42 カクセイ
僕は扉を抜け、目を覆っていた白い光が拡散していくと同時に目を開ける。
「ラケルターー!もうダメーー!」
「終。ルルエナここに命つきる。」
アーミンは泣き叫び、ルルエナは何やら悟りを開いている。
それを見て僕は左手に熱を感じそれを解放しながら走り出した。
明らかに今まで感じたことの無い疾走感に目眩を起こしつつもそれに耐え、アリアに飛びかかり。
「させるかあっ!!」
4年前の魔獣化と同じ竜の手に自己変異させ右目蓋を爪で切り裂く。
「グギャアアアアッ!」
今まで聞いたことの無い悲鳴を上げ、ドスンドスンと後ろに下がっていく。
だが逃がさんとばかりにアリアを睨み付け、「うあああっ!」と叫び、竜化した左腕に魔力を宿らせる。
それが炎を帯び、数多の鎖の様に絡まりながら炎のリングを形成していきそれを前に突きだし、そこから伸びる炎の鎖をはためかせ、竜の牙の生えた口から声を張り上げる。
「ドラゴンブレス!」
そう叫ぶと揺らいでいた鎖4本がピンとそれぞれ東西南北に伸びきると、中心のリングから炎のブレスが吹き出しアリアの身体を焼いていく。
「グガアアア!」
「ラケルタすごい...」
「なにあいつ。あの腕どうなってんの?」
「んあ?熱いですねぇ...なんです...か....ふおおおおっ!」
ようやく起きたしおんさんだったが、起き抜けにとんでもないものが目の前にいるもんだから乙女とは思えない奇声と表情を晒しながら右手をアリアに向け。
「ルシオン!」
と、慌てて叫ぶと右手に浮かぶ紋章から光でできた結晶がドラゴンブレスから逃げようとしているアリアの肌に密着し...
「どっか行っちゃってください!」
ブオンと風を切るような音がしたと思ったらアリアの姿が消えた。
「え...しおんさん!何したんですか!」
「ふう...驚きましたねー。あっ、あれですかー?転移魔法で森迄お帰り願いましたー。」
どうやら魔法か何かで無理矢理アリアを移動したらしい。
そういう滅茶苦茶なのはイオンさんぐらいの物だと思っていたので心底驚く。
一先ず危機は脱し一旦ドラゴンブレスを止めて空を見上げると、まだ結界とかいうのがまだ戻ってないようなので。
「あのー、しおんさん。あの空の戻さなくて大丈夫なのかなぁ?」
アーミンがそう問いかけると。
「ほんとですねー。ちょっと待っててくださいねー。ほやっ。」
と気の抜けた声と共に右手をふわっとそらに翳すとあの半月状の半透明で出来た膜が谷を覆っていった。
「おおー。」
「ふう...何とかなったかな...」
それを見届けながら変異した腕や牙の中に宿る魔力を空中に霧散させ、元の竜神族独特の鱗を帯びた肌に戻していく。
何とかアリアを撃退し避難が終わっている村は静寂が訪れていたのだが。
「すぴ~。すぴ~。」
「はは...本当に豪胆な人だなぁ。」
イオンさんは岩を頭に乗っけたまま未だに眠りこけていた。




