4 この記憶ってどういうことですか!?
「たとえ指輪が外れなくても、それでも愛してくれる方と結婚できるかもしれませんもの」
後日、シンク公爵家にて。
ジークベルトはアルミナに再度、婚約の話を持ちかけてきた。しかし、やはりアルミナは首を縦には振らなかった。
「それが僕では駄目なの?」
「だって、ジークは……ジークのことは嫌いじゃありませんわ。でも、お友達としての好きですもの」
アルミナとて、ジークベルトのことは嫌いではない。友人としては、むしろ好きだ。
だが、それは恋や愛とは違うものなのだと、アルミナは誰が見ても相思相愛な自分の両親を見ていて感じるのだった。
「わかった。それなら、君が僕のことを友達以上に好きだって思ってくれるように、頑張るから」
「な……な!?」
しかし、ジークベルトもなかなか引かない。
こんなに積極的だっただろうかと、知らない幼馴染の一面に戸惑う。そんなアルミナをよそに、ジークベルトはアルミナの手を取った。
ジークの手が触れた瞬間。
アルミナの頭の中に、自分の知らない記憶が流れ込んできた。
自分の不注意で、アルミナに呪いの指輪をはめてしまったことを深く後悔するジークベルト。
ジェラルドのことが好きなアルミナが傷つかないように、顔も見たくないほど大嫌いだと言われたことを隠そうとしていたこと。
そのために、アルミナを愛している演技をしてくれていること。
(これは……ジークの記憶?)
アルミナは、ジェラルドに酷く拒絶されたことに悲しくなりながらも、突然頭の中に流れ込んできた記憶に戸惑った。
この記憶は、本物だ。そう頭が理解している。魔法の一種が発動したのだろうかと、アルミナは考えた。
「……ミナ、ルミナ!」
「ジーク……?」
はっ、と我に返る。
不安げに顔を覗き込むジークと目が合うと、アルミナはいたたまれなくなって、目を伏せた。
「そんなに僕のことが嫌だった?」
手に触れたのはまずかったかと、ジークベルトは慌てた。しかし、アルミナはふるふると弱々しく首を横に振った。
「いいえ。ジーク、あなたは偉いですわね。私は自分のことしか考えていなかったのに」
突然何を言い出すのかと訝しむジークベルトに、アルミナは続ける。
「ジェラルド様は、私のことを嫌っていらっしゃるのね。顔も見たくないほどに」
「誰がそんなことを言ったの?」
鋭い口調で、ジークは質問した。
その反応が、やはりアルミナの見た記憶が本物であると認識せざるを得ない。
「あなたは、私が傷つかないように、私のことを愛しているふりをしてくれようとしたのね」
アルミナがジェラルドのことが好きなように、ジークベルトだって、これから恋に落ちて、心から愛する相手と結婚したいはずだ。
指輪の件はジークベルトが悪かったとしても、ジェラルドに拒絶されたことを知られないように、自分の一生を捧げようとしている彼に、アルミナは申し訳なさを覚えた。
「お子ちゃまなんて言ってごめんなさい。大人ですわ、ジークは」
「ね、ねぇ、どうしちゃったの? 何で、そんなことを」
「私も、ちょっと考えがまとまりませんの。落ち着いたらお話ししますので、今日はお帰りいただけますか? 婚約の話は、一旦保留にしてくださいませ」
納得いかない顔をしているジークベルトを何とか帰し、一人残ったアルミナは頭を抱える。
「いや、どういうことですの!?」
冷静になって思う。他人の記憶を覗き見ることができるなんて、どういうことなんだと。
「まさか、これも呪いの指輪のせい? でも、ジークは私の記憶を見たような反応はしていませんでしたわ」
外れない以外にも追加効果があったのではとも思ったが、それなら手が触れた瞬間、ジークもアルミナの記憶を見ていないのはおかしい。
「よく分かりませんが、調べてみなくては」
いつまでもくよくよしているのは、自分らしくない。アルミナはぐっ、と拳を握りしめた。




