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5 お嬢様は冒険に憧れる

「見てください父様!私ちゃんと仕事こなしましたっ!それに人一人助けましたっ!私だってやればできるんですっ!」


スフィアが腰に両手を当て、ふんすふんすと鼻息を荒くし息巻いている。それに対し父親のルーカスさんはおろおろと慌てふためいているみたいだ。


「そ、それはそうだが...外は危ないんだ。大人しく家に...」


「嫌ですっ!お父様は私とその依頼をこなせたら冒険者をやっていいと約束しました!約束は守ってください!」


「はあ...」


溜め息も吐きたくなる...どうやらスフィアは元々冒険者志望らしく胸踊る探検に身を置きたいじゃじゃ馬娘だったらしい。それを危惧した父親が何とか止めようと画策したが、俺のせいで失敗に終わったらしい。

それはそうと俺を睨むのはお門違いかと思いませんか?お父様。


「もうっ!だったら...」


そんな様子を眺めていると膠着状態になっていたのだが、何を思ったのか急に俺の腕にスフィアが絡み付いてきたものだからお父様の表情がみるみる鬼のように変化している。


「ちょっ、なにして....離して...」


だが、そこは俺も男な様でスフィアの女性の象徴とも言える部分が腕に当たり、振りほどけなかった。


「この人がお話ししたイオンさんです!とっても強いんですからっ!」


「なにぃ?この男がか?そんな事信じられるかっ!本物なら今すぐ変身してみろっ!」


妙な展開になってきた...ルーカスさんは唾を飛ばしながら怪しむような目付きで此方を値踏みするように見てきている最中、その娘のスフィアは期待に胸を膨らましており、くっつきながら大きめの目をきらきらと輝かせていた。

自分もこれ以上あらぬ誤解をされたくないので...


「はあ...分かりましたよ...変身しますから皆さん離れてください。」


「はい!」


「ふんっ!」


そして二人が離れるのを確認し、いつもの様に変身するため魔方陣を展開する。


「....へんしん」


気乗りしない感情が覇気をかき消し、淡々と言葉を紡ぐと、魔方陣が通過して行く箇所を女性体に転換させつつ、赤色の魔法少女の正装に様変わりしていったのを、この場にいたスフィア以外の人達全員が目を丸くさせていた。


「ほう...本当になれるものなのですな。世の中まだまだ解らない事だらけですのぅ。」


「えぇ...これは面白い...」


ルーカスさんの後ろに控えていた初老の紳士と褐色の肌と銀色の髪をした同い年くらいの青年がタキシードに身を包みながらそう感想を漏らした。


「まさか...そんな芸当が出来る奴がいるとは...だがそれが出来たとしても、強いとは限らんだろう?ましてや魔獣を討伐したなどと。」


「本当ですよ!!イオンさんはとっても強いんですからっ!!どうしたら信じてくれるんですかっ!」


その2人の喧騒を目の当たりにしながら執事と思われる若い褐色の男が隣に立っていた、恐らく執事長と思われる男性に耳打ちをしている。

なにやら嫌な予感が身体を駆け巡った。


「第一何処の馬の骨か分からん男に娘を預けられるかっ!そもそも....なんだ、セバス後にしろ...なに?ふむふむ...ほお、それはいい。やってみろ。」


セバスと呼ばれた執事長らしき人物がルーカスさんの耳元で何かを囁くと、ルーカスさんがニヤリと嫌らしい笑みを浮かべ始めた。

俺は今すぐ逃げ出す事を決め...


「それでは、私はこれでっ!」


急いで踵を返し、駆け出そうとしたところで「待ちたまえ。」とルーカスさんに声を掛けられ冷や汗をダラダラ流しながら不器用な笑顔を浮かべながら、ギギっとゆっくり振り向くと褐色の男子が前に出てきていた。


「この男は家に代々仕えてきた一族の者でな。それも過去を振り返ってみてもこれ以上の剣の使い手は居ないと思える程の手練れでなあ。」


「まさかとは思いますけど...決闘しろとか言わないですよね...はは...」


まるでアメリカ人の様にやれやれとポーズをしながら渇いた笑い声を漏らしていると、ずばりその通りと言わんとするかの如くまたニヤリと口角を上げたルーカスさんが口を開き...


「そのまさかだ。もし断ったらどうなるか想像は難しくないだろう?」


「.....マジか...」


そう語られ、俺は呆気に取られてしまう。

どうやら彼と一戦交えないといけないみたいで大変憂鬱になる。その様子にスフィアも気が気じゃないようでおろおろしている最中、その褐色の男子が「なら、早速移動しましょうか...ここでは少々やりづらいですからね。」とそう話しかけてくると、くいっと中庭に続く扉に向かって顎を向けていた。


俺は観念し、着いていく事にした...だがふとある事が頭を過る。もし負けるような事があれば打ち首になるかもしれないとそんな考えが頭を支配すると背筋が凍るかと思うほど寒気に襲われ...


(絶対勝たないと...)


と、そう思わざるを得なかった。

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