7 王国騎士ってどういうことですか!?
「本日よりアルミナお嬢様の護衛を命じられました、王国騎士エスパーダと申します。よろしくお願いいたします」
国王陛下に「記憶を読む力」のことを報告しに行った翌日、シンク公爵家に一人の青年騎士がやってきた。
「彼は、王国騎士の中でも将来を有望視されている若者なんだ。これからは、彼がアルミナのことを守ってくれる」
「もったいないお言葉です」
公爵から紹介を受けた騎士は、深々とお辞儀をした。
騎士というだけあって体格はいいが、その表情はとても柔らかくて安心感があった。一目見て、アルミナはいい人そうだ、と彼のことを気に入った。
「よろしくお願いします!」
握手を求めようと差し出した右手を、アルミナは咄嗟に引っ込めた。
「お嬢様?」
心配したように、エスパーダがしゃがみ込んで顔を覗く。
(触れたら、記憶を読んでしまう……)
誰しも、知られたくない秘密はある。まだ力の制御もできない状態で触れれば、勝手に彼の記憶を読んでしまうだろう。
以前のアルミナであれば接することを躊躇わなかっただろうが、今の彼女は人と触れ合うことに慎重になっていた。
これから自分の護衛をしてもらう相手に、出会って早々嫌われたくなかった。
そんな思いを知ってか知らずか、エスパーダは失礼しますと断ってから、アルミナの右手を大きな両手で包み込んだ。
「あっ!?」
慌てるアルミナに、エスパーダは目を合わせながら言った。
「大丈夫ですよ。お嬢様の力のことは特別に教えてもらっています。他の人には言いませんので、安心してください」
「……嫌ではないのですか?」
「いいえ、ちっとも。お見苦しい記憶はあるかもしれませんが、お嬢様に隠さなければならないようなことはないはずです」
それは、優しい優しい声だった。
同時に、彼の記憶が流れ込んでくる。
彼は、ひとりぼっちだった。幼い頃に流行病で両親を亡くし、唯一の家族だった妹も悪い大人に連れ去られてしまった。
騎士になったのは、妹がまだどこかで生きていると信じて、連れ戻せる強さを身につけるため……。
まだ10代後半だというのに、この壮絶な人生を経験してきて、どうしてここまで真っ直ぐに生きていられるのだろう。
「すみません、泣かせるつもりはなかったのですが……」
言われて、アルミナは自分の頬に涙が伝っていることに気がついた。
「お見苦しかったですよね」
「ううん、違うの。あなたがとても凄い人だっていうことが分かりましたわ」
ごしごしと袖で涙を拭くのを制止し、エスパーダが持っていたハンカチを貸してくれる。
「アルミナの反応を見るに、君を護衛に選んだのは間違いなかったみたいだね」
公爵は穏やかに二人を見守っていた。




