双子の能力とDAIDA・ドライブ 前
暑いんだよ(←気温が)!!
「ひどくやられたな。アレクセイ」
薄暗い部屋に若い男の声が響いた。
その中で、アレクセイ・ケルビムは高級ソファーに座ってワイングラスの赤ワインを呑む。
「まったくだ。双子に圧倒されるとは思わなかった」
「そして、ロンギヌス1機を大破させてお前はのうのうと帰って来たと」
「恥ずかしながらそうだ。がしかし、今度は負けん!」
飲み干した赤ワインをワイングラスに注ぐ。
「自身たっぷりはいいが、双子の“能力”は分かったのか? アレクセイ」
「うむ、月丘兄妹に接触してみたものの“能力”は分からなかった」
「なんだそれ? 何のために捕虜になったんだ? 意味ないじゃないか」
「・・・」
返す言葉がない。
「えっと、アレクセイの任務は双子の“能力”の実態調査だったか? “不可能にする力”と“可能にする力”だったか? なんてデタラメな“能力”が存在するのかね?」
「確かに・・・。が、否定はできん。だからこそ、再び双子に挑む」
◆
今日は休日。学校はない。だけど、兵士である月丘シンゲツ(つきかお)、月丘ツキカ、塔内初、凜・ライネスの計4名は休日でも仕事がある。先日、捕虜脱走の一件。それを本部に報告書として提出する。今日がその締め切り日だった。
4人とも支給された真新しい青い隊員服を着ている。
「終わった~・・・」
「間に合ったよぉ~」
報告書の作成に一番苦労したのは、シンゲツとツキカだった。理由か簡単でアレクセイ・ケルビムが乗っていると思われる第4世代型SFであるSF/G-38F ロンギヌスを撃破したからだ。本部に送って『もっと詳細に』と添えて帰って来た。それを3度繰り返しようやく、本部も納得する報告書をまとめたのが、今この瞬間だった。
「お疲れさま」
「・・・お疲れ」
徹夜でなおして疲れた。そんなシンゲツとツキカに初と凜を手伝ってくれた。4人揃っての徹夜。
「はあぁぁぁ・・・・・・。眠いいぃ・・・」
ツキカが大きなあくびを1つ。
「もう、8時か・・・」
「凜も本7冊読んだんだ」
「・・・うん」
手伝いながら本を読んでいた凜。その甲斐あってか、溜まっていた本も少し減った。
今いるのは、PCが置いてある小部屋。その窓から、前沢裕緒率いる第23機械化機動部隊改め、第3機械化特殊作戦部隊の面々は10時間の猛訓練の真っ最中だった。迷彩服を着た集団が、重そうなリュックを背負ってトラックを走っている。
聞こえて来る声は裕緒のだ。大きな声で『いぃぃち、に! ににさんしッ!!』と掛け声がよく聞こえる。
「声出せぇ!!」
「「「「おう!!」」」」
どこかの学園ドラマに出てきそうな風景がそこにあった。
「あんな重そうなリュック背負いたくない・・・」
と、初がなさけない声で言った。
「一体何が入ってるんだ?」
リュックの中身は砂の入った砂袋を押し込めるだけ押し込んだ。それなりの重さはあるだろう。現に、新兵である山川平次はトラック6周目で最下位まで落ちている。その後ろに、竹槍を持ったロイス・アンダーソンとレイエス・リーズが平次を突っついた。
「「「「・・・」」」」
その光景は正直、滑稽だった。
「ねぇ、ご飯食べに行こう?」
と、ツキカ。
時間は8時37分。そう言えば、朝ごはんを食べていない。夜食は食べたけど・・・。
「そうだな。腹減ったし」
「そうだね。もう、8時過ぎだし」
「・・・」
凜が頷いた。
全員一致で食堂へ向かう。
廊下を歩いていると、目線が4人に集中する。
「?」
「なんだろうね?」
答えはこの基地では4人は新人で、見た事がない相手からして見れば初見。次に、若いからだ。でも、それより周囲の目線を集めていたのが、4人の階級だ。少尉。左胸の階級バッチに歳似合わず『少尉』と彫られている。それが注目を集めていた。
「さて、何食べるか」
「あたしパン」
「俺もパンでいいや」
2人はカウンターに行って注文する。パンを貰って席につく。初と凜も席につく。初は和食。凜はパン。
「「あのさ・・・」」
シンゲツとツキカが同時に口を開いた。
「なに?」
何やら2人して、暗い表情だ。
「・・・アレクセイが・・・・・生きてるんじゃないかって・・・思えて」
「・・・?」
「えっ?」
先日、アレクセイの乗っている機体を撃破した時の、確かな手答えは今はない。ただ、時間の経過によるものではない。今は純粋な不安と恐怖に変貌したのだ。それが、シンゲツとツキカの心を、鋭い刃物で抉るような感覚に襲われている。
「で、でも墜落したのを見たんでしょ。だったら、考えすぎじゃない?」
「・・・・」
ツキカが黙る。その、沈黙が初が言った『考えすぎ』を否定していた。
「最初はそう思ったさ。でも、アレクセイだぞ?」
アレクセイ・ケルビム。ヤツはそういろいろと手をやかされた。ヤツを抹殺するのに世界中各地に飛んだ。行く先々で激しい応戦を受けたり、追いつめた、と思ったら逃げられる。そんなヤツが簡単に死ぬだろうか? と考えているシンゲツとツキカだ。
「探しく行くぞ。ツキカ!」
「うん!」
まだ食べ終わってない朝食を残して席を立った。
「あ、待って!」
慌てて初も立ち上がってシンゲツとツキカを追いかける。1人残された凜は――
「・・・朝食は1日の力なり」
――と食べ終わってから追いかけて行った。
◆
探すと言っても手掛かりはない。まったくもってない。もはや、野生の勘と言うヤツで探しているのだ。
今いるのは、基地から少し離れた街中だ。家族連れ、カップル、友人同士で買い物で賑わっていた。その中に青い隊員服を着た4人いる。この賑わう通り、人々の中で青い隊員服は目立つ。
戦後3年でここまで、復旧したのは日本とごく一部の国だけだ。
シンゲツとツキカは周囲を見渡す。が、まさかこの中にアレクセイはいる訳がないのだが、今のシンゲツとツキカの脳内にはそんな発想すら出来なくなっている。胸の中の嫌な予感が際限なく、増大している。それが、シンゲツとツキカの脳を混乱させている。
「手掛かりもないに、どうやって探すのさ? シンゲツ、ツキカ」
「・・・」
後ろから初が言う。隣に凜がいる。
「でも、じっとしていられないの」
「でも闇雲に探しても・・・」
「くそっ・・・」
「あれ、センパイじゃないですか?」
後ろから高い声がした。後ろを振り向くと、そこに私服姿の諏訪原いおだ。
「・・・いおか」
きょとんとした顔をしたいお。そして――
「センパイ方ってやっぱり兵隊さんだったですね!」
と、ハイテンションボイスで聞いてくる。
「え、あ~・・・・」
否定しても、無理だろう。だって今、4人が着ている服は、公式の制服である青い隊員服だ。しかも、胸元には階級バッチが太陽光に反射して、キラキラしている。
「・・・うん、見ての通り」
肯定するしかない。
4人が兵士であることを民間人に隠さなくてはならないという、規則もなければ軍法もない。でも、自分達が兵士である事が知れてしまうのは、気持ちがいいものではない。
「やっぱり。この前、軍の車に乗って行っちゃうのを見てピンッと来ました!」
よくよく、考えてみたら自分たちが兵士である事を気付かない方がおかしい。
「なぁ、いお」
「はい?」
「この事は他言無用してくれ」
「はい、もちろんです。ですから――」
その時である。いおの言葉が途切れたと、思ったら爆音が鼓膜を突いたのだ。その刹那である。爆音は爆風に変わりいおを含めて、5人を襲った。いおは吹き飛ばされ、シンゲツとツキカに飛び込んだ。一方4人はアルファルトへ強打した。
「うぅ・・・なんだ?」
「爆発・・・? 初と凜、大丈夫?」
「うん、ボクは。凜は?」
「・・・お尻痛い」
4人は奇跡的にケガ一つなく、無事だった。
「いお、無事か?」
「はい・・・。でも何が?」
爆音の方を向く。そこには、罪もない人々のむごい死体が転がっている。肉片が飛び散り、内臓がアスファルトに無造作に転がっている。せっかく新しく建設されたビルやデパートが、残骸となっていた。
「あ、あ、ああ・・・・」
「見ちゃダメ!」
いおが、その残酷な光景に言葉をなくす。そこに、ツキカがいおの目を両手で塞いだ。この光景はいおにとって、むごすぎる。
頭上に、SF/G−36J ファントムが航空戦闘用の外部パーツをつけたファントムが飛行している。
「まさか、アレクセイさん!?」
「初の言う通りだな。こんな事するのはヤツしかいないッ!」
「とり合図、基地に戻ろう」
「・・・賛成」
「いお、行くよ。大丈夫?」
いおのを背負ってツキカも歩き出す。
四方八方から、爆音が聞こえる。かなり、多くの爆音だ。一体、何十機のファントムがいるのだろうか? それは、さて置いて、今は基地に戻らなくては。
4人は腰のホルスターから、拳銃を出す。SFの装甲には歯が立たないければ、太刀打ちもできない。でも、持っていて安心する。
人が人一人通れるほどのビルとビルから、周囲を窺う。そこには、逃げまどう人々が目に入る。
「よし行こう!」
シンゲツが飛び出す。その後を、4人がついていく。
左を見れば、火災が発生している。右を見れば、ファントムが無差別発砲をしている。
「ひどい・・・」
「なんでこんな事を・・・」
前方に緊急発進した味方SFがファントムと交戦している。しかし、味方SFは簡単に撃破されてしまう。
気付かれてまずい。トラックの後ろに隠れた。
「別の方向から来た!」
初が別方向から来るファントムを目視した。歩行して来る。そして、銃口を向けられた。
「まずいッ!」
慌てて全員地面に伏せた。隠れていたトラックは、残骸と化した。
全員無事のようだ。がしかし、ファントム2機から逃げるのはまず不可能だ。
「走ろう!」
その言葉に従って走る。が、5メートルもある巨人の足の幅は大きい。すぐに、追い付かれる。
「追い付かれる!」
「ちッ!」
「え、シンゲツ!? って、まさか?!」
シンゲツが止まる。すぐにツキカはシンゲツが何をするのか理解した。2機のファントムの行動不可能にするの気だ。
「お前らの行動を不可能にしてやるッ!!」
片手を2機のファントムに向けて、意味不明な事を口にする。その言葉を発してすぐに、2機のファントムはピタリと動かなくなった。シンゲツが発した言葉通りの現象が起きたのだ。
「よし、行こう!」
「・・・すごい」
「無茶苦茶だけど・・・やっぱり、すごい」
◆
やっとの思いで、基地についた。基地は慌ただしく、SFを収容する大きな建物には予備の機体しかない。ここから、かなりのSFが出撃していったようだ。それに装甲車や戦車も出ているようだ。兵士が慌ただしく動いている。
基地には、逃げて来た民間人が見える。この基地にも攻撃を受けたようだ。兵士に負傷者がいる。基地の一部に壊れていた。
その中に、一人、こちらに向かって走ってくる人物が1人。前沢裕緒だった。
「お前ら無事だったか!? 探しぞッ!!」
息が荒い。かなり走り回っていたようだ。
「状況は?」
「厳しい。数十機のファントムが街を攻撃してる。すぐに、出てくれ。味方が押されてる!」
「わかった」
「その子は? ケガしてるのか?」
ぐったりとしたいおがツキカの背中にいる。
「ケガしてないけど、目の前で死体を見ちゃって」
「・・・そうか、わかった。その子はこちらが預かる。お前たちは早く行け!」
「「「「了解」」」」
いおを預けて、4人は走った。
◆
SF/FC-18 ライトニングのコックピットに飛び乗って、機動ボタンを押した。聞き慣れた機動を教えるてくる、女性の声。
『状況を説明します』
モニターの端からウィンドウが表示され、作戦指揮官の永戸悠美が出て来た。
『街に計12機のファントムと友軍が交戦しています。友軍の損害率は高く、敵軍は無傷に近いです。皆さんは、友軍の後退を支援及び、敵軍の全滅か、撤退させてください。それでは、出撃してください』
各機体の眼が一瞬強く光る。それがライトニングがの完全に機動した証拠だ。
足のペダルを踏んで、ライトニングのジェットエンジンの回転数を上げ、離陸できるようにエンジンを温める。誘導員の指示に従って歩行。そして、誘導員が×字を両腕で作って退避。その誘導員が近くの溝に入って、右腕で前に突き出す。発進の許可がおりたのだ。
ペダルを強く踏み込む。機体が軽い振動。ゆっくりと前進。デジタル速度計が見る見るうちに、数字が増えていく。そして、操縦桿を後ろに倒して、ライトニングは飛んだ。
『出撃確認しました。これより、各機に戦闘指示を出します。凜・ライネス機は、レールガンによる遠距離狙撃戦。塔内初機は空中を飛ぶファントムを撃破してください。月丘シンゲツ、ツキカ機は地上のファントムを撃破してください。多勢に無勢です。各員、気を引き締めてください。幸運を』
通信が切れた。
前方には友軍と敵軍が交戦している戦火が見える。そろそろ、敵がライトニングに気付く。案の定、気付かれた。3機の航空戦闘用外部パーツを装備したファントムがこちらに向かって来る。
「・・・シンゲツ、ツキカ、初。行って」
「ごめんね、凜!」
「任せたよ」
「・・・うん」
凜のライトニングがレールガンを構える。上下に一本つづ、伸びる銃身が1機のファントムを狙う。
「「「「交戦開始!」」」」
4人がそう言うと同時に、レールガンから一瞬にて音速の弾丸が撃たれた。
読んでいただき、ありがとうございます。鈴木ちきです。
27日、うp。なんとか、間に合いました。とは言っても後、2時間と半でもう明日ですが・・・。でも、なんとか間に合いました! (でも、誤字があると思います)。
さて、読者の皆さん。『文学ってなに?』と言われ、答えられますかでしょうか。本文を書いていて『文学って何だ?』と疑問に思い、ウィキってみました。そしてら『言葉で表現された芸術品』って書いてありました。言葉で表現された芸術品・・・。なんじゃそりゃッッ!!!!!(←第一声です)。自分の中ではこう思いました。
「なんて曖昧な説明だぁ!! ただでさえ、ライトノベルの定義でさえ明らかになってないのに、文字で表現された芸術品ッ!? わけかわからん!!? じゃあ、ラノベ以外の本でどこまでが、普通の本で、どこまでが芸術品と呼べる文学だぁッ!!」
です。
暴走しました。すみません。今回はこれで。また、次回!! 今度の投稿は27日です! それえでは!!