表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者2号  作者: ドネルケバブ佐藤


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/13

旅路へ

勇者の冒険の始まりです



目覚めた瞬間、世界は輝いていた。


窓から差し込む朝日が、まるで祝福のように俺の頬を撫でる。空気は甘く澄んでいて、遠くから聞こえる鳥の囀りは天使の歌声のように心地よい。シーツの感触すら、絹のように滑らかだ。


「おい、起きろよ勇者様。今日は出発の日だぞ」


扉を叩く音と共に聞こえてきたのは、聞き慣れた声。俺の幼馴染、リオンだ。


「ああ、今起きる」


俺は跳ね起きて身支度を整えた。鏡に映る自分の顔は若々しく、目には力が宿っている。黒い髪、鋭い眼光、引き締まった体。これが選ばれし勇者の姿か。悪くない。


部屋を出ると、リオンが廊下で腕を組んで待っていた。金髪碧眼の優男で、俺より一つ年上。幼い頃から一緒に育った、兄のような存在だ。


「遅いぞ、ルーク。今日は王都を出発する日なんだから、もっとシャキッとしないと」


「悪い悪い。でも、なんだか眠りが深くてさ」


「そうか。まあ、昨日は興奮して眠れなかっただろうしな」


リオンの笑顔は、いつも通り優しい。だが、その目の奥に何か影があるような気がして、俺は首を傾げた。


「リオン、お前大丈夫か?なんか顔色悪いぞ」


「え?ああ、大丈夫大丈夫。ちょっと寝不足なだけだ。お前のこと心配で眠れなくてな」


「俺のことを?」


「当たり前だろ。お前は勇者なんだぞ。魔王を倒す使命を背負ってるんだ。親友として、支援役として、お前を守らなきゃいけない。責任重大だよ」


リオンはそう言って俺の肩を叩いた。その手は少し震えていた気がしたが、きっと気のせいだろう。


### 2


王城の謁見の間は、荘厳な雰囲気に包まれていた。高い天井から吊るされたシャンデリアが金色の光を放ち、壁には英雄たちの肖像画が並んでいる。玉座に座る王は、白い髭を蓄えた威厳ある老人だった。


「勇者ルークよ。よくぞ参った」


王の声は低く、重々しい。


「はい、陛下」


俺は膝をついて頭を下げた。隣にはリオンが、そして後ろには今回の旅に同行する仲間たちが控えている。


「そなたは神に選ばれし者。この世界を脅かす魔王を討ち、平和を取り戻す使命を担っておる」


「謹んでお受けいたします」


「良い返事だ。では、これを授けよう」


王が手を挙げると、侍従が銀色に輝く剣を運んできた。柄には複雑な紋様が刻まれ、刀身は鏡のように磨き上げられている。


「これは聖剣アルディウス。代々勇者に受け継がれてきた、魔を討つ神の剣だ」


俺は剣を受け取った。手に馴染む重さ、心地よい冷たさ。これが俺の武器か。


「ありがたき幸せ」


「リオン」


王はリオンに視線を向けた。


「はっ」


「そなたは勇者の補佐役として、彼を支え、導き、そして……守るのだ。決して、決して勇者を一人にしてはならぬ。わかったな」


「はい、陛下。この命に代えても」


リオンの声は固かった。まるで何かを誓うような、重い響きがあった。


「では、出発せよ。神の加護があらんことを」


### 3


王都の門を出ると、そこには広大な草原が広がっていた。青々とした草が風に揺れ、空は抜けるように青い。遠くには山々が連なり、その向こうに魔王の城があるのだという。


「さあ、行くぞ。まずは東の村に向かう。そこで情報を集めて、魔物の動向を探る」


リオンが地図を広げながら言った。俺たちの旅は、これから始まるのだ。


仲間は五人。リオンを含めて六人のパーティーだ。


まず、盾を持った大柄な戦士、ガルド。寡黙だが頼りになる男だ。

次に、弓使いのエレナ。赤毛の快活な女性で、鋭い目つきをしている。

そして魔法使いのセリア。青いローブに身を包んだ、物静かな少女。

最後に僧侶のマルコ。ふくよかな中年男性で、いつもニコニコしている。


「よろしくな、みんな」


俺が声をかけると、全員が頷いた。


「勇者様のためなら、命も惜しくありません」


ガルドが低い声で言った。


「私たちが守りますから、安心してください」


エレナが笑顔を見せた。


「魔法のサポートは任せてください」


セリアが小さく頷いた。


「回復はお任せを。怪我をしたらすぐに言ってくださいね」


マルコが陽気に言った。


みんな、いい奴らだ。この仲間たちとなら、どんな困難も乗り越えられる気がする。


「じゃあ、出発だ」


俺たちは草原を歩き始めた。風が心地よく、鳥が歌い、世界は美しかった。


### 4


最初の戦闘は、森の中で起きた。


「勇者様、前方に魔物です」


エレナが弓を構えた。俺は目を凝らした。


茂みの奥から現れたのは、緑色の肌をした醜悪な生物。ゴブリンだ。牙を剥き出しにし、よだれを垂らしながら、こちらに向かってくる。


「よし、行くぞ」


俺は聖剣を抜いた。剣身が光を放ち、力が体に満ちてくるのを感じる。


ゴブリンが飛びかかってきた。俺は剣を横に薙いだ。


ズバッ。


一瞬で、ゴブリンの体が真っ二つになった。黒い液体が飛び散り、生物は地面に倒れた。


「やったな、ルーク」


リオンが後ろから声をかけてきた。


「ああ、楽勝だ」


しかし、その時、奇妙なことに気づいた。倒れたゴブリンを見ていると、一瞬、その姿が別のものに見えた気がしたのだ。



「ルーク、どうした?」


「いや、なんでもない」


俺は首を振った。気のせいだ。


「次が来るぞ」


ガルドが盾を構えた。森の奥から、さらに多くのゴブリンが現れた。


俺たちは戦った。剣を振るい、矢を放ち、魔法を唱え、盾で防ぐ。戦闘は激しかったが、俺たちの連携は完璧だった。


やがて、全てのゴブリンが倒れた。


「お疲れ様です、勇者様」


マルコが回復魔法を唱えてくれた。温かい光が体を包み、疲れが消えていく。


「ありがとう、マルコ」


「いえいえ。これが私の役目ですから」


マルコは笑顔で言った。


だが、その笑顔の奥に、何か悲しみのようなものが見えた気がした。


### 5


夜、野営地でのこと。


焚き火を囲んで、俺たちは食事をしていた。マルコが作ったシチューは温かく、美味しかった。


「今日は良い初陣だったな」


ガルドが言った。


「ええ、勇者様の力は本物です」


エレナが頷いた。


「これなら、魔王討伐も夢じゃないですね」


セリアが小さく笑った。


みんなの顔は明るく、希望に満ちている。俺も嬉しくなった。


「みんなのおかげだよ。俺一人じゃ何もできない」


「そんなことありませんよ、勇者様」


マルコが首を振った。


「あなたは選ばれし者。神の力を宿した、特別な存在なんですから」


特別な存在。その言葉が、なぜか胸に引っかかった。


俺は、本当に特別なのだろうか。


「ルーク、ちょっといいか」


リオンが俺を呼んだ。


「ああ」


俺はリオンと一緒に、焚き火から少し離れた場所に移動した。


「どうした?」


「いや、ちょっと話したくて」


リオンは夜空を見上げた。星が綺麗に輝いている。


「昔のこと、覚えてるか?」


「昔?」


「俺たちが子供の頃。一緒に遊んでた時のこと」


「ああ、覚えてるよ」


「お前はいつも、正義の味方になりたいって言ってたな」


「そうだっけ?」


「ああ。困ってる人を助けて、悪い奴をやっつけて、みんなを笑顔にするんだって」


リオンは俺の方を向いた。その目は、どこか悲しそうだった。


「ルーク、お前は今、幸せか?」


「幸せ?」


突然の質問に、俺は戸惑った。


「ああ、幸せだよ。勇者として選ばれて、仲間に恵まれて、世界を救う旅に出てる。これ以上何を望む?」


「そうか」


リオンは小さく笑った。


「ならいいんだ。お前が幸せなら、俺も嬉しい」


「リオン、お前……」


「なんでもない。ただ、俺はずっとお前の味方だからな。どんなことがあっても、お前を見捨てたりしない」


「当たり前だろ。俺たちは親友じゃないか」


「ああ、そうだな」


リオンは俺の肩を叩いた。その手は、また震えていた。


「リオン、本当に大丈夫か?さっきから様子がおかしいぞ」


「大丈夫だよ。ちょっと疲れてるだけだ」


リオンは笑顔を作った。だが、その笑顔は無理をしているように見えた。


「もし何かあったら、言ってくれよ。俺たちは親友だろ」


「ああ、ありがとう」


リオンは背を向けて、焚き火の方へ戻っていった。


俺は一人、夜空を見上げた。星は変わらず輝いている。


だが、心の中に、小さな違和感が芽生え始めていた。



評価コメントよろしく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ