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勇者2号  作者: ドネルケバブ佐藤


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10/13

真実

うーん...

「茶番……?」


「ああ。両国は実は裏で繋がっている。戦争は演出だ」


老人は弱々しく笑った。


「目的は一つ。在庫兵器の処分だ」


「在庫兵器……」


「両国とも、大量の武器を作りすぎた。だが、平和な時代にそれらは必要ない。だから、消費する必要があった」


老人は天井を見上げた。


「そこで考えられたのが、この戦争だ。架空の敵を作り、兵士を送り込み、武器を消費する」


「そんな……馬鹿な……」


「馬鹿なことだよ。だが、真実だ」


老人は俺を見た。


「そして、その戦争を効率的に進めるために作られたのが、『勇者』だ」


「勇者……」


「勇者とは、生体兵器のコードネームだ。人間を改造し、薬物で制御し、殺戮マシーンに変える」


老人の言葉が、心に突き刺さった。


「薬は認知を歪める。人間を魔物として認識させる。そうすれば、良心の呵責なく殺せる」


「くそっ……」


「私も、かつてはお前と同じだった。勇者1号として、数百人を殺した」


老人は目を閉じた。


「だが、やがて薬の効果が薄れた。真実が見え始めた。そして、私は気づいた。自分が殺人鬼だったことに」


「それで、あんたは……」


「逃げ出そうとした。だが、捕まった。そして、罰として、ここに閉じ込められた」


老人は生命維持装置を指した。


「私は『魔王』にされた。次の勇者が倒すべき、象徴的な敵として」


「なんてことだ……」


「そして、お前が勇者2号として作られた。私を倒すために」


俺は頭を抱えた。


全てが、茶番だった。


正義も、悪も、全部嘘だった。



「なあ、教えてくれ」


俺は老人を見た。


「俺はどうすればいい?この狂った世界で、俺は何をすればいい?」


老人は長い沈黙の後、口を開いた。


「私を殺せ」


「何?」


「私を殺して、お前が魔王になれ。それが、我々勇者の役割だ」


「冗談じゃない!」


俺は立ち上がった。


「もう誰も殺したくない!」


「だが、それしか道はない」


老人は悲しそうに笑った。


「私を殺さなければ、お前は任務不履行で処分される。私を殺せば、お前が次の魔王として、ここに閉じ込められる」


「そんな……」


「どちらを選んでも、地獄だ」


俺は拳を握りしめた。


「なら、俺は第三の道を選ぶ」


「第三の道?」


「ああ。この茶番を終わらせる」


俺は老人を見た。


「あんたを救い出す。そして、この戦争の真実を世界に伝える」


老人は目を見開いた。


「無理だ。お前一人で何ができる」


「一人じゃない」


俺はポケットから遺書を取り出した。


「リオンが、俺に託してくれた。人間として生きろと」


「リオン……お前の監視役か」


「ああ。彼は命を賭けて、俺に真実を教えてくれた」


俺は遺書を握りしめた。


「だから、俺はあきらめない。この狂った世界を、変える」


老人は涙を流した。


「馬鹿な奴だ……だが、頼もしいな」


老人は手を伸ばした。


俺はその手を握った。


「ありがとう、勇者2号……いや、ルーク」


「ルーク……俺の名前を知ってるのか」


「ああ。私はずっとお前を見ていた。この装置を通じて」


老人は機械を指した。


「お前が苦しむ姿を見て、私は何度も自分を呪った」


「もう、いい」


俺は老人の手を強く握った。


「一緒に、ここを出よう」


「ああ……」


### 12


だが、その時、背後で扉が開いた。


「感動的な再会だな」


聞き慣れない声が響いた。


振り返ると、黒いスーツを着た男が立っていた。


「誰だ、お前」


「私は司令官だ。お前たち勇者を管理する者」


男は冷たく笑った。


「勇者2号、いや、ルーク。お前は任務を放棄した」


「ああ、放棄した。もう人は殺さない」


「残念だ。お前は優秀な兵器だったのに」


男は懐から拳銃を取り出した。


「ならば、処分する」


銃口が俺に向けられた。


「待て!」


老人が叫んだ。


「彼を殺すな!」


「黙れ、勇者1号。お前も失敗作だ」


男は引き金を引いた。


だが、弾は俺に当たらなかった。


老人が、俺の前に飛び出したのだ。


「がはっ……」


老人の胸から血が流れた。


「勇者1号!」


俺は老人を抱きしめた。


「馬鹿な……なぜ……」


「お前には……未来がある……」


老人は苦しそうに笑った。


「私の分まで……生きてくれ……人間として……」


「くそっ……」


俺は涙を流した。


「馬鹿な真似を」


男が再び銃を構えた。


だが、その時、城全体が揺れた。


「何だ?」


男が戸惑った。


窓の外を見ると、城が炎に包まれていた。


「火事だ!誰か放火したのか!」


混乱が広がる中、俺は老人を抱えて立ち上がった。


「逃げるぞ」


「無理だ……もう……」


「諦めるな!」


俺は老人を背負い、部屋を出た。


### 13


廊下は煙に包まれていた。


兵士たちが右往左往している。


「勇者だ!」


「捕まえろ!」


だが、俺は構わず走った。


老人を背負って、必死で。


階段を降り、外へ出る。


城の外は地獄だった。


炎が燃え盛り、兵士たちが逃げ惑っている。


「どこまで……逃げるんだ……」


老人が弱々しく言った。


「わからない。でも、止まらない」


俺は走り続けた。


そして、城門を抜けた瞬間、背後で大きな爆発音が響いた。


振り返ると、城が崩れ始めていた。


「これで……終わりか……」


老人が呟いた。


「いや、始まりだ」


俺は老人を抱えて、荒野を走った。


どこへ行くのかわからない。


だが、止まらない。


リオンが教えてくれた。


人間として生きろと。


なら、俺は生きる。


この地獄を生き抜いて、真実を伝える。


そして、二度とこんな悲劇を起こさせない。


それが、俺の贖罪だ。

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