預ける背中
俺はメルと別れた後、宿で飯を食べて部屋で
ゴロゴロしていた。
「メルに渡した魔道具に反応はなしか...」
そう呟きながらメルに渡した物と対になっている
魔道具を眺めていると、魔道具が赤く輝いた。
「!?...チッ...もしかしたらこうなるかもと思って渡したが、まさか本当に来るなんてっ...」
念の為寝巻きでは無くいつもの戦闘用の服だった為、俺は急いで窓から飛び出す。【着地術】のお陰で高さを気にせずに跳躍する。
『疾走、跳躍、跳躍、跳躍ッ!!』
ひたすら屋根の上、壁と壁の間を飛び回る。
《スキル 三角飛びを獲得しました》
(もっと....もっと疾く!!)
必ず間に合わせる。その思いにスキル
が応える。
《魔法 風疾りを習得しました》
「...えっ?」
烈風が俺に纏う。そして次の瞬間、俺は疾風の如き
疾さで、日の沈みきった街の影を駆け抜ける。
(っ!...思ったより魔力の消費が激しいな...まだ昨日
の特待試験の疲労も残ってんのに...)
俺は体から何かが一気に抜けていく感覚に襲われ
ながらも、決して足を、魔法を止めない。
《スキル 魔力消費軽減を獲得しました》
《スキル 回復速度上昇を獲得しました》
「ははっ...本当にディアナ様に感謝だな」
スキルはそんな俺の弱音すらも拾ってくれる。
(ここまでお膳立てされて、間に合いませんでした
じゃディアナ様に申し訳が立たねぇよ!)
街を駆ける疾風は更に速度をあげる。
俺はただ、今日あったばかりの少女の為に体に鞭を
打って体を動かす。
(本当...らしくねぇな...だけど、地球にいた頃みたい
とは違う...頭にかかったモヤも、体に巻き付いて
いた重りも、今の俺には無いっ!)
そして遂に俺は、視界に少女を捉える...!
「メル!」
俺は勢いのままメルに詰め寄っていたゴロツキを
蹴り倒す。メルは驚いた、されど期待を込めた瞳を向ける。ゴロツキを見渡した後、顔だけ半分メルに振り向き、蒼眼で見つめ返す。
「碧?本当に来てくれた....」
「悪いな...遅れて」
周囲には武器を持ったゴロツキが14人。魔眼で見る
限りは、お互い騎士道を持っていたならば俺が確実に勝てるが、そんなことは期待するだけ無駄なので、魔眼で常に四方を確認しながら、魔道具等が
無いか警戒する。
「俺はメルを守る。誰かメルは俺を守ってくれ」
「え?、うん...うん!碧の背中は私が守る!」
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