〈14#ダークナイフ〉
「大変でしたよ~、おにーさんの【神器】を調べるの。一口に短剣と言っても幾つかあるし、リリー様との戦いを遠巻きに覗いただけじゃ、武器の形状くらいしかわかんなかったんスから!」
「……お前、あの時見てたのか……」
「見てたっスよ~♪ 一撃で吹っ飛ばされる所を♪ ……まあ、リリー様も容赦ないなって思いましたケド」
流し目で彼女に見られて、私は顔を赤くしてしまう。
うう……戦いに慣れてないとはいえ、加減はしたつもりなのに……恥ずかしい……
「まあ過ぎたことはいいでしょ。それよりおにーさんの【神器】っスけど――――そうそう、コレっス!」
バッ!っとチャットは〝神器大全〟と題された大きな本を広げ、中のページをラクーンや私に見せる。
そこに書かれていたのは――
「――――〝【神器】:ダークナイフ〟……?」
「そう! おにーさんの【神器】はこのナイフなんスよ! ちなみに、これがその評価性能っス!」
そのページには短い短剣の絵や説明文章らしき物が描かれており、チャットはページ下のグラフのような部分を指差す。
登録No.66:ダークナイフ
『速度型・ランクD』
種類:短剣
全長:35cm
重量:400g
神 格: D ■
攻撃力: C ■■■
攻撃範囲:D ■
攻撃速度:A ■■■■■■■
生存率: D ■
「この……速度型とかランクってのはなんだ? 他にもDとかCとか、数値化されたモノがあるが……」
「これはでスねぇ~、〈第1次終末戦争〉から〈第3次終末戦争〉までの【神器】の戦果・活躍を観測&記録して、その上で【神器】全体の中ではどれくらいの性能を持っているのかっていうのをランク分けや数値化で示したグラフなんすよ! テンション上がるでしょ!」
それはもう楽しそうに説明するチャット。どちらかというと、あなたの方がテンションが上がっているようにしか見えないですよ――なんて茶々を入れると話の腰が折れそうなので、私は黙っている。
「まず、【神器】には大きく分けて2つの区分がありまス。1つが〝【神器】の型〟、もう1つが〝【神器】のランク〟でス。【神器】の型っていうのは5種類あって、対単騎戦闘に向いている〈攻撃型〉、対群戦闘に向いている〈防御型〉、斥候・強襲に向いている〈速度型〉、オールマイティな性能であらゆる状況に対応できる〈均衡型〉、上述4種の型をサポートする遠距離戦闘に特化した〈支援型〉がありまス。これは数少ない【神器使い】を戦場で効率よく運用するために考えられた、戦闘教義に基づく区分でスね。実際、どの型にも一長一短があるっス」
「ほう、俺のダークナイフはどの型に分類されるんだ?」
「おにーさんは典型的な〈速度型〉っスね。ちなみにリリー様のモーニングスターは〈防御型〉に分類されるっス。次に【神器】のランクでスけど、こっちも5段階ありまス。上から〈S〉〈A〉〈B〉〈C〉〈D〉の5段階。〈S〉が最上位のランクで、上にいくほど【神器】の総合戦闘力が高い傾向にあるんスよ。〈S〉ランクの【神器】ともなれば、それはもう伝説的な戦果を幾つも残していて――」
「おい待て、さっき俺の【神器】は〝ランクD〟って書かれてあったんだが……」
ラクーンにそう言われると、ピシッとチャットの動きが固まる。同時に喋り続けていた口も一瞬だけ止まる。
「い、いや~、気にしない方がいいっスよ! 所詮ランクなんて区分に過ぎないんでスし、ウチはどのランクの【神器】も好きで――!」
「……つまり、俺の【神器】は最弱の一角ってことか」
察した風に言うラクーン。チャットはカクッと肩を落とし、
「……これまでの〈終末戦争〉で確認された戦果だけを見るなら、でスけどね。ぶっちゃけ、ウチはこの区分自体はあんま好きじゃないんスよ。表立った活躍が少ないだけで、限定的な状況では優れた戦果を上げる【神器】も存在しまスし。おにーさんの【神器】はその典型的な例ってゆーか、これまで大きな戦果がほとんどないんでス。おかげで断定するのも難しかったくらいで……」
いやまあ型分けもランク分けも考えたのはウチのご先祖様なんでスけど、とチャットは不満気に言う。
私も、ランク分けの区分に関しては好きではない。そもそも、神々から授かった神々の御力に優劣をつけること自体が不敬虔だ。それに【神器使い】の中で差別も起きやすいし、まるでクジに当たった・クジに外れた、みたいな感覚になってしまう。まったく冒涜的だ。
「ふん、別に構わん。〈S〉だか〈A〉だかの【神器】を持たされたところで、喜ぶ気にもなれんしな。それで、他にも話すことはあるか?」
「え? あ、ありますあります! 〝加護〟と〝神技〟についてはまだ――!」
「待ってチャット、説明は一旦このくらいにしておきましょう」
私は喋り続けようとするチャットを諫め、再びラクーンを見据える。
おまけ設定解説
〈神器の型とランク〉
108個ある【神器】にはそれぞれ〝型〟と〝ランク〟があり、区分分けがなされている。
『神器の型』
・攻撃型
対単騎戦闘に向いている。
・防御型
対群戦闘に向いている。
・速度型
斥候・強襲に向いている。
・均衡型
オールマイティな性能であらゆる状況に対応できる。その反面で器用貧乏でもある。
・支援型
上記4種の型をサポートする遠距離戦闘に向いている。
『神器のランク』
〈S〉〈A〉〈B〉〈C〉〈D〉の5段階があり、〈S〉が最上位ランク。
上にいくほど強力な【神器】であるが、その分数は少ない。しかしランク〈S〉と認められた【神器】は、その全てが例外なく伝説的な戦果を残している。
またランクに関しては〈終末戦争〉における確認戦果を元に決められているため、後年の〈終末戦争〉の活躍によってはランクが上下することもあり得る。




