11 院長ってどういうことですか!?
祈りを終えて、アルミナは父親と一緒に教会を出た。
階段を下った先で、何やら人だかりができているのが目に入る。男性が言い争っている声が聞こえてきた。
「いい加減にしろ! うちの孤児院に手を出すんじゃねぇ!!」
「何を言っているのですか。あの孤児院で問題を起こせば、今度こそ君は行き場を失ってしまうのですよ」
よく見ると、言い争っている男性の片方は先ほど用事があると出て行ったウラギ司教だった。もう一人は、髪はボサボサで骨張った細身の男性だった。
「どうされたのですか?」
見かねた父がアルミナに離れているように注意してから、二人の間に入った。
公爵が現れたことで、ウラギ司教は慌てて謝罪した。
「お見苦しいところを見せてしまいましたな。この男は孤児院の院長をしている者なのですが、時々問題を起こしまして…」
「問題を起こしてるのはどっちだよ」
公爵の登場で言い争いはおさまったが、雰囲気はギスギスしたままだ。
「問題とは?」
父が尋ねると、ボサボサ頭の男はチッと舌打ちし、ウラギ司教を睨む。
司教は困った顔で答えた。
「元々は、この教会の司祭だった男なのです。しかし、この通りの性格と、教会の物を盗んで売り捌くということが何度かありましてな。仕方なく、教会を出て行ってもらうことになったのです。しかし、それでは路頭に迷ってしまうということで、教会と提携している孤児院の院長として働いてもらうことにしたのですが」
「なるほど…実は、私もその孤児院に用があったのです。何があったのか詳しく聞かせていただいても?」
孤児院の話になると、アルミナはすかさず父の隣に駆け寄った。
「こら、来ないように言ったのに…エスパーダ」
「はい。帰りましょう、お嬢様」
子どもに言い争っている大人の姿を見せるのはよくないと、公爵は護衛騎士として一緒に来ていたエスパーダに帰還を命じた。
しかし、アルミナは隙をついてボサボサ頭の男に飛びついた。
「うわっ、なんだこの嬢ちゃんは」
声とは裏腹に、男はアルミナを振り払うことはしなかった。
「おじさまは、どうして司教様と言い争っていたの?」
まっすぐな瞳に、男はうっと言葉を詰まらせた。
その隙に、アルミナは男の手に触れた。
「お嬢様!!」
エスパーダがすぐにアルミナを男と引き離す。
「アルミナ、帰ったら一緒に遊んであげるから、今は帰りなさい」
父親にそれ以上言い返すことはできず、大人しく帰路についた。
帰りの馬車の中で、アルミナはウラギ司教とボサボサ頭の男から読み取った記憶を整理する。
(時間がありませんわ。早く帰ってきてください、お父様)
屋敷に戻り、自分の部屋で父親の帰りを待つことしかできない。
しかし、急がなくては手遅れになる。気持ちは焦るものの、自分に解決できるだけの力はない。「知っているだけ」というのが、いかにもどかしいか。アルミナは窓の外を見つめ続けた。




