5 希少魔法ってどういうことですか!?
分からないことがあれば、まずは「先生」に聞くのがいいだろう。
「ブレイン先生、質問があります!!」
「おや、お嬢様。今日はお早いのですね」
シンク公爵家でアルミナの家庭教師をしている三十半ばの男は、丸メガネを指で押し上げながら、目を丸くした。
ずっと座って勉強するのが苦手なアルミナにとって、図書室で静かに学習に取り組まなくてはならない時間は苦痛だった。
そんなアルミナが、時間よりも早く図書室に現れたことに、ブレインは驚きを隠せなかった。
「魔法について知りたいのです」
「魔法、ですか。しかし、お嬢様は……」
アルミナには魔法の才がないと、だいぶ幼い頃から分かっていた。魔力検査では、僅かな魔力こそあるものの、使用できるようになるのは難しいだろうと言われていた。
そのため、魔法に関する授業はやらなくてもよいということになっている。座学がひとつ減るならと、アルミナもそれをよしとしていたはずだ。
「そう、私には魔法が使えないはずですわよね?」
「そのように伺っております」
「ブレイン先生、少し手を貸していただけますこと?」
何が始まるのかと、ブレインは言われるままに手を差し出す。
「お嬢様、いったい何を……」
「先生の今日の朝食は、トースト一枚でしたわね! いけませんわ、これじゃあ今とってもお腹が空いているではありませんか!!」
「なぜそれを。いや、いつものことですので、ご心配なく」
普段から適当に食事を済ませていることは、屋敷にいる使用人たちなら知っている。どこからか聞きつけたのだろうと、ブレインは息を吐いた。
しかし、続く言葉に耳を疑った。
「今日は町に連れて行ってもらえるのですか!?」
目を輝かせて見上げてくるアルミナに、ブレインは目を瞬かせる。
「誰からそれを?」
外出の許可を取るために、公爵には話を通していた。
しかし、座学がある程度すすんでアルミナが飽き始めたころに話題を出すから、秘密にしておいてくれと頼んでいたはずだ。
話したとすれば公爵しかいないが、いくら娘に甘いとはいえ、線引きはしっかりする人だと記憶していた。
アルミナはしばらく目を輝かせていたが、やがてはっと何かを思い出したように首を横に振った。
「町ももちろん行きたいのですが、それよりも問題を解決するのが先ですわ。私、触った相手の記憶が読めるようになったみたいなんですの」
「はあ、記憶が……って、ええ!? それは本当ですか!?」
非常に驚いた顔で、ブレインはアルミナに問い返した。
「ええ、ジークと話している時に気づきましたの」
「それが本当なら、国の一大事です」
真剣な声色で、ブレインは続ける。
「他者の記憶が読めるという魔法は、過去にも記録があります。しかし、100年前のものが最近なのです。これは、邪を退ける聖女の称号をもつ魔法使いと同じくらい、希少なものなのですよ」
希少魔法を使う魔法使いとして、あれよあれよという間に公爵に話が伝わった。
希少魔法を使う魔法使いは、国が管理する必要がある。すぐに登城する準備が整えられた。




