
一見、平和そうな光景だった。
だが、俺には違って見えた。
この平和は、誰かの犠牲の上に成り立っている。
戦場で死んだ人々の上に。
「よし……」
俺は門に向かって歩いた。
だが、門の前には大勢の兵士がいた。
「勇者2号を発見!捕らえろ!」
俺は走った。
門をくぐり、街の中へ。
兵士たちが追いかけてくる。
「待て!」
「捕まえろ!」
俺は人混みに紛れ、必死で逃げた。
やがて、王城の前にたどり着いた。
「ここだ……」
俺は王城に突入した。
### 6
城の中は混乱していた。
「勇者2号が侵入した!」
「警備を厳重に!」
兵士たちが右往左往している。
俺はその隙を突いて、謁見の間へ向かった。
そこに王がいる。
真実を、王に伝える。
そして、全てを終わらせる。
廊下を走り、階段を登る。
やがて、謁見の間の扉が見えた。
「そこまでだ、勇者2号」
背後から声がした。
振り返ると、あの黒いスーツの男が立っていた。
司令官だ。
「お前……生きていたのか」
「当然だ。あの程度の火事で死ぬものか」
男は冷たく笑った。
「お前は厄介な存在になったな。真実を知りすぎた」
「ああ、知った。全部な」
「なら、ここで死んでもらう」
男は再び拳銃を取り出した。
だが、俺も剣を構えた。
「やれるものなら、やってみろ」
男が発砲した。
俺は横に転がり、弾をかわした。
そして、走り出した。
男に向かって。
「くそっ!」
男は連射した。
弾が俺の肩をかすめた。痛い。だが、止まらない。
俺は男に体当たりをした。
男は倒れ、銃が床に落ちた。
「くそ……くそ……」
男は銃を拾おうとした。
だが、俺がそれを蹴り飛ばした。
「もう終わりだ」
俺は剣を男の喉に突きつけた。
「殺すか?」
男が挑発的に笑った。
「殺してみろ。お前は結局、殺人鬼だ」
「……」
俺は剣を下ろした。
「殺さない。もう、誰も殺さない」
「馬鹿な奴だ」
男は笑った。
「ならば、私が殺す」
男は懐から小型ナイフを取り出し、俺に飛びかかってきた。
だが、その瞬間、背後から銃声が響いた。
男の体が崩れ落ちた。
「誰だ……」
振り返ると、一人の兵士が銃を構えていた。
「あなたが勇者2号ですね」
「ああ……」
「私は、リオンの友人です」
「リオンの……」
兵士は銃を下ろした。
「彼から聞いていました。もし勇者2号が真実を知ったら、助けてあげてほしいと」
「リオン……」
俺は涙が出そうになった。
「彼は最後まで、あなたのことを心配していました」
「そうか……」
「さあ、行ってください。王に真実を伝えてください」
「ありがとう」
俺は謁見の間の扉を開けた。
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