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12 真の黒幕ってどういうことですか!?

 クレルは優秀な司祭だった。

 身寄りがなく孤児院で育った彼は、神聖力を持っていることが分かると、神殿に引き取られることになる。

 真面目な性格が幸いして、毎日欠かさず神への祈りを真剣に捧げ続けた結果、神聖力はどんどん増していった。

 次の司教はクレルで間違いないと囁かれるようになり、多くの者はそれに納得した。


 だが、クレルが頭角を現すまで次期司教は自分であると信じていた男だけは、嫉妬心を燃やさずにはいられなかった。


 ある日、神殿から聖物が消えた。

 聖物というのは、神聖力を宿した魔道具のことで、代々司教たちが神聖力を込め続けることで力を溜め込んでいる。

 長い年月をかけて力を蓄えていくため、すぐに同じものはつくれない。そのため、非常に貴重なものだった。教会総出で、くまなく聖物の行方を探した。


 しばらく捜索が続いたのち、


「クレル司祭の持ち物から、聖物が見つかった」


 そう告げたのは、当時まだ司祭だったウラギだった。


 まったく身に覚えがないクレルは知らないと言い張ったが、優秀とはいえ言動が粗野であること、彼の出自に対してよく思っていなかった一部の貴族出身者の嫉妬によって、瞬く間に犯人に仕立てられていった。

 教会で修行を積む者たちは、同じく神につかえる者同士、貴族も平民も関係ないという考え方のもと、家名を名乗ることはない。

 だが、貴族出身者が教会で大きな力をもつことは珍しくもなかった。


 ウラギも貴族出身者の一人で、クレルに次期司教という自分の立場を奪われそうになったことが我慢ならなかった。

 こっそり聖物を盗み出したウラギは、同じようにクレルに対して不満を抱いていた仲間と協力し、犯人に仕立て上げたのだった。


 最初は信じてくれていた司祭たちもいたが、裏で圧力をかけられたのか、次第に潔白を叫ぶクレルの声には誰も耳を貸してくれなくなった。

 努力の末に身につけた神聖力でさえ、聖物の力で誤魔化していたのではないかと囁かれるようになった。


 最終的にクレルは教会を追い出され、あの孤児院の院長を任されることになる。孤児院とは名ばかりで、子どもたちのことを金を稼ぐための道具としか考えていない、あろうことか教会の大人たちの息がかかった場所だった。

 すぐそのことに気づいたクレルは、何とか子どもたちを守るために力を尽くしていたが、大部分の寄付金は孤児院に渡る前に教会側の懐に入り、すべての悪事はクレルがやったことにする偽の証拠が作られた。


 教会を追われたクレルが孤児院の院長にされたのは、悪事が明るみになった時のスケープゴートにするためだ。

 もし誰かに話せば子どもたちの安全は保障しないと言われ、子どもたちも、「誰かがこのことを話したら、他の子どもたちがどうなるか」という恐怖が植えつけられていたため、みんな口を噤んでしまった。


 どれだけ真面目にやったとしても、自分のことを信じてくれる者はいない。子どもたちを守るためにという気持ちだけで頑張ってきたが、そんな日々が続き、疲れ果てていった。


 もういいか、とすべてを諦めかけたとき、アルミナはクレルのことを肯定してくれた。子どものお遊びだろうとわかってはいたが、クレルは少しだけ救われた気持ちになった。

 その後、公爵から改めて事情を説明してほしいと言われ、無駄だと思いながらも詳細を話した。


 どういうわけか、話が済んだ後は公爵家の客間に通された。許可があるまで外に出ないように監視もつけられたが、犯人扱いされている人物に対して、これは異例の対応だった。

 孤児院の子どもたちのことは公爵家の人間が面倒を見ているという言葉を信じ、怪しみながらも言う通りにして数日。


 ウラギが真犯人として捕えられたという話がクレルの耳に届いた。

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