孤児少女
「....何?」
少女は真っ直ぐに俺を見つめる。
「何か特別な用が有る訳では無いんだけど、体が
勝手に動いたんだ」
「何言ってるの?」
「俺も良く分から無いな。ただ、話しかけなきゃ
いけない様な気がして」
「本当に何を言ってるの?もしかして、私を
奴隷商にでも売り飛ばすつもり?」
...確かに傍から見たら...いや傍から見なくても
今の俺はロリコン誘拐犯だな。
「嫌、そういうつもりじゃない。...あ、串焼き
でも食うか?昼飯余ってるから」
駄目だ、どう足掻いても誘拐犯だ。
「......」
少女は目を細め、1層警戒するように俺を見つめる
「別に毒とか入ってないぞ?」
そう言い、俺は串焼きの肉を1つ食べる。
「...何が目的?」
「そうだな、目的と言うなら名前を教えて欲しい」
「名前を知ってどうするつもり?」
「別にどうも?ただ、君を知りたいと思った」
「はぁ...帰って?」
その時、お腹が食事を求める声を上げた。
「.........」
「食うか?」
「要らない!」
「あっそ。別に何か企んでる訳じゃ無いぞ?」
「なら、何で用も無いのに話しかけて、ご飯を
くれようとするの?」
「だから、何となく....嫌、そうだな。目を惹かれたからだ。それが何故かは分からないけど」
「日を惹かれたって...そんなの信じられる訳
無い」
「そうかな?普通に可愛いと思うけど」
「はぁ!?」
少女の目が警戒から敵対に変わった気がする。
「後、獣人?とか見るの初めてなんだよね。最近
旅を始めたばっかりだから」
「それで私に話しかけたの?」
「まぁ、それも理由の1つかな」
「...じゃあ、私の種族も知らないの?」
「その言い方的に、何か特別な種族なのか?」
「少し珍しいってだけ。...本当に知らないの?」
「あぁ、何か悪いな」
「嫌、別に。ただ、もしそれが本当だったら、
それこそ何で話しかけたのかなって思って」
「だから、それはさっき言った通りだぞ?」
「目を惹かれたとか、可愛いとかって
やつ?」
「ああ、そうだな」
「そんなの信じられる訳ない」
「別に、信じろとは言わないよ。初対面の人を
信じられるとは思わないし。ただ、話したいと、ご飯をあげたいと、関わりたいと思っただけ。その
理由はやっぱりよく分からないけど、信頼関係の
1番最初ってそんなもんじゃないかな?全員が全員そうとは思わないけど、しっかりとした理由なんて
無くて、何となく話しかけたいって、話し掛けないといけないって思って、ゆっくりでも良いから、
それぞれの速度で積み重ねていく。
そういうもんじゃ無いかな?...って長々と悪いな」
(何でこんな長々と話してんだろ俺)
途端に恥ずかしくなってきた。
《スキル 魅力を獲得しました》
(何でだよ!?...もしかして、メルは今の演説に
多少なり惹かれたって事...なのか?)
「いや...うん。良いと思うよ?」
「そうか?...なら良かった」
それから少女は、懐かしむような顔つきで言った。
「私のお父さんも似てる事を言ってたんだ..」




