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プロローグ
──小さい頃、よく遊びに行っていた館があった。
そこは蔦が絡み合う洋館で、不思議な雰囲気が大好きだった。
そこには、ある少女が一人いた。
「……──!」
私が名前を呼ぶと、少女は振り向いて……。
少し、寂しげな顔をする。
「……こんにちは。また、来てくれたのね」
これが、彼女の口癖だった。
☆─☆─☆
「……鳥さん」
館の主である少女は、窓枠に佇む小鳥に目を向ける。
そして小鳥をそっと両手で包む。
「……こんな所まで、どうしたの?」
小鳥は答えない。当たり前だ。小鳥が喋るわけないのだから。
「あなたは綺麗な翼を持っているのね」
少女は優しく翼を撫でる。
自由に飛び回れる翼。あぁ、なんで自分には綺麗で、自由に飛び回れる翼がないのだろう。
「その翼でここまで来たのでしょうけれど……もう、来てはだめよ。あなたにはもっと自由にこの世界を飛び回って欲しいもの。それに……」
両手で優しく包んでいた小鳥を少女は外に放す。
小鳥は遥か遠い空めがけて羽ばたいた。
そして、少女は窓を締めながらこう呟く。
「……この場所は、─────……鳥籠なのだから」