表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/50

〈11#神魔大戦と終末戦争〉


「まず、【神器(じんき)】の話を始める前に〈神魔大戦(レギオンズ・ウォー)〉と〈終末戦争(ラグナロク)〉の話から始めないといけないっス。……一応聞いておくッスけど、その2つの大戦は流石に知ってまスよね……?」

「知らん。確か、ギルドマスターや暗殺したヤツがそれっぽいことを言ってたのは覚えてる」

「あ、そっスか……。ならそこから説明しまスね……」


 さっそく出鼻を挫かれたチャットだったが、すぐに気を取り直して話を始める。説明好きな彼女のことだ、これくらいでは凹まないのだろう。


「コホン! では、まず〈神魔大戦(レギオンズ・ウォー)〉の話から始めるっス。――ハッキリとした年数は不明っすけど、今からおよそ1億年以上前の世界は〝神々〟が支配していました。世界の中心も、今ウチらが暮らしている『地上(グラン・ワールド)』じゃなくって、神々が住まう『天界(アッパー・レギオン)』だったんスよ。『天界(アッパー・レギオン)』ってのは、まあ平たく説明するとお空の上の世界っスね。そこでは神々を社会構造の頂点として、長久の平和が保たれていたんス」

「カーくんの種族であるカーバンクルも、その時代から存在する貴重な神獣種なんですよ。ね、カーくん♪」

「きゅーん♪」


 肩に乗るカーくんを撫でてあげると、彼も嬉しそうに返事してくれる。

 チャットのラクーンに対する説明は続き、


「けど――ある時、そんな神々の支配に反旗を翻した種族がいたんス。それこそが――――〝魔族〟」

「魔族……?」

「ええ、元々被支配者階級であった彼らは神々に敵対し、戦争を起こしたんスよ。それが〈神魔大戦(レギオンズ・ウォー)〉なんでス。『天界(アッパー・レギオン)』全体を巻き込んだ種族間戦争は100年以上も続いたとされていて、最終的には神々の勝利に終わりました。神々は魔族を『深淵(ジ・アビス)』という仄暗い地底世界へ封じ込めることに成功したんスけど、彼らにもはや世界を支配する力は残っていなかったんス」

「そこで神々は、『地上(グラン・ワールド)』へと降り立ったのです」


 チャットの解説に、私が加わる。


「自分たち神々に代わる、新たな世界の支配者――いえ、この場合は〝代理管理者〟とでも言うべきでしょうか。それを探すべく、神々は『地上(グラン・ワールド)』へと降り立った。……けれども、その頃の『地上(グラン・ワールド)』はなにもない場所でした。枯れた大地と乾いた風だけの、空っぽの場所。当然、神々に代わる管理者などいるはずもない。だから、偉大なる神々は自らの身体を水や樹木に転化させ、『地上(グラン・ワールド)』に大自然を生み出したのです。自らの跡を継ぐ存在が、現れてくれると信じて」

「そんな大自然の中から生命が生まれ、人間も誕生したんス。そうして月日は流れ、人類が神々に代わる世界の支配者となった――ここまでが、世間一般で教えられる〈神魔大戦(レギオンズ・ウォー)〉のあらまし(・・・・)っスね。わかりましたか?」

「ふむ、そうか。よくわからんが、なんとなくわかった」


 だあぁ――ッ!とズッコケる私とチャット。

 ま、まあいきなり歴史の勉強をさせられて理解しろと言われたら、そういう反応にもなるかもしれない。

 チャットもメガネをかけ直して、


「ま、まあいいでしょう。大事なのはココからでスからね。次に話すのが〈終末戦争(ラグナロク)〉についてでス。これは、おにーさんにも直接関わってくることっスよ。おにーさんが持つ【神器(じんき)】や、皆がおにーさんを【勇者】って呼ぶ理由にも関係あるんスから」

「ほう……」


 やや身を乗り出して、聞く姿勢を取るラクーン。やはり自分が関わると、聞く気にもなるのだろう。

 チャットはコホンと咳をして、仕切り直す。


「そうでスね……神々と魔族の戦いが〈神魔大戦(レギオンズ・ウォー)〉だとすれば、人間と魔族の戦いが〈終末戦争(ラグナロク)〉だと言って差し障りないでス。遡ること今から200年前、『深淵(ジ・アビス)』に封印されていたはずの魔族が突如『地上(グラン・ワールド)』に出現。そのまま人間に対して一方的な殺戮を始めました。これが終わりの始まりにして、人間と魔族の最初の戦い――〈第1次終末戦争ファースト・ラグナロク〉でス。……〈第1次終末戦争ファースト・ラグナロク〉では、世界人口の約半数が死亡した……とまで言われているっス」

「魔族は恐ろしく獰猛で、それでいて邪悪な存在です。彼らには対話も和平もありません。人間を見つければ、手当たり次第に殺すか、喰らうか……。かつて神々と覇権を争い、そして敗北した彼らにとって、事実上の世界の支配者となった人間は忌むべき存在に他ならないのでしょうね」

「言い伝えによると、〈神魔大戦(レギオンズ・ウォー)〉の時代には神々を除けば生態ピラミッドの頂点捕食者エイペックス・プレデターだったとかなんとか……。オマケに組織立って大軍で動くんスから、もうお手上げっスよ」


 そこまで話を聞いていたラクーンは、不思議そうに首を傾げる。


「? 待て、魔族は封印されたんじゃなかったのか? その……」

「確かに魔族は『深淵(ジ・アビス)』に封印されてたんス。でも……200年前から、封印を無力化するある出来事(・・・・・)が始まったんでスよ」

「それは……なんだ?」


 ラクーンが聞くと、チャットは牢屋の中を照らす蝋燭を指差す。


「……おにーさんは、〝太陽〟ってわかりまスよね。空からウチらを照らしてくれるお日様のことでス。太陽は『深淵(ジ・アビス)』と『地上(グラン・ワールド)』を隔てて、魔族を封印するために重要な役割を果たしていると言われてまス。だから太陽が昇っている間は、魔族は『地上(グラン・ワールド)』で満足に活動できないらしいんスけど――――もし、その太陽が『地上(グラン・ワールド)』を照らさなくなった(・・・・・・・・)ら……どうなると思いまス?」

「…………魔族とやらが、『地上(グラン・ワールド)』に出てくるようになる、と?」

「きゅーん!」


 その通り!と肯定するかのように、カーくんが鳴き声を上げた。

 チャットも説明を続け、


「50年に1度、太陽が完全に『地上(グラン・ワールド)』を照らさなくなる年が来るんでスよ。丸い太陽が半年くらいかけて少しずつ陰に覆われていって、最終的に1日だけ世界全土が夜と暗闇に覆われる。その現象のことを〝極夜(きょくや)〟って呼ぶんスけど――その年だけは、『深淵(ジ・アビス)』と『地上(グラン・ワールド)』を分かつ封印が失われるんでス」

極夜(きょくや)は丁度200年前から起こり始めたと言われていて、それから50年に1度の周期で魔族が『地上(グラン・ワールド)』へ侵攻を始めるようになったのです。極夜(きょくや)が訪れる年になると、太陽が陰に覆われていくにつれて徐々に封印の力が弱まり、夜になれば〝デモンズ・ホール〟を通って魔族が『地上(こちら)』にやってくるようになる。そして太陽が陰に覆い尽くされた瞬間に、封印は完全に無力化する……。――今年が、4度目の極夜(きょくや)が訪れる年。散発的ではありますが、既に各地で魔族の出没が確認されています。極夜(きょくや)が近づくにつれ、『地上(グラン・ワールド)』への侵攻も激化してくるでしょう」

極夜(きょくや)が過ぎれば、封印の力も徐々に戻ってくるんスけどね。しかし魔族を封印した神々も、きっと極夜(きょくや)のことまでは想定してなかったんでしょう。そりゃー、何万年も後に太陽がどうなるかなんて想像できないっスわ」


 そこまで話を聞いていたラクーンは、悩ましそうに頭を抱える。


おまけ設定解説


〈魔族〉


 〝夜〟にのみ姿を表す魔の一族。かつて神々が『深淵(ジ・アビス)』に封印した存在であり、『天界(アッパー・レギオン)』においては神々と争えるほど強大な力を持っていた。


 〈神魔大戦(レギオンズ・ウォー)〉後は何千年にも渡って『深淵(ジ・アビス)』の中で生き続けてきたが、200年前に『極夜』が発生し始めたことで状況が一変。50年に一度の『極夜』が近付くと『深淵(ジ・アビス)』と『地上(グラン・ワールド)』が繋がり始め、『地上(グラン・ワールド)』へ渡って来られるようになる。


 魔族の唯一にして絶対の目的、それは『地上(グラン・ワールド)』から人間を駆逐し、『天界(アッパー・レギオン)』へ戻ることで世界の支配者となること。

 故に神が創り出した人間は忌むべき存在であると同時に捕食対象であり、積極的に虐殺を行う。かつて魔族と対話を試みた事例もあるが、その全てが失敗に終わっている。


 一口に魔族と言えど多種多様な種族が混在しており、厳格なカースト制度が設けられていることも有名。

 階級は大きく分けて〝高等魔族〟〝中等魔族〟〝下等魔族〟の3つであり、高等魔族ともなると【神器使い】と渡り合えるほどの強さを誇る。

 また太陽が共通した弱点であり、日光を浴びるとたちまち塵となって消えてしまう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ