4人の狩人 中
今年、受験だ・・・(泣き)
食堂に行くと、満員御礼状態。ほとんど、席が空いてない。
今いる場所は基地だ。基地の中の食堂。自衛隊の基地を改装した基地で第23機械化機動部隊のほか3部隊がこの基地に入っている。かなり窮屈な基地なってしまっている。
「うわ、たくさん人がいる・・・」
大勢の人を見て初の口から思わずポロリっと言ってしまう。
「この基地は、過密してるから。ほら、行くぞ飯がなくなっちまう」
裕緒が先頭を切ってイスとイスの間を進んでいく。
「お、前線隊長遅いじゃないですね?」
「会議でな」
「前線隊長今度、トランプで賭けしませんか?」
「お前が破産してもいいならやってやる」
「げぇ」
「お疲れ様です。前線隊長どの」
「おう」
声をかけてきたのは、第23機械機動部隊の隊員だ。普通に声をかける隊員、賭けを挑む隊員、敬礼をする隊員。
「あんたすごい信用置かれてるな」
「ん、そうか?」
人と人の隙間を抜けようやく、カウンターについた。
調理場では数人のおばちゃんたちがいる。
「さぁ、選べ。ちなみにお勧めはBランチだ」
壁に張られたメニュー表には多数のメニューがそろっている。軍隊でありながら、少しばかり豪華で食す料理に迷う。まさに、どこかにありそうな食堂だった。
裕緒に言った通り、Bランチに『一番人気!! 兵隊たちよ、腹いっぱいに食え!!』と赤い文字で堂々と書かれている。
「じゃ、Bランチ」
「あたしも」
「ボクは・・・ラーメンをお願いします」
「・・・カレーライス」
シンゲツとツキカはお勧めのBランチ。初はラーメン。凜がカレーライス。
「おばちゃん、おれもBランチ。あれ? 山川、どうした?」
新兵の山川平次。手にお盆を持ってうろうろしている。
「銃の整備に遅れて。前線隊長も今からですか?」
「ああ。会議でな」
「あの・・・。彼らは誰ですか?」
「彼ら? ああ、あいつらか・・・新入り?」
シンゲツ、ツキカ、初、凜のことだ。4人が国際連合軍の非公開組織の偉大なる狩人であることは言えない。以前の作戦で増援が偉大なる狩人とは言ってしまったが、それを、今ここで言うわけにもいかない。
「新入りですか・・・」
「ああ! そうだ!」
やや焦って答える。
「なるほど。でも彼ら・・・偉大なる――」
「――おおお、お前! 一人か!? 一人だよな! 一緒に食おうぜ!」
強引に平次の言葉に乱入して、平次を食事に誘う。
「・・・はい。別いいですよ」
「そ、そうか!」(あ~、危ないかった・・・)
胸中でそう安堵した。
先に席に着いていた4人とロイスとレイエス。ちゃんと、席をとっておいてくれた。
「あれ、少ないな? 悠美さん」
隣に座った悠美の昼ごはんの、量が少ない。
「ダイエット中です・・・・」
「また・・・」
「ヘイ! 彼女!」
そこにだ。青い隊員服を着た5人組の隊員たちがツキカに話かけて来た。話かけて来たというより、ナンパに近い。
第23機械化機動部隊ではない。よその部隊だった。
「な、なに?」
「今ひま? ひまなら一緒にどっかいかない?」
「おお! こっちの子もかわいい。君いくつ?」
「・・・・」
一人が凜に話かけた。
もう、これは完璧なナンパだ。
「君、髪の毛ながいね~」
「!」(助けて!)
ツキカの長い髪に触る。さすがに、驚いた。
「お前ら――」
「――お前らやめろ!!」
裕緒がその隊員たちに怒声を出すが、そこにシンゲツの怒声にかき消された。食堂に響いたシンゲツの怒声が、この空間に沈黙と一触即発という空気を生んでしまった。
「なんだよ・・・。ガキ」
「おめぇ・・・新入りか? いいんですか? 二等兵が上官に反抗して」
不良が一般人に絡むように、シンゲツに威嚇のような態度をとる。シンゲツはその隊員に真っ向から対立する気だ。
「だったらなんだ! それに俺は二等兵じゃねぇ!」
「『二等兵じゃねぇ!』かよ! じゃ、なんだよ?」
「ゴミ野郎に言う口はない!」
「ゴ、ゴ・・・ゴ・・・ゴミ野郎おおおおぉぉぉ!? よくも言いやがったな! この野郎!!」
殴りの体制に入る。軍人なら隙のない軍隊格闘をすべきだが、まるでチンピラだ。モーションが大きい。シンゲツはその動きをとらえた。
向かって拳を左手で受け止め、引きよそて、右手で顔面を殴った。
「ぶふぁはああぁぁ!!!」
渾身の一撃。相手は宙を軽く浮いて、1メートル先の床に体全体を打ちつけた。
「って、シンゲツ!?」
「・・・あ・・・・・」
「こいつ、テスタメント?」
1人がそう判断した。その判断は間違いじゃない。17歳の男子が大の大人をぶっ飛ばせるわけがない。しかし、テスタメントなら人間の17歳男子の平均筋肉量で、数段上の筋力を発揮する。そして、兵士として訓練を受けたシンゲツは中肉の体で、成人男性の2、3倍の筋力がある。
テスタメントとは、21世紀に入ってすぐに発見された進化した人間である。あらいる面において人間より進化しており『テスタメント(神との契約者)』と呼ばれている。そして、学者たちはテスタメントの能力を恐れて『バケモノ』と呼ぶ者たちもいる。世界中に数百万人いると推測されるが、実際はそれ以上と考えられている。
「テスタメント? なんでテスタメントがここにいるんだよ! バケモノが!」
「!」
唇を強く噛んだ。血が滲むほどに。
「もう一度言ってみろ!」
「ああ? 『もう一度言ってみろ!』だ? 何度でも言ってやるよ!!」
シンゲツの顔に向かって拳が向かってくる。近距離だ。人間なら瞼を閉じるだけしか反応できないが、シンゲツは反応した。左手で拳を受け止めた。
「い!?」
右手で相手の顎に向けてアッパーを直撃させた。真上に飛ぶ。殴った衝撃で脳が脳震盪おこしただろう。力なく床に落ちた。
「こ、このォ!」
「シンゲツ!」(やめて! とめることを可能に!)
「あ・・・」
シンゲツは何かを悟ったようだった。急に構えが緩んだ。そこに、再び拳が腹に向かってくる。シンゲツはそれに反応しない。そして、直撃した。
「ぐぅ!」
「・・・へ、へへ、何がテスタメントだよ・・・・・弱いじゃんか」
さすがに、痛い。シンゲツはそこに膝を落とした。
「ボコしちまえ!」
「お前ら! ロイス! レイエス!! あと・・・山川とめるぞ!」
「ええ!?」
その前に初が止めに入る。しかし、初一人では無理がある。
「いいぞ! やっちまえ!!」
「そのへぼやろうボコしちまえ!!」
「俺は第23の前線隊長に賭けるぜぇ!」
野次馬が周りを囲んでいた。挙句の果てには賭けまでしていた。
「貴様ら何をしているかッ!!」
そこに低い男の声がした。乱闘も止まり、声の主を方を向く。加藤部隊副総指令官だった。眉間にしわをよせている。全員が、ビッシっと直立する。
「何をしているかと聞いている!」
裕緒の前に立ち問う。加藤部隊副総指令官の独特のオーラに圧倒される。
「ナ、ナンパであります!」
「なに?」
「アイツらです!」
と、指を刺す方向にはシンゲツが殴って延びた隊員が2人とその仲間の3人。
「シンゲツ、大丈夫?」
腹を抱えたシンゲツにツキカが寄り添う。
「ああ、大丈夫だ。ツキカ」
「なに?」
「“使った”だろ?」
その言葉をツキカに向けると、表情が曇った。そして、落ちた声で言う。
「ごめん・・・」
「いや、おかげで助かった。ありがとうな。ツキカ」
ガンダムユニコーン見ました。いや~、かっこいいですね。デストロイモード! まさか、コックピット内部も可変するとは・・・。
そんなこんなで「今日も楽しくデストローイ!!」