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3 大嫌いってどういうことですか!?

 城に戻って、父にアルミナの意思を伝えたジークベルトは、後日、兄の返答を聞かされた。


「大嫌いだ、顔も見たくない相手だと、本当に兄上がそうおっしゃったのか?」


 執事からそう聞かされたジークベルトは、耳を疑った。


「僕のことならわかるけど、ほとんど接点のなかったルミナのことを、どうしてそこまで……」


 ジェラルドの母親は、ジェラルドを産んでからの体調が思わしくなく、数年後に亡くなってしまった。その後、現王妃が迎えられ、間もなくジークベルトを授かることとなる。

 ジェラルドは新しい王妃を受け入れられず、その息子であるジークベルトのことも避けていた。


 アルミナが兄のことが好きで、ジークベルトとの婚約を泣いて嫌がったことには、彼も少なからずショックを受けた。だが、それよりも幼馴染がひどく拒絶されたことが悲しかった。


(ルミナは、そこまで言われるほどの子じゃないのに……) 


 理由を直接問おうにも、ジークベルトは会ってすらもらえないだろう。前に兄と話したのはいつが最後だったかと、思い出すことも難しい。


「はぁ……ルミナに何て伝えよう」


 自分の落ち度のせいで、彼女の人生を狂わせてしまったのに、これ以上落ち込ませたくはない。


「よし、決めた。兄上が断ったんじゃなくて、僕がルミナとの婚約を強く要望したということにしよう」


 ジークベルトが、アルミナとの婚約破棄を拒絶した。アルミナからも嫌われてしまうかもしれないが、今はそれくらいしか思いつかなかった。

 実際、ジークベルトも婚約の話が出た時は驚いたものの、物心ついた時から一緒にいた相手だっただけに、彼女が婚約者ならいいんじゃないかと思っていた。

 それが恋愛感情とまでは言えないかもしれないが、アルミナのことを大事に思う気持ちに嘘偽りはない。


(それに、ルミナがいくら兄上のことが好きでも、ルミナのことを悪く言う人の婚約者にはしたくない)


 ジークベルトはひとり決意を固めた。


****


 シンク公爵家の令嬢が、自分との婚約を望んでいる。

 父である国王からそう聞かされたジェラルドは、心の底から嫌悪した。


「シンク公爵家の令嬢だと? 大嫌いだ、顔も見たくない。そもそも、弟の不始末をなぜ俺が片付ける必要がある。二度とその話をしないでもらいたい」


 冷ややかにそう告げると、ジェラルドは足早に部屋を後にした。


「やはり無理があったか……」


 今回の件は、ジェラルドには何の非もない。

 しかし、婚約前の公爵家の令嬢にしたことを考えれば、王家としてはできる限りのことをする必要があった。

 本来、厳重に城で管理しておくべき呪われた魔道具を、執務室とはいえ、子どもが簡単に持ち出せる場所に置いてしまったのだから。

 

(いくら側に置いておきたいとしても、あまりに軽率だったな)


 持ち出したのはジークベルトであっても、管理不足は国王自身の問題だ。ジークベルトもまた、アルミナと同様に被害者である。


(アルミナ嬢にも、ジークベルトにも……それに、ジェラルドにも。本当に、すまないことをした)


 シンク公爵家には、ジェラルドとの婚約は諦めてもらえるように頼もう。なるべく、彼女が傷つかないように、と国王は考えた。

 ジェラルドは、自分の産みの母が亡くなってすぐに、現王妃を迎えたことをよく思っていない。だから、国王とも、現王妃の息子であるジークベルトとも一線を引いている。


(しかし、ジェラルドももう12歳。王太子としても、婚約者は必要だ)


 アルミナに限らず、ジェラルドは婚約の話を酷く嫌った。

 空になった指輪の入っていた箱を撫でて、国王は頭を悩ませた。

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