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8 BL展開入りました

「いおりさん、お疲れさまでした。色々と大変だったと聞き及んでいます。」


「大変どころじゃなかったんですけど...」


「ですよね...でもでもいおりさんのプロ根性凄かったです!こう、やる女は違う!って感じでした!」


言っておくが俺は男だぞ、スフィア...

魔法少女アイドルイオンの握手会はあれ以降特にトラブルも無く滞りなく終えることが出来た。

俺の心に傷は残したが悪くない結果だとはおもう。

だがこれから来訪してくる人物にも気を配らなければいけない...俺の貞操の為にも..


「悪いんだけど今から俺のお客さん来るんだけど良いかな?」


「どなたですか?ファンとの密会は御法度ですよ?」


「ああ、現当主のセシルさんですか...ですがあの方恋愛面だと余り良くない噂を聞きますね...」


それを聞き、今日の売上を計算していたリンスが眼鏡の縁をくいっと上げ、スフィアに目を留めた。

するとスフィアは上を仰ぎ見ながら、顎に指を添え話を続ける。


「噂によると彼は男色家なのだとか」


「.........」


「はあ。....ならイオンさん目当てではなくもしや...」


リンスプロデューサーの考えている通り彼、セシルはゲイであり女であるイオンではなく、男のいおりにプロポーズをした真正の同性愛者である。


「...因みにな...妹のエリーもそうだぞ...」


何を隠そう、あの二人は兄妹そろってそれぞれ俺の両性に別々に恋をしているのだ。

だが俺は純粋に異性恋愛主義なので付き合いきれないのと、貞操を奪われそうな気がして屋敷を飛び出したのを思い出し、今更ながら恐怖心がまたもや芽生え出し始めていた。


「なら妹さんだけ気を付ければ問題なさそうですね。ではお邪魔になるみたいですからスフィアさん...私達は出ていましょうか?」


「ちょっと何言ってるのか分かんないです。」


「そ、そうですよっ!もしかしたらいおりさんの身体が染められっ!...きゃう....」


かなり不穏な発言をしていたスフィアを手刀で気絶させ、まるで米俵の様に抱え外に出ていこうとしていた。


「ちょっと待って!ここに居てよっ!俺がどうなるか分かんないよ!?いいの!?俺の身体商売道具なんだろ!?」


何とか二人きりにならないように引き留めようとするが、首だけ回し顔をこちらに覗かせたリンスの表情は邪悪そのものであり、まるで悪魔の微笑みを浮かべながら...


「構いませんよ?イオンさんの身体は純血でないと男受け悪いですけど、いおりさんの身体なら問題ありませんから、どうぞごゆるりと。では失礼。」


「くあーーーー」


そのあんまりな言い様に絶句した俺を放置し、そそくさとスフィアを連れてテントの外に出たリンスの話し声が聞こえてきた。


「あら、こんばんわ。貴方がセシルさんでよろしいですか?一つお聞きしますが用があるのはイオンさんではなく、いおりさんなのですね?」


「はい。僕はいおり君にしか興味ありませんから。彼はここに?」


こそこそとテントの出入口に当たる幕に耳をぴったりと付けて盗み聞きをしていると、この聞き馴染みのある声にぞぞっとした。


(もう来てるのかよっ!どうしよう...どうしよう...)


逃げ出す暇もなく既に来てしまっていたらしく、もう目と鼻の先に居るようだ。

おろおろとテントの中を歩き回っているとふいにスフィアのくぐもった声が聞こえてきた。


「ううーん...」


(スフィアさん!?起きて!起きて!そして戻ってきてーーーっ!!)


だが、そんな些細な願いは打ち砕かれた...悪の総裁リンスの手によって...


「おっと、では私達はこれで...彼女を寝かせないといけませんから」


「ううーん...いおりさんのえっちー」


「はは。それじゃあ僕も失礼させて貰います。」


スフィアの夢の中の俺は一体何をやってるんだ?非常に気になります。

だがそれよりも今にもこのテントに入ってこようとしているセシルに慌ててキョロキョロと周りを見渡し隠れる所は無いのかと探してみるが、急造のテントにそんな場所が有る訳も無く、せめて距離を取る為中央に鎮座する机の奥にある椅子に腰を下ろした。

すると、タイミング良くテントの幕がするりと開き、そこから茶とオレンジ色のメッシュがかかった短髪で好青年のセシルが顔を覗かせ...


「やあ久しぶりだね、いおり君。そこ座ってもいいかい?」


「う...うん...」


ゆっくりとした動作でテント内に入るなり、入口側にある椅子に手を掛けそう問いかけられたので警戒しながら右手でどうぞと促すと優雅な佇まいで腰を下ろした。


「そんなに警戒しないでくれ。ただ話をしたいだけなんだ。エリーの様に強要はしないよ。」


どうやら顔に出ていたらしく、イケメンと言うにふさわしいその端正な顔つきに影を落としながらそんな事を言ってきた。

ちょっと前変身時エリーに睡眠香を嗅がされレイプされかけたのを知っていたらしい。

実はそこでリンスに救われたのだがそれはまた別の話。


「な、なら良いんですけど...それで話って?」


「ああ、それは勿論君との婚約の話だ。」


照れながらそう告げてきた彼の顔を引き気味に聞きながらあることを思う。断ったはずなんだが?


「いやいやいや、断ったじゃん。その話ならもう帰るからっ!」


そう言い放つなりがたっと音を発て椅子を倒しながら立ち上がると彼も急いで立ち上がり、俺の手首を掴むとテントの壁に押し込み、布製の壁に手をついて...


「いおり君僕は本気なんだ...本気で君を愛しているんだ!」


壁ドンされていた。まさか自分がBL物の受けを担うことになるとは思いもよらず固まってしまう。

それにしてもその男らしい告白と真剣な眼差しに不覚にもドキッとした自分を殺してやりたい。


「だっ、だから困るからそういうの!ほら、俺一応アイドルだからさ!駄目だからっ!」


「....そうか...君は僕の気持ちを受け入れてはくれないんだね...」


ようやく諦めたのか俺から離れたセシルはテントの幕を捲りながら不穏な言葉を口にした。


「でも僕は諦めないから。君のこと本当に好きだからさ...」


「......用ってそれだけか?ならもう帰りたいんだけど...」


そう問いかけると、出ていこうとしていたセシルが足を止めこちらに振り向くとその面持ちは真剣そのもので...


「贔屓にしているお得意先から聞いたんだけれど最近竜神の谷で今は居ない筈のドラゴンみたいな竜種が姿を現したらしい。あそこへ行くことはそうは無いと思うけど一応用心して欲しい...君の身に何かあったら嫌だからね。それじゃあ。」


と返答すると、そのまま外に出ていき帰路につこうと屋敷へのルートを通り姿を眩ました。

それをテントから顔だけ出して見送った後、先程の話を思い出し疑問を呟く。


「竜神って何?」


俺は始めて聞いた単語のせいで理解しがたい助言を頭の角に追いやったのだった。

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