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2 婚約ってどういうことですか!?

 呪われた指輪の件について、国王夫妻とジークベルトが謝罪してすぐ。あまりの衝撃でアルミナは倒れた。

 公爵も、娘が外れない結婚指輪をはめられたということで、大混乱。誕生日パーティーは予定よりも早くお開きとなった。


 結局、アルミナは丸一日経ってからようやく目を覚ました。


(夢ならよかったのに)


 まず左手を確認して、そこにまだ禍々しく黄金を放つ指輪があることに深いため息をついた。


「アルミナ、目が覚めたのね!」

「お母様、私……」

「丸一日眠っていたのよ。今日は、誕生日の翌日なの。あなたが眠っている間に色々とあったのだけれど……少し待っていてね」


 ほっとした顔で、側についていてくれたらしい母はアルミナの頭をそっと撫でた。

 目覚めたことを知らせに母親が出ていった後、アルミナは両手で顔を覆った。


「一生この指輪が外れないなんて、ありえない……だって、私はーー」


 そう言いかけたところで、知らせを受けた父親が部屋に飛び込んできた。その後ろから、申し訳なさそうに俯いたジークベルトも顔を覗かせる。


「おお、アルミナ! よかった、目が覚めたんだな」


 力強く抱きしめられ、アルミナは苦しくなって呻いた。


「おっと、すまない」


 慌てて腕を緩めると、息がしやすくなった。


「アルミナ嬢、僕の軽率な行動で取り返しのつかないことをしてしまい、本当に申し訳なかった」


 いつもなら「ルミナ」と愛称で呼ぶのに、今日のジークベルトは悪いことをしてしまったという思いからか、畏まった様子だった。

 アルミナとしても、知らなかったとはいえ呪いの指輪をはめられてしまったことには、怒りも感じていた。

 しかし、落ち込む幼馴染を見ていると、責め立てる気持ちはどうしても起きてこなかった。


「別に、ジークのせいだけじゃありませんわ。指輪をはめてみたいって思ったのは、私も同じでしたし」

「でも、婚約前の令嬢がすでに結婚指輪をはめているとなったら、色々と問題になってくる」


 確かに、事情があるとはいえ、これから婚約する相手はどう思うだろうか。


「そこで、なのだが……」


 父である公爵は、若干ジークベルトのことを睨んでいるようにも見える顔をしながら、苦々しく吐き出した。


「お前が眠っている間に、ジークベルト殿下との婚約が決まった」

「は!?」


 誰が、私が、とアルミナは突然のことに理解が追いつかない。


「もちろん、指輪を外す方法は全力で探す。方法が見つかるまでの話だ」


 アルミナは7歳。貴族であれば、幼い頃から婚約者がいても不思議ではない。それよりも、いつまでも婚約者がいない方が、何かあったのではとあらぬ噂を立てられかねない。

 あくまでもアルミナのことを守るための行動ではあったのだがーー。


「アルミナ嬢、必ず僕が君を守ーー」

「い、嫌ですわーー!!」


 ジークベルトの言葉は、アルミナの絶叫によって遮られた。

 何だなんだと部屋に人が集まってくる。そんなこともお構いなしに、わんわん泣きながらアルミナは訴える。


「だって、だって、私が好きなのは、ジェラルド殿下なんですものーー!!」


 ジェラルド・レティシア。ジークベルトの異母兄であり、5つ年上の少年だ。この国の王太子でもある。


「あ、兄上……?」


 よろり、とジークベルトが後ずさる。


「婚約するなら絶対にジェラルド殿下がいいと思っていましたのに! こんなの、こんなのあんまりですわーー!!」


 抵抗はされるかもと思っていたものの、想像していたものと違う展開に、公爵もジークベルトも困惑する。


「ぼ、僕では駄目……」

「ジークはお子ちゃまですもの!! ジェラルド殿下は、お目にかかったことは少ししかありませんが、凛々しい大人の男性でしたわ」


 ジェラルドもまだ12歳の少年である。しかし、7歳の少女にとっては大人びて見えたのだろう。

 ほぅっ、とジェラルドのことを思い出して頬を赤らめるアルミナを見たジークベルトは、


「父上と、兄上にご相談してみます……」


 と、どこか遠い目をしながら、流石に哀れに思った公爵に支えられながら出ていった。

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